著者
菅原憲一 内田 成男 石原 勉 高橋 秀寿 椿原 彰夫 赤星 和人
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.289-293, 1993
被引用文献数
22

脳卒中片麻痺患者39名を対象に歩行速度および歩行自立度に関与する因子を知る目的で, 上田による12段階片麻痺回復グレード法(以下グレード), 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力, 深部感覚障害, 身長, 体重, 罹病日数, 年齢を選びその関連性を検討した。その結果, 歩行速度・歩行自立度に対して高い相関を示したのはグレード, 患側下肢荷重率, 患側下肢筋力であった。また, 三変数間の相関も高かった。さらに歩行能力の二つの指標を目的変数としたステップワイズ重回帰分析の結果では, 歩行速度の第一要因は患側下肢荷重率であるのに対し, 歩行自立度の第一要因はグレードとなっていた。以上の結果から片麻痺の歩行予後予測には運動機能評価における定性的評価に加えて, 定量的評価が重要であることが示唆された。
著者
種村 純 椿原 彰夫
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.110-119, 2006 (Released:2006-04-28)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

Communication disorders following traumatic brain injuries are different from those caused by aphasia. These disorders are classified into formal and semantic problems of utterances, and ego-centric and disinhibited remarks. These problems are analyzed by discourse analysis and pragmatics, but standardized assessment methods have not been developed. Among the neuropsychological symptoms, the executive functions, especially planning, monitoring, abstraction skill, inhibition, and attention, and visual perception are associated with these communication disorders. Development of appropriate therapy methods for treating these problems is needed.
著者
大塚 友吉 道免 和久 里宇 明元 園田 茂 才藤 栄一 椿原 彰夫 木村 彰男 十野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.731-735, 1994-10-18
被引用文献数
10

60歳以上の高齢者において握力測定法とその正常値について検討を行った.握力測定法については,握力計の握りの幅が5cm前後であれば問題なく,また体位については,座位または立位で測定すると臥位での測定に比べ有意に大きな測定値が得られた,そこで,疾患群への応用を考慮して,座位で,握力計の握り幅は5cmとし,被験者による若干の修正を許可して,60歳以上の健常高齢者における握力の正常値を求めた.男性に比べ,女性において,加齢の影響が強い傾向にあった.また,対象を運動群と非運動群とに分けた場合,前者では,後者より握力が有意に強く,ゲートボールなど運動を行うことが,高齢者の握力維持に有効である可能性が示唆された.
著者
園田 茂 椿原 彰夫 田尻 寿子 猪狩 もとみ 沢 俊二 斎藤 正也 道免 和久 千野 直一
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテ-ション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.p217-222, 1992-03
被引用文献数
8

入院リハビリテーションを施行した脳血管障害患者(入院時61名,退院時49名)を対象に,FIMおよびBarthe1 Index (BI)によるADL評価を行った、FIMの合計点とBIの合計点の間の回帰係数は0.95であり,FIMはBIと同程度に妥当な評価表である可能性が示唆された.BIの満点に対応する回帰直線上のFIM合計点は満点には至らず,FIMはADLが自立に近い患者におけるリハビリテーションの余地を示しやすいと考えられた.さらにFIMの各項目ごとに,それぞれを従属変数として重回帰分析を行った.独立変数にはFIMのコミュニケーションと社会的認知の項目の合計点(認知合計),Brunnstrom stage等を用いた.入院時のADLには認知合計の寄与が大きく,退院時には麻揮の寄与が大きかった.
著者
岡田 有司 吉村 洋輔 田中 繁治 上杉 敦実 椿原 彰夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101264, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】脳卒中患者が歩行を獲得することは介護者の介助量軽減のみだけでなく,発症後の生命予後に関与しているとされる.しかし,歩行獲得に関与する因子として,年齢や運動麻痺,体幹機能,バランス能力,高次脳機能障害,認知機能面など多くの因子が影響するとされている.脳卒中の歩行予後予測には二木の分類,FIM,機能障害の総合的評価指標であるSIASなどが使用されている.しかし,これらの研究においては,mRS やFIM・BI,屋内歩行・屋外歩行・車椅子生活・全介助などの予後予測にとどまり,各身体機能面や認知機能面が歩行獲得にどのように関与しているかは不明である.かつ,多くの研究は発症後間もない急性期ではなく,回復期での検討である.そこで本研究の目的は,急性期理学療法開始1週間後の機能障害,認知機能面からどのような因子が歩行獲得に影響しているのかを後方視的に検討した.【方法】対象は平成21年5月1日から平成24年8月31日までに脳卒中を発症して当院回復期病棟へ入院した181名とした.さらに,SAH・小脳・延髄・多発性・両側性病変,病前mRS3以上,評価日までに自立歩行を獲得した症例,評価不可の症例を除いた80名(平均年齢67.7±11.9歳,男性50名)を対象とした.調査項目は回復期病棟退院時の歩行能力,年齢,性別,急性期理学療法開始1週間後の項目(意識障害の有無,SIAS-Motor合計点,SIAS-Trunk合計点,SIAS-非麻痺側膝伸展得点,FIM認知項目合計点)とした.回復期病棟退院時の歩行能力は,運動療法室での歩行能力とし,歩行FIM4点以上を歩行獲得可能と定義した.歩行獲得可能は71名でありA群とし,不可は9名でありB群とした.平均年齢はA群67.2±11.8歳,B群71.7±13.0歳,性別はA群男性46名,B群男性4名,意識障害の有無はA群で無し53名,B群で無し2名,SIAS-MはA群6.5±5.0点,B群1.3±4.0点,SIAS-TrはA群3.4±1.5点,B群1.1±1.3点,SIAS非麻痺側膝伸展はA群2.3±1.0点,B群1.8±0.8点,FIM認知項目はA群22.5±10点,B群11±4.6点であった.統計解析には,まずA群とB群において,各調査項目の差を知るためにt検定,χ2検定を行った.次に,従属変数を回復期病棟退院時の歩行能力とし,独立変数を年齢,意識障害の有無,SIAS-M,SIAS-Tr,FIM認知項目とし,変数増加法(尤度比)の二項ロジスティック回帰分析を行った.また,年齢,意識障害の有無においては,従属変数および独立変数のどちらにも関与する交絡因子として投入して行った.なお,有意水準は5%未満とした.すべての統計解析のために,PASW Statistics 18.0(SPSS社製)を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は倫理審査での承認を得ており,個人情報の管理に注意した.【結果】統計解析の結果,2群間の比較では意識障害の有無,SIAS-M,SIAS-Tr,FIM認知項目に有意差が認められた.ロジスティック回帰分析では,歩行獲得に影響している変数として,SIAS-Trが選択された(モデルχ2検定でp<0.001).SIAS-Trのオッズ比は3.994(95%信頼区間1.533から10.406)であった.変数の有意性は,SIAS-Trがp<0.005であった.このモデルのHosmer‐Lemeshow検定結果は,p=0.819で適合していることが示され,判別的中率は91.3%であった.【考察】本研究の結果より,急性期理学療法開始1週間後のSIAS‐Trunk合計点が回復期病棟退院時の歩行獲得に影響していることがわかり,高い確率で予測することが可能と考えられた.先行研究からも歩行には体幹機能が重要であり,急性期座位保持能力が良い症例ほど歩行・ADL向上にむすびつくといわれているため,この結果はそれを支持する内容となった.つまり,両側性神経支配である体幹機能が保たれている症例ほど,歩行獲得にむすびつきやすいことがわかった.しかし,SIAS-Motor合計点やFIM認知項目合計点が変数として選択されなかった.重度運動麻痺の症例は装具を使用することで歩行獲得していた可能性があり,認知項目は歩行自立度に影響すると考えられるため,今回の研究のように歩行獲得のみを判断する場合では影響していなかったと考えられる.しかし,今回の研究では,理学療法の治療内容や量の検討,対象症例の退院時期が一致していないため,今後は統一した検討も必要である.【理学療法学研究としての意義】急性期理学療法評価から早期に歩行獲得に関与する因子を抽出することで,最適な理学療法プログラムを立案し,歩行獲得に向けた治療を行なうことができると考える.
著者
園田 茂 椿原 彰夫 出江 紳一 高橋 守正 辻内 和人 横井 正博 斎藤 正也 千野 直一
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.637-639, 1991-06-10

