著者
南 雅代 中村 俊夫 平田 和明 長岡 朋人 鵜澤 和宏 Hoshino Keigo
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.18, pp.134-143, 2007-03
被引用文献数
2

第19回名古屋大学年代測定総合研究センターシンポジウム平成18(2006)年度報告<第2部> Proceedings of the 19th symposiumon on Chronological Studies at the Nagoya University Center for Chronological Researchin 2006 日時:平成19 (2007)年1月15日(月)~17日(水) 会場:名古屋大学シンポジオン Date:January15th-17th, 2007 Venue:Nagoya Uhiversity Symposion Hall
著者
平田 和明 長岡 朋人 星野 敬吾
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.19-26, 2004 (Released:2004-07-14)
参考文献数
15
被引用文献数
13 14

鎌倉市の由比ヶ浜地域には大量の中世人骨が出土している静養館遺跡,由比ヶ浜南遺跡(単体埋葬墓),中世集団墓地遺跡(No. 372)および材木座遺跡の4遺跡があり,これらの出土人骨の刀創の特徴を比較検討した。刀創受傷率は材木座遺跡が最も高く65.7%であり,次に静養館遺跡が6.6%で,中世集団墓地遺跡は1.4%,由比ヶ浜南単体埋葬人骨は1.3%であった。刀創人骨のうちの斬創が占める割合は,静養館遺跡が100%,由比ヶ浜南遺跡が66.6%,中世集団墓地遺跡が75.0%,材木座遺跡が2.7%であった。一方,掻創が占める割合は材木座遺跡が82.3%で圧倒的に高く,中世集団墓地遺跡は2個体だけで25.0%,静養館遺跡と由比ヶ浜南遺跡の出土人骨には掻創は認められなかった。由比ヶ浜地域(前浜)は主として14世紀に中世都市鎌倉の埋葬地として使用されたと考えられるが,遺跡間および同一遺跡内の各墓抗間においても人骨の埋葬形態に差異があることが明らかであり,今後の広範囲な分野から更なる解析・検討が必要である。
著者
水嶋 崇一郎 平田 和明
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.19-29, 2013 (Released:2013-06-21)
参考文献数
69

本研究では,性別判定における大腿骨骨幹部の有用性について論じるため,大腿骨骨幹中央部断面形状の性的二型性について調査した。資料は愛知県保美貝塚遺跡出土の縄文人31体(男性14体,女性17体,約3000~2300 BP),明治・大正期の関東地方人42体(男女各21体,年齢範囲20~50歳)の個体骨格を用いた。内部断面計測ではマイクロCT装置を導入した。画像処理にはImageJとCT-Rugleを使用した。解析に際しては断面特性値ごとにWilksのλと男女的中率を算出した。その結果,2集団に共通して,大腿骨骨幹中央部では骨質断面積が最良の性判別指標であることがわかった(縄文人:λ = 0.230,的中率96.8%,現代日本人:λ = 0.469,的中率85.7%)。また縄文人では骨体中央矢状径,外周,外形断面積,最大断面2次モーメント,断面2次極モーメントにおいても90%超の高い確度で男女が正判定された(λ:0.311~0.362,的中率:93.5~96.8%)。一方,現代日本人では骨質断面積以外の項目を個別に適用しても信頼性の高い判別はなされなかった(λ:0.514~0.876,的中率:61.9~81.0%)。本研究では,性別不明のヒト骨格において,大腿骨骨幹中央部の骨質断面積が非常に有力な判別指標となることが示唆された。
著者
澤田 純明 奈良 貴史 中嶋 友文 斉藤 慶吏 百々 幸雄 平田 和明
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.1, pp.23-36, 2010 (Released:2010-06-23)
参考文献数
52
被引用文献数
1 1

