著者
菅野 浩子 薦田 恭男 野坂 修一
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.105-107, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
7

内服薬物療法が無効であったメニエール病患者に, 星状神経節ブロック療法を施行した. 初診時より内服は中止し, 1%メピバカイン5mlによる星状神経節ブロックを週2~3回開始した. 10回目終了時よりめまい発作と耳閉感が消失し, 右耳鳴のみとなった. 16回目終了時に右耳鳴も消失し, 20回目終了時より自覚的に聴力の左右差は消失した. ここでオージオグラムを施行したところ, 星状神経節ブロック療法開始時にみられた感音性難聴が改善されていた. 21回目終了したところで, 星状神経節ブロック療法は終了とした. その後, 妊娠を契機にメニエール病が再発したが, その時点では治療せず, 出産を待って星状神経節ブロックを施行した. 13回目のブロック終了時にはオージオグラム改善, 15回目終了時には左耳鳴を残すのみとなり, めまい発作は消失した. 妊娠による循環血液量の増加がメニエール病の再発につながったと考えられる. また, メピバカインは胎盤通過性は高いが, 組織への分配係数が非常に小さく, 胎児組織に取り込まれにくい. このため, 妊娠中であっても, 必要であれば星状神経節ブロック療法を試みてもよいと考えた.
著者
嶋田 文彦 野坂 修一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.993-999, 2008-11-14 (Released:2008-12-13)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

今回われわれは麻酔への同意における麻酔関連説明文書の重要性に着目し, 日独3病院の比較を試みた. 文書の構成形式に大差はなかった. しかし麻酔関連死亡率の表示の有無や患者との特別合意事項表記の有無といった点に, 差異がみられた. これらは, 彼我の医療をめぐる状況の違いによるとも考えられる. だが近年のわが国の医事紛争判例基準は, 一般的合理的医療水準から個別的具体的事象へと向かっており, 特別合意事項記載はこの点を重視しているため, 参考とすべきと考えられた.
著者
福島 豊 北川 裕利 野坂 修一
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.22-24, 2015-04-15 (Released:2015-05-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

赤血球製剤中にはカリウムが最大で60mEq/Lと大量に含まれているため,急速大量輸血時には高カリウム血症に注意が必要である。今回,カリウム吸着除去用血液フィルターの急速輸血時におけるカリウム除去能を検討した。カリウム吸着除去用血液フィルターに赤血球製剤4単位を加温ハイフロー輸液ポンプを用いて300mmHgの圧でフィルターに通し,フィルター前後のカリウム値を測定した。カリウム吸着除去用フィルター後の赤血球製剤のカリウム濃度は6.8±1.1mEq/Lに減少した。カリウム吸着除去用血液フィルターは加温ハイフロー輸液ポンプを用いた急速輸血においても有用である。
著者
藤野 能久 北村 恵津子 榊 孝之 野坂 修一 天方 義邦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.134-139, 1995

AVM破裂による脳内出血・脳室穿破から脳圧亢進症状を呈している妊娠32週妊婦に対する血腫除去術と帝王切開術の麻酔を経験した。<br>症例は28歳,女性,妊娠32週。突然の頭痛と嘔吐,引き続く意識消失と痙攣発作により,CT上,右脳内出血・脳室穿破と診断された。その後の血管造影で右側頭葉AVMと診断され,緊急開頭・血腫除去術が行なわれた。血腫除去術中から子宮収縮が認められたため,引き続き全身麻酔下に帝王切開術を施行した。妊娠中の脳神経外科の緊急手術と引き続き帝王切開術を施行する場合の麻酔管理について文献的考察を加えて報告した。
著者
来見 良誠 谷 徹 仲 成幸 佐藤 浩一郎 遠藤 善裕 花澤 一芳 森川 茂廣 犬伏 俊郎 野坂 修一 村田 喜代史
出版者
特定非営利活動法人 Microwave Surgery研究会
雑誌
Journal of Microwave Surgery (ISSN:09177728)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.99-103, 2001 (Released:2008-09-24)
参考文献数
6
被引用文献数
4 3

Microwave Ablation is one of the useful treatments of hepatic tumor. It has been used as an interventional device for thermoablation therapy under ultrasonographic or laparoscopic guidance. We have done clinical studies of MR-guided microwave ablation therapy of hepatic tumors since January 2000. From January through September 2000, 18 patients with liver tumors were hospitalized in the 1st Department of Surgery at Shiga University of Medical Science. There were 13 cases of metastatic hepatic tumor. All of which had previously had primary surgery. The other 5 cases were primary hepatic cancer. All patients were selected because percutaneous ethanol injection therapy (PEIT) or transcathetal arterial embolization (TAE) was ineffective, and surgical resection could not be done because of hepatic dysfunction.We had already performed MR-guided microwave ablation therapy to hepatic tumors located in every segment of the liver. However, percutaneous puncture of the tumors in the subphrenic area was not easy with the abdominal approach. In these cases, a combination of thoracoscopic and MR-guidance has been beneficial. MR compatible endoscope made us easily to puncture hepatic tumors located in every segment of the liver. MR-guided microwave ablation therapy is a feasible treatment for hepatic tumors.
著者
木内 淳子 安部 剛志 松村 陽子 野坂 修一 前田 正一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.702-706, 2005 (Released:2005-11-29)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

2003年末までに, 判例時報などの法律雑誌に掲載された麻酔科関連領域の判例について検討した. 全身麻酔および硬膜外麻酔に関しては, 麻酔専門医による麻酔管理も訴訟の対象となっていた. 病院開設者とともに, 麻酔担当医も被告となっている症例が半数を占めた. 救急医療の領域では, 過失と結果の因果関係に関して, 医療側に厳しい判例が平成12年に最高裁判所から出された. この判断の影響でその後の救急医療領域で, 同じような判断が3判例みられた. 説明義務については, 過失がない場合においても, 十分な説明に基づく同意がない場合は下級審判決が覆り, 最高裁で医療側有責とされた. 今後麻酔科医には, 医療水準に合致した医療と十分な説明が求められると考える.