著者
増田 富士雄 藤原 治 酒井 哲弥 荒谷 忠
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.650-664, 2001-10-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
48
被引用文献数
14 17

Relative sea-level changes and variations in shoreline progradation rate over the past 6000 years are elucidated from the elevations of the beach deposits, their 14C ages, and the geographic position of each locality on the Kujukuri strand plain, Pacific coast of the Boso Peninsula, central Japan. These past sea-levels were +4 to +6 m above the modern sea-level (high-stand stage) at 6000 to 5300 calendar years B.P., +3 to + 4.5 m (stable stage) at 5000 to 3500 years B.P., declined from +1.2-+ 3.4 m to + 0.5-+ 2.1 m (falling stage) at 3300 to 2250 years B.P., and were-1.5--1 m to + 1 m (stable stage) from 1650 to 250 years B.P. ; sea level is 0 m at present. The detailed changes revealed by this new method strongly imply the existence of several rapid uplifts (0.4 to 1.2 m per event) at 5100 to 5500 years B.P., 3400 years B.P., 2400 years B.P., 1650 years B.P., and 0-250 years B.P. The uplifts were co-seismic, because the speed of occurrence seems to have been high, and the events are generally associated with so-called “tsunami deposits.” Co-seismic uplift in this region has not been reported previously from historical records or geological evidence.
著者
藤原 治 増田 富士雄 酒井 哲弥 入月 俊明 布施 圭介
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.41-58, 1999-02-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
49
被引用文献数
12 19

内湾(溺れ谷)の泥底に砂や礫を再堆積させるイベントが,完新世の三浦半島と房総半島南部で繰り返し発生したことが,沖積低地で行ったボーリング調査によって明らかになった.これらの再堆積層は,上方へ細粒化する淘汰の悪い泥質砂層や砂質礫層からなり,他生の貝化石や粘土礫を多く含み,生痕が発達し,自生の貝化石を含む泥層を削り込んで覆う.これらの再堆積層は,3ヵ所の沖積低地で掘削した6本のボーリング・コアで認められ,加速器質量分析計(AMS)による79個の14C年代測定値に基づいて,近似した年代をもつ7つの層(下位からT1~T7)にまとめられる.T3~T7は,水深10~20mの内湾中央部に堆積したものであるが,岩礁などに棲む貝化石を泥底の群集と混合して含む.また,貝化石は下位層と14C年代値が逆転するものがある.T1,T2は上述した異常堆積物と類似した堆積構造や化石を含み,特に貝形虫化石群集は外洋水が内湾奥の汽水域へ流入したことを示唆している.T1~T7の堆積構造,化石の種構成,14C年代値は,海底および海岸の侵食と削剥された堆積物の湾央への運搬が強い流れに起因することを示している.さらに,T3~T7は,相模トラフ周辺で発生した巨大地震に伴う海岸段丘の離水時期と年代が近似する.以上のことから,T1~T7は海底地震に伴う津波で形成されたことが強く示唆される.これらの津波は,過去約10,000年の間に,400年から2,000年の間隔で発生した.
著者
藤原 治 増田 富士雄 酒井 哲弥 布施 圭介 齊藤 晃
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.73-86, 1997-05-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
37
被引用文献数
5 13

