著者
松木 悠佳 石本 雅幸 塩浜 恭子 溝上 真樹 重見 研司
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.123-126, 2015 (Released:2015-06-26)
参考文献数
12
被引用文献数
3

【目的】プレガバリンはさまざまな神経障害痛に対して有効であるが,眠気,めまい,末梢性浮腫などの副作用も多く報告されている.今回,プレガバリンを投与された神経障害痛患者で,副作用が認められた症例の危険因子を後ろ向きに検討した.【方法】当科でプレガバリンを処方された神経障害痛患者を,電子カルテ記録から後ろ向きに抽出した.プレガバリンによる副作用が出現した群(副作用群)と副作用が出現しなかった群(非副作用群)の2群に分類し,年齢,性別,BMI,プレガバリン投与量,副作用出現までの期間,プレガバリン投与前後におけるVAS,eGFR,血清アルブミン値,血清クレアチニン値,血清尿素窒素値,血清カリウム値を比較した.【結果】解析対象患者100名のうち副作用が出現した患者は28名であった.単変量解析では,eGFRが非副作用群に比べ副作用群で有意に低く,血清カリウム値が非副作用群に比べ副作用群で有意に高かった.多変量解析では,血清カリウム値が高値であることが独立した危険因子であった.【結論】プレガバリンを投与される神経障害痛患者において,副作用の発生には血清カリウム値も参考にするべきことが示唆された.
著者
野々山 忠芳 重見 博子 成瀬 廣亮 重見 研司 松峯 昭彦 石塚 全
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.350-354, 2022-09-30 (Released:2022-09-30)
参考文献数
18

症例は59歳男性.出血性ショック,敗血症となりICU入室し,人工呼吸器,PCPS,CHDF管理となった.第4病日よりリハビリテーション開始となったが,平均MRC sum scoreは1.8点であり,ICU-AWと考えられた.同日より両下肢に対する神経筋電気刺激療法を開始した.ICU退室後は離床を開始するとともに,①神経筋電気刺激療法を併用した運動療法,②タンパク質摂取量の 1.3-1.5 g/kg/dayへの設定,③HMBの摂取を開始した.その結果,MRC sum scoreの改善,四肢の骨格筋量の増加を認めた.杖歩行が可能となり第257病日に転院となった.ICU入室中は著明な筋力低下や安静度制限により積極的な運動が困難であったが,神経筋電気刺激療法により早期から筋収縮を促すことが可能であった.また,ICU退室後より運動療法と栄養療法を併用し,筋力,骨格筋量の改善が得られた.
著者
重見 研司
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.511-514, 2021-09-15 (Released:2021-11-05)
参考文献数
4

今回,プロポフォールとレミフェンタニル,ロクロニウムの3剤を,脳波モニタと筋弛緩モニタ,シリンジポンプ,パソコンで構成されたフィードバック機構で自動投与する装置を開発した.本装置は,ヒューマンエラーを減少させ,薬剤の適正使用を促進し,患者の安全と医療経済に貢献することを目的として開発された.本装置は,ノイズに強く,鎮痛のモニタを必要とせず,新しい筋弛緩モニタを導入したことに特徴がある.しかし,血圧や心拍数,輸液量や輸血の選択などについては,麻酔科医の判断に委ねられている.本装置によって,より安全に,いつでも,どこでも,だれにでも,安心して麻酔を受けてもらえる体制が整備されることを期待する.
著者
後藤 幸生 中川 隆 重見 研司
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.180-189, 2018

