著者
近藤 哲也 竹内 清夏
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.495-502, 2004-05-31
参考文献数
25
被引用文献数
2 8

ムラサキモメンヅルは「北海道レッドデータブック(2001)」において希少種に位置づけられているが,渡島支庁の渡島大島では,局内の各所に大規模な個体群が確認され,造成によって裸地化した場所にもいち早く定着している。このことは,本種は北海道での希少種であると同時に自生地周辺の植生回復材料としても有望であることを示唆している。本研究では,本種の保護と植生回復材料としての可能性を探るために,種子の発芽条件とその後の生育に間する実験を行った。種子は硬実休眠を有しており,無処理の種子は10%以下の発芽率であった。硬実休眠は凍結・解凍処理によっては打破できなかったが,濃硫酸に20〜90分間浸漬することで播種後6日以内に100%近い発芽率を得ることができた。電子顕微鏡による観察によって,濃硫酸処理は種皮に穴や亀裂を生じさせていることが示された。休眠を打破された種子は10〜30℃の温度で播種後10日以内に90%以上の発芽率を示し,14ヵ月間貯蔵後でも90%以上の発芽率を維持した。野外のセルトレイに5月25日に播種し,発芽した実生を圃場に移植した結果,翌年の10月には10個体のうちの6個体が開花結実した。
著者
近藤 哲也 榎本 博之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.268-276, 1997-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
5

福井県地方を中心に, 畦畔の雑草を抑制し, 農村景観の美化を図ることを目的として, 強健で被覆速度が速く, 花の美しい地被植物が導入されている。本研究では, それら地被植物の中でも最も多く導入されているセイヨウジュウニヒトエ(Ajugareptans L.)の被覆速度ならびに雑草抑制効果と除草時間を評価した。1994年10月11日に4, 9, 16, 25本/m^2の植栽密度とポリエチレン製マルチ被覆の有無を組み合わせた実験区を設け, 1996年12月まで, 毎月被覆率・株高・開花数を測定し, 年に3回手取り除草時間と雑草量を測定した。植栽後まもなくは, 植栽密度が高いほど雑草量が多くなり, 除草時間も長くかかった。しかし, その後は植栽密度が高いほど被覆率は早く高まり, 植栽後10か月の被覆率は80%以上となって, 雑草量, 除草時間は, 全ての植栽区で裸地よりも少なくなった。さらに, マルチを併用すると, 雑草量, 除草時間ともは大幅は短縮できた。
著者
井上 博之 山川 宏二 近藤 哲也 正木 征史
出版者
The Surface Finishing Society of Japan
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.1178-1180, 1990-11-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

Silver deposits formed on copper substrates by replacement reactions show poor adhesion, and a silver film plated on such a deposit dose not adhere. Silver ion makes a highly stable complex with cyanide ion, so that in a silvercyanide solution, the activity of silver ion is very small. This is one of the reasons for the universal use of cyanide baths in the industrial silver plating.However, consideration of the difference between the values of the stability constants for the silver-iodide complex and for the copper-iodide complex suggest that the rate of replacement deposition of silver on the copper substrate in silver-potassium iodide solutions, might be comparatively low. To confirm this, the rate of replacement deposition of silver in a silver-potassium iodide solution (AgNO3 0.10mol/L, KI 2.00mol/L) and in a strike silver plating bath (AgCN 0.028mol/L, KCN 1.15mol/L) was estimated from the current density corresponding to the point of intersection of the anodic and the cathodic polarization curves. These estimated values were almost the same, and it is suggested that the silver-potassium iodide solution is not only a cyanide free silver plating bath capable of employing a copper substrate but a silver plating bath which requires no strike plating.
著者
近藤 哲也 高橋 朋身 下村 孝
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.28-35, 2000-08-31
参考文献数
20
被引用文献数
5 10

