著者
高田 靖司 植松 康 酒井 英一 立石 隆
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.89-94, 2014-06-30 (Released:2014-06-30)
参考文献数
24

隠岐諸島をはじめ,本州から九州におけるカヤネズミ(Micromys minutus)の12集団について,下顎骨の計測値にもとづき,多変量解析(主成分分析,正準判別分析)をおこない,地理的変異を分析した.その結果,下顎骨について,全体的な大きさ(第1主成分)には集団間で差は認められなかったが,形(第2–第3主成分)には集団間で有意な差が認められた.特に,第2主成分は島の面積との間に有意な相関が認められたので,何らかの要因が形態変異に作用した可能性がある.正準判別分析では,隠岐諸島の集団間で形態変異が認められた.この変異には島の隔離に伴う遺伝的浮動が働いたと考えられた.しかし,下顎骨の大きさ(第1主成分)について集団間で差がみられず,また,遠く離れた地域の集団間で形態的な違いがみられなかった.これは,Yasuda et al.(2005)が明らかにしたように,日本列島におけるカヤネズミの低い遺伝的多様性を反映しているかもしれない.
著者
高田 靖司 酒井 英一 植松 康 立石 隆
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.203-209, 2002-06-20 (Released:2010-06-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

齢推定した野生ハツカネズミの晒骨頭蓋 (n=443; 月齢0.6-16.2) を観察し, 大臼歯歯冠の咬耗速度や, 上・下顎骨の歯槽骨の吸収を調べた. これを野生ハツカネズミと同様の食物を与えて飼育したハツカネズミの晒骨頭蓋 (n=36: 月齢0.6-10.0) と比較した. 野生ハツカネズミでは, 寿命が短く, また飼育したネズミに比べて大臼歯の歯冠が急速に咬耗し, 歯槽骨の著しく吸収された歯周疾患がみられた. 野生集団では, 早くも生後3カ月で歯冠が著しく咬耗し, 歯槽の槽間中隔や根間中隔が吸収・消失したネズミが現れた. このことは, 野生集団で加齢が急速に進行したことを示している. 歯槽骨の吸収は歯冠の咬耗や齢と関連していた. 野生ハツカネズミでみられた, 歯冠の著しい咬耗や歯槽骨の吸収の原因や背景を考察した. その結果, これらの加齢変化に対して, 彼らの食物や摂食行動が強く影響したと推測した.
著者
坂田 金正 高田 靖司 植松 康 酒井 英一 立石 隆 長谷川 雅美 蔭山 麻里子 浅川 満彦
出版者
日本生物地理学会
雑誌
日本生物地理学会会報 (ISSN:00678716)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.135-139, 2006-12-30

To study the biogeography on the Japanese insular helminth fauna of Apodemus speciosus (Muridae, Rodentia), thoses from the Izu Islands in Japan were investigated in the present survey. A total 525 individuals of the large Japanese field mice were collected between March, 1984 and June, 1998. From the field mice collected on five islands in the of Izu Island Chain, including Ohshima Island (abbreviated to o), Nii-jima Island (n), Shikine jima Island (s), Kozu-shima Island (k) and Miyake-jima Island (m), 10 parasitic nematode species, namely, Heligmonoides speciosus [o, n, s, k, m; showing the abbreviations of the localities], Rhabditis strongyloides [o, k], Syphacia frederici [o, n, k, m], Heterakis spumosa [o, n, s, k], Subulura suzuldi [k], Rictularia cristata [s, k, m], Physaloptera sp. [o, k, m], Mastophorus muris [n, k], Eucoleus sp. [k], and Trichunis sp. [s], were detected through the present examination. This is the first report of the parasitic nematodes obtained from A. speciosus in the Izu Islands. The nematodes obtained except for Physalopera sp. have been reported already from A. speciosus occurring on the main islands and several offshore islands of Japan. The distribution pattern of homogenic development nematode genera, Heligmonoides and Heligmosomoides, was "Heligmonoides speciosus present, Helib nosomoides kurilensis absent"-type.
著者
宮尾 嶽雄 花村 肇 植松 康 酒井 英一 高田 靖司 子安 和弘
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.128-140, 1983-03-25 (Released:2010-08-25)
参考文献数
34

