著者
谷村 省吾 TANIMURA Shogo
巻号頁・発行日
2019-11-05

『現在』は実在するか? 『時間の経過』は実在するか? 『時間の始まり』はあったのか?などの『時間』概念の根本を問う哲学者と物理学者の討論をもとに『〈現在〉という謎―時間の空間化批判』(勁草書房、2019年)という本を分担執筆した。このノートは、『〈現在〉という謎』のうち谷村省吾が討論・執筆した部分に関する補足である。とくに以下の部分を強調したい:4.4節 物理学と直観、4.5節 哲学者と物理学者の相違点、4.7節 形而上学を再定義する、4.9節 実在論・反実在論論争、4.10節 すれ違いの要因を分析せよ、4.11節 「〈現在〉という謎」を物理学の問題に回収する。(総ページ数110)
著者
谷村 省吾 TANIMURA Shogo
出版者
サイエンス社
雑誌
数理科学 (ISSN:03862240)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.42-48, 2018-03

物理学者のウィグナーは1959年に “The Unreasonable Effectiveness of Mathematics in the Natural Sciences” (自然科学における数学の不合理な有用性)と題する講演を行った。数学は自然科学においてあまりにも便利である。とくに物理学では、推論・計算をする上で数学が便利だというだけでなく、そもそもの前提となる物理法則を数学以外の言葉では言い表せない。そのように世界が成り立っていることは不思議だし、そのような数学を人類が創造したことも不思議だ。しかも、もともと物理のために創られたのではない数学概念が、のちに物理を語る言葉として使われることがある。そのようなことはまことに不思議で、合理的に説明できない、というのがウィグナーの論の概要である。ウィグナーの見解は当たっていると思える部分もあるが、私は全面的には支持できなかった。まず、数学を用いた物理学がうまくいっている面はたしかに目につくが、物理学の失敗例もまた多数ある。人類史上、突然に、素晴らしくうまくいっている数学と物理学ができたというよりは、うまくいったものが生き残るという進化的な過程を経て、現在のような自然科学のしくみ、とくに科学的思考方法と表現形態ができてきたと考えるほうが素直であるように思える。 そういったことを論じて、うまく行っている数学と物理学の関係の例として、代数的量子論の概略を解説した。各節の見出し:1. 物理学と数学;2. 数学は物理学の言葉である;3. それは不合理なのか?;4. 量子力学と数学;5. 代数的量子論.補足解説の各節の見出し:1. スペクトル値と最小多項式;2. 本稿の式(2)の導出;3. 本稿の式(4)の導出;4. 本稿の式(6)の導出;5. 量子力学をよく知っている人向けのコメント;6. ウィグナーの論説と進化論;7. 数学・物理学の成功は奇跡か?;8. 進化は必ずしも改善を意味しない;9. 謝辞(リポジトリ掲載 2019年11月6日)
著者
谷村 省吾
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-89, 1992-04-20 (Released:2017-10-02)

量子力学系の断熱変化に伴う位相因子-Berryの位相というものがある.それは断熱変化ののちに量子系が元の状態に戻っても,元に戻らない余分な位相因子である.これに似た現象が古典力学にもある.自力で変形可能な,宙に浮いた物体-例えば猫,名前はTomとい-は,変形して元の形に戻っても,その向きは元通りにならない,つまり宙返りすることがある.これらの現象はともに接続の微分幾何の言葉で捉えられることを解説する.また,接続の微分幾何はゲージ理論の一側面を担っているが,この幾何学の観点から見るとき,量子系・古典系・ゲージ理論に多くの類似点・対応物があることがわかる.これらの点について一般的に考察する.最後に具体例を構成する.とくにその例の中で,複素射影空間P^2(C)上の新しい型のインスタントン的な接続を示す.
著者
谷村 省吾
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.119, no.4, pp.280-290, 2012

今日「ハイゼンベルク方程式」と呼ばれている式を最初に書いた人はハイゼンベルクではなく、「ニュートン運動方程式」を最初に書いた人はニュートンではないといったエピソードを紹介し、なぜそういった食い違いが生ずるのか考察し、学術誌・学会誌の存在意義を考え直す契機を提供したい。
著者
谷村 省吾
出版者
素粒子論グループ 素粒子研究編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.1-89, 1992-04-20

量子力学系の断熱変化に伴う位相因子-Berryの位相というものがある.それは断熱変化ののちに量子系が元の状態に戻っても,元に戻らない余分な位相因子である.これに似た現象が古典力学にもある.自力で変形可能な,宙に浮いた物体-例えば猫,名前はTomとい-は,変形して元の形に戻っても,その向きは元通りにならない,つまり宙返りすることがある.これらの現象はともに接続の微分幾何の言葉で捉えられることを解説する.また,接続の微分幾何はゲージ理論の一側面を担っているが,この幾何学の観点から見るとき,量子系・古典系・ゲージ理論に多くの類似点・対応物があることがわかる.これらの点について一般的に考察する.最後に具体例を構成する.とくにその例の中で,複素射影空間P^2(C)上の新しい型のインスタントン的な接続を示す.
著者
谷村 省吾 TANIMURA Shogo
巻号頁・発行日
2016-03-02

不確定性関係は、量子力学の基本的性質の一つであり、2種の物理量の値を同時に確定させることはできないこと、あるいは、一方の物理量の値を測定することが他方の物理量の値に不測の変動をもたらしてしまう関係性として理解される。量子力学の建設期から現在に至るまで、不確定性関係は、マクロ世界の古典物理とミクロ世界の量子物理とを峻別する特徴である。しかし、「不確定性」の定義には諸説があり、不確定性関係の定式化にもさまざまバージョンがある。近年、不確定性の明確な定義と、不確定性関係の数学的に正当な証明と、物理実験による検証の研究が進んだ。これらの歴史を踏まえて、多様化した不確定性関係を整理して解説する。