海浜地域におけるハマヒルガオの景観形成素材としての利用および本種の保全を目的として, いくつかの休眠打破処理を試み, 硬実種子であることを確認した。そして硬実性解除のための適切な硫酸処理時間とその機作を明らかにした。ハマヒルガオの種子をシャーレに播種して恒温器内に置き, 発芽の過程を観察した。その結果ハマヒルガオの無処理種子は, 発芽時の温度や光条件そして採取場所, 採取時期, 貯蔵期間にかかわらず, 吸水して発芽できる種子は数%にとどまる硬実種子であった。しかし種皮への針による穿孔, 紙ヤスリによる傷付け, 濃硫酸への浸漬処理によって吸水し発芽が可能になった。それらの処理の中でも硫酸処理がもっとも効率的であった。濃硫酸処理の効果は, 種子採取の場所や時期によって異なったが, 60分から120分の浸漬処理で80%程度の発芽率を得ることができた。濃硫酸に浸漬すると, 初期にはへそ周辺部に, 浸漬時間が長くなると種皮にも亀裂や穴を生じた。この亀裂や穴から吸水し, 発芽が可能になったと考えられた。
著者
近藤 哲也 西沢 美由紀 島田 大史
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.81-86, 2005 (Released:2007-03-03)
参考文献数
29
被引用文献数
1

北海道礼文島の固有種であるマメ科のレブンソウは,環境庁および北海道のレッドデータブックに,それぞれ,「絶滅危惧IA類」,「絶滅危惧種」に指定されている。種子の発芽条件の把握のため温度条件と濃硫酸処理に関する実験を行った。種子は物理的休眠を有しており,無処理種子では10%程度の発芽率であったが,10-40分間の濃硫酸処理によって種皮に亀裂や穴が生じて吸水が可能になり高い発芽率を示すようになった。休眠が打破された種子は,10-30℃の幅広い温度で播種後10日目に71-77%の発芽率を示した。濃硫酸処理を施した種子を5月下旬に播種し,植木鉢に移植してガラス室内で育成したところ,翌年の5月下旬から8月中旬にかけて開花した。
著者
近藤 哲也 PHARTYAL Singh Shyam PHARTYAL SINGH SHYAM
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

・野外での実験秋における種子の成熟期には,C.giganteumの種子は未発達の胚を有しており,胚は,翌年の高温期の夏を経た秋に生長を開始した。播種してから二回目の冬の終わりから春の初めにかけて発根し,雪が解けた春に出芽した。すなわち,種子が散布されてから出芽までには18-19ヶ月の長い期間を要した。・室内での実験野外での実験では,種子散布後,「(秋→冬→春)→夏→秋→冬→春」の2回目の春に子葉が出芽した。しかし,室内の実験では,野外の夏→秋→冬→春を模した25/15℃(120d)→15/5℃(90d)→0℃(90d)→15/5℃の温度推移を与えることで,胚が生長し,発根して出芽した。すなわち,C.giganteumの種子は秋に結実するにもかかわらず,その後の(秋→冬→春)の温度は,胚成長,発根,出芽に不要であることが示された。夏→秋の温度を与えられて完全に胚が伸長した種子は,その後,90日間の冬の温度を経験させることによって幅広い温度で,高い発根率と出芽率を示した。GA3は,胚の生長に対して効果はなく,したがって,その後の発根と出芽にも効果はなかった。・種子の貯蔵採取直後の種子は,96%の高い発芽率を有していた。-20℃と0℃で密封乾燥貯蔵した種子は,貯蔵後450日を経ても80%以上が生存していたが,15℃,20℃,そして室温で貯蔵した種子は450日の貯蔵後には,生存率が20%にまで低下した。
著者
近藤 哲也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

オオバナノエンレイソウの種子が散布から出芽までに21ヶ月もの長期を要する理由を,胚成長,発根および出芽に必要な温度と光要求の側面から明らかにした。オオバナノエンレイソウの胚は,種子の散布時には小さく未発達であり,胚成長と発根のためには第1回目の低温を必要とし,発根した種子が出芽するためには,第2回目の低温が必要であった。種子の発根率は,変温条件よりも恒温条件で,また明条件よりも暗条件で高かった。
著者
近藤 哲也 山口 真有美
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.507-510, 1999-03-30
被引用文献数
11 11

海浜植物の保全と海浜地域での景観への利用を目的としてハマエンドウの種子発芽特性を明らかにした。ハマエンドウの種子は硬実種子であることが確認された。濃硫酸に浸漬することで種皮に穴と亀裂を生じ,それによって硬実を打破できた。40分間硫酸処理された種子は10〜20℃の温度範囲で90%以上の発芽率を得ることができた。しかし,25,30℃では発芽率が低下し,発芽速度は遅くなった。硫酸処理後の種子は,乾燥3℃,無乾燥3℃,無乾燥室温のいずれの条件下で貯蔵しても,少なくとも1年間は処理直後の発芽力を維持できた。また,自生地の砂を覆土した実験では,6cmの覆土でも25日目には80%の発芽を見た。