大脳皮質が損なわれ意識がなくても、その皮質下の脳内情報中継基地としての視床や各種の核といった箇所からの下行性伝達情報は心臓にも反映している。そこで、重篤状態で終末期を迎えた患者で、生命が燃え尽きる寸前に一時的に高まる生命反応を分析するため、それぞれ特殊性を有する4 つの「バランス指数」を用いて、各々の角度から、これを通常の睡眠REM 期の夢みる状態や全身麻酔中の無意識状態を分析した場合と比較し検討してみた。まず、その測定分析法として、自然界の '1/f ゆらぎ音波' が我々の体内にあるゆらぎ現象に同期すると 'こころ' が癒され '心地よい気分' になるという音響学的理論をヒントに、脳中枢から心臓へ伝達されている情報に注目し、そこで生命そのものである心臓の '心拍リズムのゆらぎ変動' に隠された情動因子を検出し 'こころ' の面を分析することを考えた。その目的で、小型メモリー心拍計で1 ms という微細な時間単位で検出したゆらぎの時系列数値データをパソコンに取り込み、一定のソフトによる1/f-like spectrum analysis 法によってエクセル化した時系列数値を一定の手順で処理し、生命調節力を示す指標としての4 つの「バランス指数」を算出した。その結果、従来からの交感、副交感神経機能という2つの指標でみた反応では不明確であったが、この4つのバランス指数の中の一つSV-Bal-I(Sympatho-Vagal-Balance index)値が死直前になると急激に高まり、同時に情動反応を意味するAs-Bal-I(All-spectrum-band-Balance index)値もSV-Bal-I 値の上昇をしばしば急激に大きく上回り、情動反応が大いに高まっていることを示すものと考えられた。また、この現象が睡眠REM 期の夢現象によく似た反応であること、このAs-Bal-I 値が1.5 以下でかつ低目のSV-Bal-I値を示していた場合は平穏な終末を迎えたこと、他方SV-Bal-I 値も高くかつAs-Bal-I 値が2.0 以上と高まっていたものは、何らかの苦痛を伴う幻想を抱いての終末だった可能性が推測された。この様に、「バランス指数」は錐体外路系情報をも含む幅広い脳中枢全体からの情報を分析するための有意義な指標となると考えられた。
著者
田中 義文 橋本 悟 夏山 卓 重見 研司 木下 隆 智原 栄一 TAKIZAWA Yousuke
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.312-318, 1988

アナログデータレコーダーは, 心電図を含め生体信号を長時間連続記録でき, その再現が容易であるために臨床生理学的分野には欠かせない汎用計測機器である. しかしながら装置も大きくまた高価であるために手術室で日常利用する機会は少ない. そこでわれわれは汎用集積回路を用いて可聴域のFM変調と復調のアダプターを試作し, 市販のカセットテープレコーダーをもちいた心電図記録装置を開発し, その性能について検討した. 最も単純な回路構成でもDCレベルより20Hzまでの直線性を得ることができ, その心電図記録は十分実用になることが明らかになった. 安価な本装置を個々の心電図モニタースコープに装着すればテープレコーダーをフライトレコーダーやタコグラフのごとく利用することができ, 突発的な不整脈や循環虚脱に対しても確実な記録ができるゆえ医療技術の向上に役立つと考えられる.
著者
廣瀬 宗孝 坂井 美賀子 松木 悠佳 田畑 麻里 関 久美子 重見 研司
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.134-140, 2010-05-25 (Released:2010-08-22)
参考文献数
8

目的:神経障害性疼痛の臨床症状から,ガバペンチンの鎮痛効果を予想できるかを検討した.方法:神経障害性疼痛の患者におけるガバペンチンの鎮痛効果に関係がある臨床症状を抽出するため,後向きコホート研究でロジスティック解析を行った.つぎに抽出した臨床症状の有無による鎮痛効果の違いを,前向きコホート研究で確認した.結果:後向きコホート研究(n=53)では,ガバペンチンで痛みが軽減する補正オッズ比はアロディニアがある場合は11.43(1.87-70.06)で,異常感覚がある場合は0.08(0.01-0.74)で,アロディニアと異常感覚がガバペンチンの鎮痛効果の予測因子として抽出された.前向きコホート研究(n=24)では,アロディニアの有無は,ガバペンチンを含むさまざまな治療の鎮痛効果に明らかな関連はなかったが,異常感覚がない場合は,ある場合に比べて,ガバペンチンで痛みが軽減する因子であった.結論:ガバペンチンの鎮痛効果は,異常感覚の有無で予測できる可能性があり,異常感覚がない神経障害性疼痛の患者では,異常感覚がある患者より,ガバペンチンで痛みが軽減する可能性が高い.