著者
吉沢 豊予子 跡上 富美
出版者
長野県看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

平成13年から15年にわたり、医療とジェンダーという観点から研究を行った。その中でこの3年間で医療の中のジェンダーは、性差医療というひとつの問題提起を行い、その枠組みを明確にするにいたった。1.ジェンダーの概念分析:社会学で使用されているジェンダー、セックス、セクシュアリティ、ジェンダーの違い、さらに医療の中でジェンダーはどのような言葉の意味をもって使用されているかについてジェンダー分析を行った。医学の中でのジェンダー特に性差医療は差異化を明確にしていくことを目的としていた。それは性別による差異化のとどまらず年齢、人種、民族にも及んでいることが明らかとなった。2.看護教科書、看護文献のジェンダー分析:看護の教科書、看護文献について、プロトコールを開発しジェンダー分析を行った。その結果、看護教科書にジェンダーに敏感な視点は見いだされなかった。看護文献においては、母性看護学と老年看護学でジェンダーに敏感な視点を見出す論文が比較的多かった。老年看護学では高齢者そのものの研究ではジェンダーに敏感な視点はなかったものの、介護者を扱った研究ではジェンダー特に性役割とジェンダーの関係を考察している論文が見出された。成人看護学ではジェンダーの視点はなく、男性患者と女性患者を一緒にして、研究結果に出しているものが多かった。3.看護教育とジェンダー:看護基礎教育のカリキュラムにジェンダーの視点をどのように導入していくべきかについて考察した。アメリカのカリキュラムの紹介と研究者が行ってきたジェンダーの視点を入れた「母性看護概論」の紹介および学生のジェンダー観について評価を行った。ジェンダーが健康にどのように影響を与えているかについては、「介護とジェンダー」「ボディーイメージとジェンダー」「セクシュアルヘルスとジェンダー」と様々な気づきをしていた。この研究では、医療の中でのジェンダーとは何かの概念分析を行った。また、看護論文を中心にして、ジェンダーに敏感な視点特に「ジェンダーを考慮した看護」、および看護基礎教育へのジェンダー視点の導入の方向性を示唆した。
著者
中田(中込) かおり 跡上 富美
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.66-79, 2022 (Released:2022-06-30)
参考文献数
41

目 的生殖年齢にある20歳代から30歳代の就労男性を対象とし,妊孕性に関する知識の実態と情報ニーズについて明らかにすることである。方 法20歳以上40歳未満(2019年4月1日現在)の男性で,妻やパートナーが出産を経験していない500名を対象とし,2020年3月にウェブ調査を実施した。質問項目は,対象者の背景,妊孕性の知識と情報ニーズ,健康で気になること,妊娠・出産の情報源とした。妊孕性の知識は20項目で,齊藤の「不妊知識尺度13の質問」(2014)を許可を得て一部改変し,研究者らが作成した7項目を加えて使用した。記述統計量の算出,背景因子による層別解析,尺度の信頼性・妥当性の検討を行った。東邦大学看護学部倫理審査委員会より承認を得て実施した(承認番号:2019010)。結 果分析対象は500名,平均年齢29.8歳(SD=5.5),大学卒業以上60.6%,挙児希望有45.6%,パートナー有21.0%であった。妊孕性知識20項目すべてに「わからない」と回答した98名(19.6%)を分析から除外した結果,正答者割合は,平均42.1%(SD=23.9,最大67.7%,最小19.4%)であった。挙児希望(p=.003),不妊相談経験(p=.01)について有意差があり,年齢・最終学歴・パートナーの有無と関連はなかった。妊孕性知識20項目の信頼性・妥当性は確認された。妊孕性に関する情報ニーズがある人は54.4%で,年齢,食生活,生活習慣のニーズが高かった。健康で気になる項目がある人は42.4%であった。妊娠・出産の情報源は,パートナー,インターネット・SNSであった。結 論生殖年齢にある男性の妊孕性知識は,挙児希望や不妊相談の経験の有無により有意差が認められた。今後は男性の妊孕性知識の実態とニーズを踏まえ,情報提供と知識の普及・啓発をしていくことが課題である。
著者
日下 裕子 中村 康香 跡上 富美 吉沢 豊予子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.5-13, 2015 (Released:2016-11-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1

要 旨目的:続発性リンパ浮腫は,リンパ節郭清を伴う婦人科がん手術によって引き起こされる後遺症であり,これを予防する予防教育が注目されている.本研究は予防教育で,リンパ浮腫の発症を予防するには生涯を通じてセルフケア継続が必要と説明されたとき,どのような思いを抱くのかを明らかにする.方法:婦人科がん手術後に実施するリンパ浮腫予防教室受講後に同意を得られた研究協力者に半構造化面接法を行い,質的帰納的に分析を行った.結果:研究協力者は30歳代から60歳代の女性15名であった.面接内容から,最終的に【終わりのないセルフケアは重荷】【セルフケアと継続性の不確かさ】【セルフケアは必要と自分に言い聞かす】【具体的にやらなきゃいけないセルフケア】という4つのカテゴリを抽出した.考察および結論:【終わりのないセルフケアは重荷】【セルフケアと継続性の不確かさ】の2つのカテゴリは自覚症状がないままに続くケアの重荷という予後の不確かさと確証のないケアと自身の継続性につながる医療の不確かさという認知であった.これらの不確かさの評価が【セルフケアは必要と自分に言い聞かす】【具体的にやらなきゃいけないセルフケア】というこれから行う具体的なセルフケアへと思考を発展させていく思いとなっていた.このことは,医療者がリンパ浮腫未発症者のセルフケアへの思考の喚起と実践につながる支援法の開発を示唆するものである.
著者
中村 康香 跡上 富美 竹内 真帆 吉沢 豊予子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.313-321, 2012-07-01
参考文献数
19