骨の組織形態学的検討は,動物種の同定に有効な方法である。青森県朝日山(2)遺跡から平安時代の焼骨片が出土したが,小片のため肉眼形態観察では種の同定が困難であった。そこでヒトかそれ以外の動物なのか鑑別することを目的として,出土四肢骨骨幹部片4点を薄切し,骨組織形態の観察と計測的検討を行なった。比較資料として,ヒト・クマ・ウマ・イノシシ・ニホンジカ・カモシカ・ウシの四肢長骨を用いた。比較資料の骨組織形態計測の結果,ヒトのハバース管の面積(H.Ar)とオステオンの面積に対するハバース管の面積の比(H-On示数)は他の動物より有意に大きい傾向があり,人獣鑑別の指標として優れていた。朝日山(2)遺跡出土焼骨について,焼成による収縮の影響を考慮しながら検討した結果,出土骨試料4点のうち3点は人骨とみなしてさしつかえないと考えられた。残る1点はヒトあるいはウマの可能性があるが,どちらかといえばヒトに近いと考えられた。出土焼骨は火葬された人骨と推察され,平安時代の青森地方に火葬習俗が存在した可能性が示唆された。
著者
長岡 朋人 安部 みき子 蔦谷 匠 川久保 善智 坂上 和弘 森田 航 米田 穣 宅間 仁美 八尋 亮介 平田 和明 稲原 昭嘉
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.31-48, 2013 (Released:2013-06-21)
参考文献数
57
被引用文献数
3 4

本研究では,兵庫県明石市雲晴寺墓地から出土した明石藩家老親族の人骨1体(ST61)について,形態学,古病理学,同位体食性分析の視点から研究を行った。板碑から人骨は明石藩の家老親族であり,1732年に77歳で亡くなった女性である。本研究の結果,(1)骨から推定された性別は女性で,死亡年齢は50歳以上で,墓誌の記録を裏付けるものであった。(2)頭蓋形態を調べたところ,脳頭蓋最大長が大きく,バジオン・ブレグマ高が小さく,頭蓋長幅示数は75.3で長頭に近い中頭,また上顔部が細長いものの顔面全体が大きく,いずれの特徴も徳川将軍親族,江戸庶民,近代人とは異なっていた。(3)炭素・窒素安定同位体分析の結果,ST61の主要なタンパク質摂取源は,淡水魚,または,陸上食物と海産物の組み合わせと推定された。当時の上流階級の人骨のデータの積み重ねは今後の江戸時代人骨の研究に不可欠であるため,今回一例ではあるが基礎データの報告を行った。
著者
長岡 朋人 平田 和明 大平 里沙 松浦 秀治
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.25-34, 2008-06-01
被引用文献数
1 6

中世人骨の形態的特徴の研究は,当時の人々の姿かたちを明らかにし,日本人の身体形質の時代的な移り変わりを解明するために重要である。本研究の目的は,中世人骨の四肢骨長に基づき身長推定を行うこと,中世人骨の身長推定に適切な推定式を検証すること,日本人の身長の時代的な移り変わりを再検討することである。資料は,鎌倉市由比ヶ浜南遺跡出土中世人男性59体,女性52体の上腕骨,橈骨,大腿骨,脛骨である。まず,各四肢骨長に基づき男性6種類,女性3種類の身長推定式から平均推定身長を求めた。次に,身長推定式を評価するために,男性6種類,女性3種類の各方法について,4長骨に基づく推定値の差異を分散分析で検討した。4長骨に基づく身長推定値の差異が小さい式は,男性では藤井の式,Trotter and Gleserのモンゴロイドの式,女性では藤井の式,佐宗・埴原の式であり,これらの式は中世人骨の身長推定に適していた。続いて,由比ヶ浜南遺跡の中世人骨に対して,藤井の大腿骨最大長の式に基づく身長推定を行い,他集団との比較を行った。その結果,男性では弥生時代人,古墳時代人との間に1%水準の有意差を認め,また,女性では弥生時代人との間に1%水準の有意差を,古墳時代人と近代人との間には5%水準の有意差を認めた。日本人の平均推定身長は古墳時代から明治時代の間に低くなる傾向が再確認された。<br>
著者
長岡 朋人 平田 和明 大平 里沙 松浦 秀治
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.25-34, 2008 (Released:2008-06-30)
参考文献数
49
被引用文献数
4 6

