著者
溝口 優司 中橋 孝博 安達 登 近藤 恵 米田 穣 松浦 秀治 馬場 悠男 篠田 謙一 諏訪 元 馬場 悠男 篠田 謙一 海部 陽介 河野 礼子 諏訪 元
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

旧石器時代から縄文~弥生移行期まで、日本列島住民の身体的特徴がいかに変化したか、という問題を形態とDNAデータに基づいて再検討し、日本人形成過程の新シナリオを構築しようと試みた。結果、北海道縄文時代人の北東アジア由来の可能性や、縄文時代人の祖先探索には広くオーストラリアまでも調査すべきこと、また、港川人と縄文時代人の系譜的連続性見直しの必要性などが指摘された。シナリオ再構築への新たな1歩である。
著者
水嶋 崇一郎 坂上 和弘 諏訪 元
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.113-125, 2004-12-01
参考文献数
39
被引用文献数
1 2

縄文時代晩期に属する盤状集積葬の特徴と意義を論じるため,愛知県保美貝塚の盤状集積2例(1号集積人骨87標本,B集積人骨52標本)について基礎データを示し,同貝塚出土の個体埋葬人骨31体と比較した。具体的には盤状集積人骨群の全標本について再鑑定を行ない,最小個体数,部位構成,年齢構成を求めた。また両盤状集積で最も多く保存されている大腿骨を用いて性構成を推定した。性別の判定に当たっては,寛骨の形態特徴により性別が決定された個体埋葬人骨群において基準を設け,それを盤状集積人骨群に適用した。中でも大腿骨骨幹中央部の断面積が性別判定の有力な指標となり得ることが判明し,本研究においては性構成推定の確度の向上に貢献した。保美貝塚の盤状集積葬の骨構成については,保存部位が下肢主要長骨に偏っていること,1号集積には14個体以上(成人男性4体,成人女性6体,成人性別不明1体,幼若年3体),B集積には6個体以上(成人男性3体,成人女性2体,幼若年1体)の人骨が含まれていることが明らかとなった。また,盤状集積葬と個体埋葬の男女それぞれについて形態特徴と力学的な頑丈さを調べたところ,両埋葬人骨群間では大腿骨のサイズや力学的な頑丈さに明確な違いが見られなかったが,盤状集積人骨群の男性大腿骨が有意に柱状性を示した。盤状集積葬の時代的地域的分布の偏りと本研究における部位構成と個体数情報は,盤状集積葬が意図的な再発掘と再葬に基づいていたことを示唆するものである。柱状性の発達した男性大腿骨が本盤状集積で卓越している理由は幾通りか考えられるが,一つの解釈として,生前に特定の社会的地位や生業に属していた集団,もしくはある血縁集団に対して盤状集積葬が適用された可能性が考えられる。<br>
著者
諏訪 元
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological science : journal of the Anthropological Society of Nippon (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.479-488, 1994-12-01
参考文献数
61
被引用文献数
1

初期人類の化石記録は南アフリカでの1930年以降の大量発掘, 東アフリカでの1970年代の発見ラツシュを経, 今日では1500点を越す標本群からなる. これらの化石標本はアファール猿人, アフリカヌス猿人, 初期ホモ属, およびロブスト型猿人 (エチオピクス猿人, ロブストス猿人, ホイセイ猿人) に分類される. 本小論ではこれらの初期人類の系統関係をめぐる現理解と問題点をまとめ, アファール猿人の実体, アフリカヌス猿人の系統的位置, ロブスト型猿人の進化様式とホモ属の出現について論じる.
著者
水嶋 崇一郎 諏訪 元 平田 和明
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.97-113, 2010 (Released:2010-12-21)
参考文献数
60

成人期縄文人の四肢骨骨幹部は現代日本人より断面が太く扁平であることが知られている。本研究では,胎生8ヶ月から生後3ヶ月にわたる縄文人と現代日本人の主要四肢骨を用いて,骨幹中央部の各種の断面特性値を群間比較することにより,従来指摘されてきた頑丈性と扁平性の成因について改めて考察した。資料は縄文人49個体,現代日本人185個体の上腕骨,橈骨,尺骨,大腿骨,脛骨,腓骨を用いた。内部断面計測では高精細のマイクロCT装置を導入した。解析においては各四肢骨の骨幹長を相対的な年齢指標とみなし,骨幹長を共変量とする共分散分析を実施した。その結果,全身の四肢骨にわたり,縄文人の骨幹は一貫して現代日本人より外径が太く,断面上の骨量が多く,力学的に頑丈な傾向にあり,さらには二集団の断面拡大パターンの間に有意な違いはないことがわかった。二集団の外部形状と骨分布形状は胎児・乳児期を通じてほとんど変化しておらず,大半の四肢骨の断面示数において有意な集団差は認められなかった。ただし,縄文人の大腿骨の外部形状は一貫して現代日本人より前後方向に扁平であることがわかった。本研究では,成人期縄文人で指摘されてきた骨幹部形質のうち,外径の太さ,骨量の多さ,さらに大腿骨骨体上部の相対的に前後径が短い(内外側方向に長い)扁平さに関しては,既に胎生期にそれらの傾向が存在し,発生初期におけるパターン形成の影響が示唆された。