入院中の切迫早産妊婦がどのように妊娠を受けとめているのか明らかにするため,産科を取り扱う7医療施設において,切迫早産の診断がつき, 1週間以上持続点滴を伴う治療にて入院している妊婦189名に対して,妊娠についてどのように思っているかについて自由記述の回答を依頼した。分析は,自由記述の内容を,質的帰納的に分析した。その結果,肯定的受けとめとして,【うれしさと感動】【母親とわが子の実感】【付き合っていけそうな妊娠】【妊娠によるメリットを実感】【人生の糧となる体験】【家族とのつながりを実感】【出産を意識】【感謝の気持ちを実感】の8つのカテゴリ,両価的受けとめとして,【妊娠の喜びと不安】【妊娠の現実感と非現実感】【妊娠の喜びとつらさ】【妊娠継続と早期終了】の4つのカテゴリ,否定的受けとめとして,【拒否したい妊娠】【予想と異なる妊娠】【他人事の妊娠】【不安だらけの妊娠】【自分への負担がある妊娠】の5つのカテゴリが認められた。入院している切迫早産妊婦に対して,胎児の安全性が確保されるような支援を行い,妊娠に対する受けとめが少しでも肯定的になるように援助していくことが大切である。
著者
和田 彩 中村 康香 跡上 富美 佐藤 眞理 吉沢 豊予子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.213-219, 2016 (Released:2017-03-18)
参考文献数
43

目的:近年増加する就労妊婦に特化した支援を実現するには,就労妊婦としての特徴や就労妊婦ならではの心情に着目した知見が必要である.本概念分析の目的は「就労妊婦の罪悪感」の概念を明らかにし,今後の研究や就労妊婦に対する看護支援への示唆を得ることである.方法:分析は,Walkerらによる概念分析の手順に沿って行った.罪悪感の一般的な捉え方,心理学,精神医学・精神分析学,看護学における用法の分析の結果,9つの罪悪感の定義属性を抽出した.分析結果を就労妊婦の経験・実態・否定的感情,働く母親の罪悪感という観点から文献検討した内容と統合した.結果:就労妊婦の罪悪感は,[自己規範に違反した際の否定的感情],[行為の自制をする感情],[利益過剰状態に対する感情]の3概念で構成されていた.結論:就労妊婦の罪悪感は,就労妊婦に対する理解を深める上で重要な概念であり,妊娠期の心理的健康に影響を及ぼす可能性も考えられる.今後の更なる研究の蓄積,測定用具の開発が求められる.
著者
吉沢 豊予子 跡上 富美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

性差における女性特有のケアの検証-女性とリンパ浮腫との関係から-における3年間の研究により,以下の内容を明らかにすることができた.1. 健康な成人女性の生理学的指標を用いた,浮腫に関連するデータの蓄積である。今まで浮腫に関連する健康な成人女性のデータがなかったため、今回のデータが浮腫に影響を及ぼす関連因子を明らかにすることができ,浮腫の予防等の指導に意義あるものと思われる.成人女性5名を対象に最低3日間の朝・夕の下肢周囲測定,下肢のポンプ機能測定,むくみの自覚,BMI,筋肉率,体脂肪率を測定しその関連を統計的に分析した.その結果,下肢の周囲測定においては朝夕で有意差は認められなかった.下肢のポンプ機能はVRT(Venous Refilling Time)を使用し測定した。その結果朝夕では、VRT値は夕方低下するものの有意差は認められなかった。また、VRT値と年齢、体脂肪率,筋肉率,BMIとの関連を調査した結果年齢,体脂肪率,BMIで負の相関が認められ,筋肉率と正の相関が認められた(p<.001)。2. がん患者のリンパ浮腫に対する知識およびセルフケア能力およびリンパ浮腫と関連因子を明らかにするため,がん患者会参加者35名の協力を得て,調査を実施した.今回の協力者は子宮頸がん,体がん,卵巣がんの患者で有り、80%リンパ廓清を行っていた.リンパ浮腫に対する医師からの説明は約40%のみが術前に聞いており,その後は雑誌あるいは患者仲間からそれぞれ3割の方々が情報を得ていた.今までリンパ嚢腫を含めリンパ浮腫にり患した経験のある者が、45.7%と多く,この方々はとらえず手術をした病院へ出かけるか、自己セアで対処していた.その後自己流の予防ケアをされている方々が、8割おり、この方々は自己効力感も高めの傾向にあった。正しい知識を与え、セルフケアにつなげる必要がある。