中世人骨の形態的特徴の研究は,当時の人々の姿かたちを明らかにし,日本人の身体形質の時代的な移り変わりを解明するために重要である。本研究の目的は,中世人骨の四肢骨長に基づき身長推定を行うこと,中世人骨の身長推定に適切な推定式を検証すること,日本人の身長の時代的な移り変わりを再検討することである。資料は,鎌倉市由比ヶ浜南遺跡出土中世人男性59体,女性52体の上腕骨,橈骨,大腿骨,脛骨である。まず,各四肢骨長に基づき男性6種類,女性3種類の身長推定式から平均推定身長を求めた。次に,身長推定式を評価するために,男性6種類,女性3種類の各方法について,4長骨に基づく推定値の差異を分散分析で検討した。4長骨に基づく身長推定値の差異が小さい式は,男性では藤井の式,Trotter and Gleserのモンゴロイドの式,女性では藤井の式,佐宗・埴原の式であり,これらの式は中世人骨の身長推定に適していた。続いて,由比ヶ浜南遺跡の中世人骨に対して,藤井の大腿骨最大長の式に基づく身長推定を行い,他集団との比較を行った。その結果,男性では弥生時代人,古墳時代人との間に1%水準の有意差を認め,また,女性では弥生時代人との間に1%水準の有意差を,古墳時代人と近代人との間には5%水準の有意差を認めた。日本人の平均推定身長は古墳時代から明治時代の間に低くなる傾向が再確認された。
著者
平田 和明 長岡 朋人 星野 敬吾
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological science. Japanese series : journal of the Anthropological Society of Nippon : 人類學雜誌 (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.19-26, 2004-06-01
参考文献数
15
被引用文献数
3 14

鎌倉市の由比ヶ浜地域には大量の中世人骨が出土している静養館遺跡,由比ヶ浜南遺跡(単体埋葬墓),中世集団墓地遺跡(No. 372)および材木座遺跡の4遺跡があり,これらの出土人骨の刀創の特徴を比較検討した。刀創受傷率は材木座遺跡が最も高く65.7%であり,次に静養館遺跡が6.6%で,中世集団墓地遺跡は1.4%,由比ヶ浜南単体埋葬人骨は1.3%であった。刀創人骨のうちの斬創が占める割合は,静養館遺跡が100%,由比ヶ浜南遺跡が66.6%,中世集団墓地遺跡が75.0%,材木座遺跡が2.7%であった。一方,掻創が占める割合は材木座遺跡が82.3%で圧倒的に高く,中世集団墓地遺跡は2個体だけで25.0%,静養館遺跡と由比ヶ浜南遺跡の出土人骨には掻創は認められなかった。由比ヶ浜地域(前浜)は主として14世紀に中世都市鎌倉の埋葬地として使用されたと考えられるが,遺跡間および同一遺跡内の各墓抗間においても人骨の埋葬形態に差異があることが明らかであり,今後の広範囲な分野から更なる解析・検討が必要である。<br>
著者
南 雅代 Minami Masayo 中村 俊夫 Nakamura Toshio 平田 和明 Hirata Kazuaki 長岡 朋人 Nagaoka Tomohito 鵜澤 和宏 Hoshino Keigo
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.18, pp.134-143, 2007-03

