著者
西谷 祐子 高杉 直
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本計画研究は,インターネット上での著作権侵害について,国際裁判管轄及び準拠法のルールのあり方について検討することを目的としていた。本研究においては,まず第一に,アメリカ合衆国及び欧州の判例及び学説の動向について研究を行った。アメリカについては,特にインターネット上での音楽ファイル交換に関するプロバイダー及びプログラム開発者の責任をめぐる連邦最高裁判決について考察した。欧州については,特にドイツの判例及び学説,欧州司法裁判所の判例,そしてスイスの学説について検討をした。また,欧州共同体については,国際裁判管轄及び外国判決の承認に関する一般的なルールである2000年ブリュッセルI規則及び2004年欧州債務名義規則について検討を進めたほか,契約債務の準拠法決定に関するローマI規則,そして契約外債務の準拠法決定に関するローマII規則の制定に向けた欧州委員会及び欧州理事会・欧州議会の動向について丹念にフォローアップした。第二に,アメリカ法律協会(ALI)及びマックス・プランク無体財産法及び競争法研究所(MPI:ミュンヘン)は,各々数年前から国際知的財産法に関する国際裁判管轄及び準拠法決定の原則案(Principles)について検討を進めており,近いうちにルールとして公表する予定である。特にALIルールは,アメリカ抵触法のアプローチを色濃く反映した柔軟なルールで,知的財産権に関する属地主義を緩和するものであり,MPIルールと比較検討することで,非常に有益な示唆を得ることができた。また,MPIミュンヘンとマックス・プランク外国私法及び国際私法研究所(MPI:ハンブルク)は,2007年2月23日に共同で国際裁判管轄に関するブリュッセルI規則及び契約準拠法に関するローマI規則提案について知的財産権の取り扱いに関する意見書を提出しており(http://www.mpipriv.de/ww/de/pub/aktuelles/content3075.htm),本計画研究を終了する直前にまとまった意見書に接し,総合的な検討を行うことが出来たのは有益であった。そのほか,研究全体と関係する論点として,国際私法固有のアプローチの検討のみならず,実質法上のソフトローの形成とそれによる紛争処理の可能性についても考察をした。
著者
潮見 佳男 橋本 佳幸 村田 健介 コツィオール ガブリエーレ 西谷 祐子 愛知 靖之 木村 敦子 カライスコス アントニオス 品田 智史 長野 史寛 吉政 知広 須田 守 山本 敬三 横山 美夏 和田 勝行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成30年度は、前年度に引き続き、ゲストスピーカーを交えた全体研究会の開催を通じて、情報化社会における権利保護のあり方をめぐる従来の議論の到達点と限界を検討し、知見の共有を図った。個別の研究課題に関しては、次のとおりである。第1に、個人情報の収集・利活用に関する私法的規律との関連では、全体研究会を通じて、EU一般データ保護規則(GDPR)の全体的構造のほか、EUにおけるプライバシー権の理論構成について理解を深めた。また、プラットフォーム時代のプライバシーにつき、プロファイリング禁止やデータ・ポータビリティーなどの先端的課題を踏まえた理論構成のあり方を検討した。第2に、AIの投入に対応した責任原理との関連では、全体研究会において、ドイツでの行政手続の全部自動化立法の検討を通じて、AIによる機械の自動運転と比較対照するための新たな視点が得られた。第3に、ネットワーク関連被害に対する救済法理との関連では、担当メンバーが、ネットワークを介した侵害に対する知的財産権保護のあり方を多面的に検討し、また、オンライン・プラットフォーム事業者の責任について分析した。以上のほか、私法上の権利保護の手段や基盤となるべき法技術および法制度に関しても、各メンバーが新債権法に関する一連の研究を公表しており、編著の研究書も多い。さらに、外国の法状況の調査・分析に関しては、ドイツやオーストリアで在外研究中のメンバーが滞在国の不法行為法の研究に取り組み、複数のメンバーがヨーロッパ諸国に出張して情報収集を行った。また、研究成果の国際的な発信も活発に行っており、国際学会での日本法に関する報告が多数あるほか、新債権法に関して、その翻訳、基本思想を論じる英語論文が挙げられる。
著者
西谷 祐子
出版者
日本調停協会連合会
雑誌
ケース研究 (ISSN:02874296)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.1-3, 2016-06
著者
河野 俊行 小島 立 早川 吉尚 大杉 謙一 久保田 隆 松下 淳一 早川 眞一郎 佐野 寛 野村 美明 神前 禎 中野 俊一郎 多田 望 西谷 祐子
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本領域は平成16年度に開始し平成21年度が最終年度であった。しかし全体の取り纏めのために本補助金を申請したところである。その取り纏め事項の主な事柄としては、全体の取り纏め的業績発表と、集積した判例データの今後の活用方策を明らかにすることの二点であった。前者については各班の代表者による分野別レポートを取り纏め、Japanese Yearbook of International Law 53巻に掲載されたところである。後者については、1001件の判例英文データを取りそろえたプロジェクトはこれまでになく、このデータの価値を維持するためには新判例を継続的に翻訳して加えてゆくことが必要となるところ、領域終了後補助金なしでそれを可能にするための方策が必要であった。そこでそのための方策として、民間企業にデータを移管し、営利ベースで継続することが最も持続性が高いと判断された。そこで複数の民間業者と協議を重ね、本報告書執筆時点では一社に絞られた。2008年の経済危機の影響でリーガルビジネスは多大な影響を受けた。この経済危機と日本政府が導入した破たん企業救済策がリーガルビジネスに与えた影響は大きく、それを踏まえた持続可能な営利ベースのモデルの協議に予想以上の時間が必要となった。ほぼ1年かけて試行錯誤してきたが、ようやく形が見えてきたところである。また最近、この企業のアメリカ本社の担当役員とテレカンファレンスを行い、さらに協議を進めえたところである。