相模湾周辺では,完新世を通じて巨大地震が繰り返し発生したことが,完新世の海成段丘や歴史地震の研究から知られている.しかし,完新世の地震を示す津波堆積物などの地質学的な証拠は,ほとんど知られていない.完新世の3回の地震隆起に対応する津波堆積物を,房総半島南部の館山市周辺に分布する内湾堆積物から初めて見いだした.これらの津波堆積物は,館山市周辺で広域に追跡できる.津波堆積物は,基底が侵食面を示し上方へ細粒化する砂層や砂礫層からなり,貝化石片や木片を多量に含む.貝化石は,内湾泥底と沿岸の砂底や礫底に住む種が混合しており,海底の侵食と再堆積が生じたことを示す.また,陸側と海側への両方の古流向が堆積構造から推定される.3枚の津波堆積物は,それぞれ約6,300~6,000yrs BP,4,800~4,700yrs BP,4,500~4,400yrs BPに堆積したことが貝化石の14C年代値から明らかになった.最下位の津波堆積物は,沼I段丘,野比I段丘の離水と年代が一致する.また,中位と上位の津波堆積物は,それぞれ野比II段丘,沼II段丘の離水と年代が一致する.調査地域では,上述の津波堆積物と類似した堆積相を示す砂層や砂礫層が,約7,400~3,600yrs BPの間に100~200年に1枚の割で堆積している.これらの砂層や砂礫層の一部は,沼段丘上に分布する離水波食棚群(茅根・吉川,1986)に対応する津波堆積物の可能性がある.
著者
藤原 治 増田 富士雄 酒井 哲弥 入月 俊明 布施 圭介
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.489-501, 1999-12-01
参考文献数
47
被引用文献数
7 9

相模トラフ周辺で過去1万年間に発生した地震イベントを,房総半島南部と三浦半島に分布する4つの沖積低地の内湾堆積物から検出した.<br>堆積相解析の結果,基底に侵食面をもち,上方へ細粒化する砂層や砂礫層によって,自生の貝化石を含む均質な泥質層の堆積が中断されるイベントが,各沖積低地で10回以上識別された.また,一部の砂層では,海と陸の両方向の古流向が見られる.内湾堆積物に含まれるこれらの粗粒堆積物は,いわゆる"イベント堆積物"である.<br>タフォノミーの視点からの化石群集の分析によって,イベント堆積物の供給源や運搬・堆積プロセスが推定された.イベント堆積物は,内湾泥底と岩礁など,通常は共存しない異なる環境に棲む貝化石群集が混合しており,湾周辺からの堆積物の取り込みと内湾底への再堆積を示す.湾奥の汽水域や湾中央で堆積した泥層に挾まれる2枚のイベント堆積物は,外洋性の貝形虫化石を多量に含み,外洋水が湾奥に侵入したことを示す.これらは津波堆積物の可能性がある.<br>137個の高密度の<sup>14</sup>C年代測定によって,7枚のイベント堆積物が相模湾沿岸で広域に追跡され,乱泥流が南関東沿岸の広域で同時に繰り返し起きたことが推定された.5枚のイベント堆積物は,南関東に分布する完新世海岸段丘の離水と近似した年代を示し,津波起源であることが強く示唆される.<br>化石群集から復元した古水深変動から,イベント堆積物を挾む2つの層準で急激な海面低下が見いだされた.このイベントは海底の地震隆起と地震に伴う津波を示すと考えられる.<br>地層から地震イベントを検出することは,古地震研究に有力な情報を提供し,地震テクトニクスの新たな研究方法として貢献すると考えられる.
著者
酒井 哲弥 斎藤 文紀 増田 富士雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.1-14, 1995-08-10
参考文献数
23
被引用文献数
5

1980年代後半にエクソングループの手によってシーケンス層序学が確立された。ここではその概念について説明する。その中でも特に, シーケンス層序学で最も基本となるユニットであるシーケンスとそれを構成するユニットの特徴を説明し, ユースタシーが地層形成にどう影響するかについて議論する。
著者
島 研介 酒井 哲弥 和田 朗 山内 良三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OPE, 光エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.98, no.472, pp.13-18, 1998-12-15
被引用文献数
22

長周期ファイバグレーティングにおいて, グレーティング中の任意の位置に任意の位相シフトを導入した位相シフト型長周期ファイバグレーティングの損失波長依存性について理論的に検討を行なった.続いてグレーティング中の一箇所においてグレーティングの間隔を変化させる方法で位相シフト型長周期ファイバグレーティングを試作し, その損失波長依存性について実験的にも確認した.位相シフト型長周期ファイバグレーティングをエルビウムドープファイバ増幅器の利得等化器に応用し, 単一の部品で波長24nmの広帯域において利得平坦度0.2dB以下を実現した.