During the past several decades, many medieval skeletons were excavated from archaeological sites in the Yuigahama area, Kamakura, Japan. The excavations yielded more than 5,000 individuals in varying states of preservation from the Zaimokuza, Seiyokan, Yuigahama-minami and Chusei Shudan Bochi sites. Medieval Kamakura was an ancient capital of the Kamakura Shogunate, and a lot of people lived in Kamakura with high population density. The human skeletons excavated from the Zaimokuza site are reported to be humans dead by competition at the end of the Kamakura Shogunate, but a detailed study on dating of the human skeletons has not made yet. In this study, we measured ^<14>C ages, together with carbon and nitrogen isotope ratios, of human skeletal remains excavated from the Yuigahama-minami site and Chusei Shudan Bochi site. The δ^<13>C and δ^<15>N were not different between human skeletal samples of both sites, while the ^<14>C ages were different between them: The human bones of the Yuigahama-minami site are 100 year younger than those of the medieval collective-cemetery site. All of ages of human skeletons from both of the sites are older than the latest Kamakura period. The δ^<13>C and δ^<15>N values of the medieval Kamakura people are higher than those of terrestrial mammals, indicating that they exploited some amount of marine fish and/or mammals with higher δ^<13>C and δ^<15>N as protein sources. Therefore, the ^<14>C ages obtained for human skeletons could be order than the true ages. ^<87>Sr/^<86>Sr isotopic ratios of human skeletons of the Yuigahama-minami site tend to be higher than those of the Chusei Shudan Bochi site. Soils, plants and animals feeding on them in a given locality have ^<87>Sr/^<86>Sr values that generally mirror underlying bedrock composition, and thus ^<87>Sr/^<86>Sr ratios of human skeletons are useful tools for assessing migration in prehistory. The result obtained in this study suggests that Yuigahama-minami humans and Chusei Shudan Bochi humas lived in different areas. More skeleton samples should be analyzed for determining detailed ^<14>C ages of humans excavated from the Yuigahama sites, and for estimating migration of prehistory of the medieval Kamakura humans.
著者
水嶋 崇一郎 諏訪 元 平田 和明
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.97-113, 2010 (Released:2010-12-21)
参考文献数
60

成人期縄文人の四肢骨骨幹部は現代日本人より断面が太く扁平であることが知られている。本研究では,胎生8ヶ月から生後3ヶ月にわたる縄文人と現代日本人の主要四肢骨を用いて,骨幹中央部の各種の断面特性値を群間比較することにより,従来指摘されてきた頑丈性と扁平性の成因について改めて考察した。資料は縄文人49個体,現代日本人185個体の上腕骨,橈骨,尺骨,大腿骨,脛骨,腓骨を用いた。内部断面計測では高精細のマイクロCT装置を導入した。解析においては各四肢骨の骨幹長を相対的な年齢指標とみなし,骨幹長を共変量とする共分散分析を実施した。その結果,全身の四肢骨にわたり,縄文人の骨幹は一貫して現代日本人より外径が太く,断面上の骨量が多く,力学的に頑丈な傾向にあり,さらには二集団の断面拡大パターンの間に有意な違いはないことがわかった。二集団の外部形状と骨分布形状は胎児・乳児期を通じてほとんど変化しておらず,大半の四肢骨の断面示数において有意な集団差は認められなかった。ただし,縄文人の大腿骨の外部形状は一貫して現代日本人より前後方向に扁平であることがわかった。本研究では,成人期縄文人で指摘されてきた骨幹部形質のうち,外径の太さ,骨量の多さ,さらに大腿骨骨体上部の相対的に前後径が短い(内外側方向に長い)扁平さに関しては,既に胎生期にそれらの傾向が存在し,発生初期におけるパターン形成の影響が示唆された。
著者
南 雅代 Minami Masayo 中村 俊夫 Nakamura Toshio 平田 和明 Hirata Kazuaki 長岡 朋人 Nagaoka Tomohito 鵜澤 和宏 Hoshino Keigo
出版者
名古屋大学年代測定資料研究センター
雑誌
名古屋大学加速器質量分析計業績報告書
巻号頁・発行日
vol.18, pp.134-143, 2007-03 (Released:2010-06-10)

