- 著者
-
石塚 伸一
- 出版者
- 龍谷大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
この3年にわたる調査研究、とりわけ、薬物依存に関する治療共同体や米国のドラッグ・コートの調査を通じて、われわれは、日本においても大胆なダイバージョン・プログラムを導入し、依存症回復のためのプログラムを開発する必要があるとの結論に到達した。そのためには、(1)依存症者自身が回復の主体であること、(2)その支援は非政府組織や地域社会を中心に行われるべきこと、そして、(3)再使用は回復のためのステップであることについて、司法、医療および福祉の関係者が前提理解を共有することが必要であること、なども明らかになった。その成果は、『日本版ドラッグ・コート〜処罰から治療へ〜』(日本評論社、2007年)の刊行や国際シンポジウムや学会報告を通じて公表した。この間、刑事施設の運営および社会内処遇の改善のための立法作業が進められていることもあり、われわれの「日本版ドラッグ・コート」構想にも関心が寄せられ、多くの理解者を得ることができた。しかし、この構想を実現するためには、(1)法的諸問題の精緻化、(2)社会的コストの算出、(3)効果的な回復モデルの開発、(4)関係機関・団体のネットワークの構築など、新たな課題も発見された。今後もその実現のための実践的な調査研究活動を継続していく予定である。