著者
木全 貴久 蓮井 正史 北尾 哲也 山内 壮作 下 智比古 田中 幸代 辻 章志 金子 一成
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.27-33, 2012-04-15 (Released:2012-12-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

近年,ステロイド依存性や頻回再発型のネフローゼ症候群に対する,リツキシマブ治療の有効性が相次いで報告され,難治性ネフローゼ症候群に対する新規治療薬として期待されているが,その投与法は確立していない。筆者らは「ネフローゼ症候群に対してリツキシマブを投与すると,末梢血B細胞は,平均100日間枯渇化するが,B細胞数の回復とともにネフローゼ症候群が再発する」との報告に基づいて,「リツキシマブ投与後3~4か月のB細胞数回復期に追加投与を行い,B細胞数を10個/μl以下に維持すれば,長期寛解を維持できるのではないか」と考え,リツキシマブ375mg/m2 (最大500mg) を3か月毎に4回反復投与する,という治療法の有効性と安全性の検討を行っている。本論文ではこのリツキシマブ反復投与法の自験例を紹介するとともに,難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ治療の文献的レビューを行う。
著者
千葉 百子 稲葉 裕 篠原 厚子 佐々木 敏 下田 妙子 金子 一成
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

カザフスタンとウズベキスタンに跨るアラル海は琵琶湖の100倍、世界第4位の画積だったが、現在は約1/4の面積となり、20世紀最大の環境破壊といわれる。その結果、強い砂嵐が北西から南東にかけて吹くなど、気候変動も起きている。アラル海東側には原因不明の健康障害を訴える住民が増加した。2000年からこの地域の疫学調査に着手した。罹患率の高い貧血、呼吸機能障害、腎機能障害に関してその原因究明を行ってきた。腎機能に関してカドミウムによる障害ではないかと考えた。生体、食事、環境試料を分析したがカドミウムが原因とは考え難い。これまでに世界各地で採取した多数の飲料水を分析してきたが、この地域の飲料水中にはかなりのウランが含まれているものが多かった。そこで本研究ではウランを中心に健康被害調査を行った。2004年9月にクジルオルダ州の2村で無作為抽出した218名の学童を対象に調査を行った。そのうち155名が2005年2月の調査にも応じてくれた。対象学童から飲料水、尿、血液の提供を受けた。飲料水中ウラン濃度の高いものは約40μg/L、低いものは検出限界以下であった。全例の飲料水中および尿中ウランの相関係数はr=0.263であった。尿中クレアチニン(CR)濃度がウラン濃度と平行して増加していた。尿中蛋白濃度はウラン濃度の増加に伴って上昇したが(r=0.272)、NAGおよびβ2ミクログロブリンはウラン濃度と無相関であった。尿中の元素でウランと相関があったものはヒ素(r=0.608)とチタン(r=0.650)であった。飲料水中で有意な相関があった元素はストロンチウム(r=0.800)、鉄(r-0.719)およびカルシウム(r=0.719)であった。飲料水中ウランと腎臓機能障害の指標(NAG、β2MGなど)と直接関係するか否か今後も検討を続ける予定である。
著者
木全 貴久 辻 章志 金子 一成
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.105-116, 2014 (Released:2015-05-11)
参考文献数
72
被引用文献数
2

小児の尿路感染症(UTI)は,一般的な感染症で,臨床的に上部UTI,下部UTI,無症候性細菌尿に大別される。乳幼児の上部UTI に対しては,しばしば適切な診断がなされないままに,抗菌薬が投与される。不適切な抗菌薬の投与は耐性菌を増加させ,高率に合併する膀胱尿管逆流現象(VUR)などの先天性腎尿路奇形の発見を妨げ,UTI の反復や腎の瘢痕化をきたし,腎不全に至ることもある。したがって私達小児科医は乳幼児の上部UTIを適切に診断し,管理する必要がある。発熱を呈する乳幼児において,感染巣が不明な場合には,UTI を念頭において抗菌薬投与前にカテーテル採尿を行い,KOVA slide 法で尿中細菌を確認することで診断率は向上する。上部UTI を起こした乳幼児にUTI を反復させないためには,基礎疾患(VUR や排尿異常)を発見することが重要で,そのためには排尿時膀胱尿道造影を施行し,高度VUR を認めた場合には最新のエビデンスに基づき抗菌薬の予防内服を行う必要がある。
著者
武輪 鈴子 谷口 奈穂 田中 幸代 中野 崇秀 蓮井 正史 金子 一成 野津 寛大
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.147-151, 2009-11-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2

腎性低尿酸血症は,human urate transporter1の異常により低尿酸血症をきたす疾患で,運動後急性腎不全の合併が多い。その発症機序について二つの仮説,すなわち「急性尿酸腎症説」および「活性酸素関与説」が提唱されているが,詳細は不明である。 本論文では,腎性低尿酸血症の患者において運動後急性腎不全の合併しやすい理由を過去の文献を参考に考察するとともに,筆者らが経験した腎性低尿酸血症患児において,運動負荷の上で酸化ストレス度と抗酸化力を測定した結果を紹介した。患児は対照成人と同様,運動負荷直後から酸化ストレス度の上昇を示したが,抗酸化力は対照成人と異なり,運動負荷後,急激に低下した。すなわち対照に比して運動負荷時の酸化ストレス増大に見合う抗酸化力を有していないことが示唆された。以上より,酸化ストレス急増時の抗酸化力の相対的不足が腎性低尿酸血症における運動後急性腎不全発症に関与しているものと思われた。