During the past several decades, many medieval skeletons were excavated from archaeological sites in the Yuigahama area, Kamakura, Japan. The excavations yielded more than 5,000 individuals in varying states of preservation from the Zaimokuza, Seiyokan, Yuigahama-minami and Chusei Shudan Bochi sites. Medieval Kamakura was an ancient capital of the Kamakura Shogunate, and a lot of people lived in Kamakura with high population density. The human skeletons excavated from the Zaimokuza site are reported to be humans dead by competition at the end of the Kamakura Shogunate, but a detailed study on dating of the human skeletons has not made yet. In this study, we measured ^<14>C ages, together with carbon and nitrogen isotope ratios, of human skeletal remains excavated from the Yuigahama-minami site and Chusei Shudan Bochi site. The δ^<13>C and δ^<15>N were not different between human skeletal samples of both sites, while the ^<14>C ages were different between them: The human bones of the Yuigahama-minami site are 100 year younger than those of the medieval collective-cemetery site. All of ages of human skeletons from both of the sites are older than the latest Kamakura period. The δ^<13>C and δ^<15>N values of the medieval Kamakura people are higher than those of terrestrial mammals, indicating that they exploited some amount of marine fish and/or mammals with higher δ^<13>C and δ^<15>N as protein sources. Therefore, the ^<14>C ages obtained for human skeletons could be order than the true ages. ^<87>Sr/^<86>Sr isotopic ratios of human skeletons of the Yuigahama-minami site tend to be higher than those of the Chusei Shudan Bochi site. Soils, plants and animals feeding on them in a given locality have ^<87>Sr/^<86>Sr values that generally mirror underlying bedrock composition, and thus ^<87>Sr/^<86>Sr ratios of human skeletons are useful tools for assessing migration in prehistory. The result obtained in this study suggests that Yuigahama-minami humans and Chusei Shudan Bochi humas lived in different areas. More skeleton samples should be analyzed for determining detailed ^<14>C ages of humans excavated from the Yuigahama sites, and for estimating migration of prehistory of the medieval Kamakura humans.
著者
平田 和明 長岡 朋人 澤田 純明 星野 敬吾 水嶋 崇一郎 米田 穣
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

赤星直忠博士を中心とする横須賀考古学会は,1967~1968年に神奈川県三浦市所在の雨崎洞穴遺跡(弥生~古墳期)において発掘調査を行った。本研究で出土人骨の整理を行なった結果,非焼骨について,大腿骨がもっとも残存する部位であり,その最小個体数は19体であった。死亡年齢や性別の構成を見ると,本人骨群には少なくとも成人男性3体,成人女性1体,性別不明成人11体,未成人5体の20体が含まれた。焼成人骨について,各部位の出土点数に基づく個体数の算定と焼成状況の復元を試みた。人骨は少なくとも33体からなり,主体は成人であるものの,未成人骨が複数確認された。
著者
石田 肇 岩政 輝男 土肥 直美 平田 和明 鵜澤 和宏 米田 穣
出版者
琉球大学
巻号頁・発行日
2007

鎌倉市由比ヶ浜地域には大量の中世人骨が出土している。刀創受傷率は材木座遺跡が最も高く65.7%であり、由比ヶ浜南遺跡が1.3%であった。また、当時の人口構成の復元を行った。男女比はほぼ1:1であり、未成年と成人個体の比は2:3であった。平均寿命が24.0歳という結果が得られた。中世壮年期女性人骨に結核が認められたので報告した。同位体分析の結果から、中世鎌倉では、2歳前後で、離乳を始めている可能性が高いことがわかった。中世人の歯冠サイズが小さい傾向があることを明らかにし、当時の劣悪な生活環境を反映したものと推論できる。由比ヶ浜南遺跡の動物骨資料分析から、タフォノミー分析が動物考古学にも有効と思われた。オホーツク文化人集団の頭蓋形態小変異を用い分析を行った。RelethfordとBlangero法では、東部オホーツク群では、高いRii値と低い観察値を示すことから、形態的な多様性を失っている可能性を示した。オホーツク文化人は、バイカル新石器時代人、アムール川流域の人々と類似性があることが再確認された。サハリン、北海道東北部のアイヌは、後のオホーツク文化集団などの影響を強く受けた可能性がある。ミトコンドリアDNA分析の結果等は、オホーツク文化人とアイヌとの関連を支持するものであり、日本列島の人類史を書きかえる可能性を示した。久米島近世人骨の頭蓋形態小変異の研究は、琉球列島の人々が、先史時代から歴史時代にかけて、本土日本からのみならず、南方からの遺伝的影響を受けている可能性を示唆した。同資料の変形性脊椎関節症の評価を行った。女性においては腰部での重度化を認め、その要因は男女間の食性の差も示唆される。また、右肘関節の関節症も女性に多い齲歯率、生前脱落歯率が男性より、女性に有意に高く、女性特有のホルモンの変化による影響に加え、米田らの安定同位体分析では、女性が炭水化物から、男性は魚類からたんぱく質を摂取する傾向があり、男女間の食習慣の違いも反映していると思われる。