1982年1月23~26日に, 淡路島南部, 諭鶴羽山地北西山麓部の哺乳動物の調査を行なった。翼手類については, 調査できなかった。1) .生息が認められた哺乳類は, 次の6目16種である。食虫目: ジネズミ, ヒミズ, コウベモグラ。霊長目: ニホンザル。兎目: ノウサギ。齧歯目: ニホンリス, アカネズミ, ヒメネズミ, カヤネズミ, ハツカネズミ。食肉目: タヌキ, テン, イタチ (チョウセンイタチ, ホンドイタチ) 。偶蹄目: イノシシ, シカ。2) .ムササビ, スミスネズミ, アナグマなどを欠いている点に, 島のファウナの特徴を示している。キツネも絶滅している。3) .ヒミズは, 腹部を中心に体毛の白化傾向が著しく, また, ヒミズの尾部にカンサイツツガムシの多数寄生例がみられ, 寄生率も高かった。4) .アカネズミの耳介にネズミスナノミ (Tunga caecigena) の寄生がみられた。淡路島に本種が分布していること, ならびにアカネズミが宿主になっていることは, 新しい知見であろう。
著者
高田 靖司 植松 康 酒井 英一 立石 隆
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.89-94, 2014

隠岐諸島をはじめ,本州から九州におけるカヤネズミ(<i>Micromys minutus</i>)の12集団について,下顎骨の計測値にもとづき,多変量解析(主成分分析,正準判別分析)をおこない,地理的変異を分析した.その結果,下顎骨について,全体的な大きさ(第1主成分)には集団間で差は認められなかったが,形(第2–第3主成分)には集団間で有意な差が認められた.特に,第2主成分は島の面積との間に有意な相関が認められたので,何らかの要因が形態変異に作用した可能性がある.正準判別分析では,隠岐諸島の集団間で形態変異が認められた.この変異には島の隔離に伴う遺伝的浮動が働いたと考えられた.しかし,下顎骨の大きさ(第1主成分)について集団間で差がみられず,また,遠く離れた地域の集団間で形態的な違いがみられなかった.これは,Yasuda et al.(2005)が明らかにしたように,日本列島におけるカヤネズミの低い遺伝的多様性を反映しているかもしれない.
著者
宮尾 嶽雄 花村 肇 植松 康 酒井 英一 高田 靖司 子安 和弘
出版者
THE MAMMAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan (ISSN:05460670)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.128-140, 1983

1982年1月23~26日に, 淡路島南部, 諭鶴羽山地北西山麓部の哺乳動物の調査を行なった。翼手類については, 調査できなかった。<BR>1) .生息が認められた哺乳類は, 次の6目16種である。食虫目: ジネズミ, ヒミズ, コウベモグラ。霊長目: ニホンザル。兎目: ノウサギ。齧歯目: ニホンリス, アカネズミ, ヒメネズミ, カヤネズミ, ハツカネズミ。食肉目: タヌキ, テン, イタチ (チョウセンイタチ, ホンドイタチ) 。偶蹄目: イノシシ, シカ。<BR>2) .ムササビ, スミスネズミ, アナグマなどを欠いている点に, 島のファウナの特徴を示している。キツネも絶滅している。<BR>3) .ヒミズは, 腹部を中心に体毛の白化傾向が著しく, また, ヒミズの尾部にカンサイツツガムシの多数寄生例がみられ, 寄生率も高かった。<BR>4) .アカネズミの耳介にネズミスナノミ (<I>Tunga caecigena</I>) の寄生がみられた。淡路島に本種が分布していること, ならびにアカネズミが宿主になっていることは, 新しい知見であろう。