はじめに 近年,非典型的な筋力低下を呈する症例がリハビリテーション科に依頼され,治療に当たることが少なくない.そして,患者は簡単に「心因性」と診断される傾向があり,そのような代表的疾患として重症筋無力症があげられる. 重症筋無力症はその症状の動揺性から時に転換ヒステリーと誤診されやすい1,2).また,この疾患の特徴として,発症や増悪の契機に心理的要因が大きく関与しているため3),患者や医療者に与える誤診の影響は少なくない. 我々は「心因性」歩行障害と診断され,リハビリテーション医療が必要であるとして紹介された重症筋無力症患者を経験し,安易に「心因性」,「ヒステリー」と断定することの危険性を痛感した.そしてリハビリテーション医学の分野における診断学の重要性を再確認したので,若干の考察とあわせて報告する.
著者
上月 正博 椿原 彰夫 前田 真治 山口 昌夫 高岡 徹 永田 雅章 渡邉 修 田中 尚文 渡部 一郎
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.808-813, 2006-12-18

日本リハビリテーション医学会認定研修施設における心理関係業務の内容・臨床心理業務担当者の実態と望まれる資質に関するアンケート結果の報告と,それに基づく提言を行った.リハビリテーション(以下,リハ)診療において,臨床心理業務担当者のニーズは極めて高いことが確認された.対応疾患も脳血管障害,外傷性脳損傷,精神発達遅滞,自閉症のみならず,慢性疼痛,循環器・呼吸器疾患,骨・関節疾患,悪性腫瘍などにも及んでおり,臨床心理業務担当者がリハ関連医学(リハ概論,リハ医学など)をカリキュラムに組み込むことが必要であると考えられた.臨床心理業務担当者養成において診療現場のニーズにあったカリキュラムの導入と質の向上が,リハ診療の発展・質の向上のみならず,臨床心理業務担当者の国家資格の確立や心理関係業務に対する診療報酬のアップにもつながるものと期待される.
著者
椿原 彰夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.25-35, 1987-01-18
被引用文献数
3

運動の与える筋腺維タイプ交換に対する影響を明らかにする目的で, 4週齢および12週齢のラットに自由走行による運動負荷を行わせ, ATPase 染色を用いた酵素組織学的評価を行い, 安静ラットとの相違について検討した.その結果, 安静ラットの加齢による筋腺維タイプ変換は, ヒラメ筋では2A→2C→1および2B→2C→1の方向性に生じ, 長趾伸筋では2A→2Bおよび2C→2Bの方向性の変換が生じると考えられる.また幼若ラットに与える自由走行の影響としては, ヒラメ筋では1→2C, 長趾伸筋では2B→2Aの方向性の力が働くと考えられる.成熟ラットでは, 運動負荷による筋腺維タイプ変換は認められなかった.