著者
石賀 裕明 井本 伸広
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.333-345, 1980-11-25
被引用文献数
1

丹波地帯の3地点のチャート層および,珪質頁岩層より得られた二畳紀放散虫化石Albaillellidae科のうちPseudoalbaillella属,Follicucullus属およびAlbaillella属について種の記載および群集の推移の検討をおこなった.兵庫県多紀郡篠山町藤岡奥では,下位より上位へと,Pseudoalbaillella群集からFollicucullus群集に推移する.Pseudoalbaillella群集はさらに下位より,Ps. U-forma-Ps. elegans亜群集,Ps. lomentaria-Ps. longuscornis亜群集および,Ps. sp. A-Ps. rhombothoracata亜群集に3分される.京都府北桑田郡京北町芦見谷では,下位よりPs. U-forma-Ps. elegans亜群集およびPs. lomentaria-Ps. longuscornis亜群集が認められた.京都府北桑田郡京北町田尻谷では,Follicucullus群集が認められた.また,コノドント化石および北米におけるAlbaillellidae科放散虫化石との比較にもとづき地質時代の推定をおこなった.その結果,篠山町藤岡奥のチャート層は二畳紀ウルフキャンプ世〜ガダループ世,芦見谷および田尻谷についてはそれぞれ,ウルフキャンプ世,ガダループ世を示すことが明らかにされた.
著者
山崎 静子 石賀 裕明 道前 香緒里 東 直子 Faruque Ahmed 三瓶 良和 Hamidur Rahman Badrul Islam
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.81-93, 2000-03-25 (Released:2017-07-14)
被引用文献数
3

1999年にバングラデシュのシャムタ村と東となりのデウリ村で18本のボーリングによって採集した堆積物試料(パーカッションリバースサーキュレーション工法による,一本の深さは約15m)をもちいて,地下水ヒ素汚染のメカニズムを解明するために,主元素,微量元素および全有機炭素,窒素,イオウの定量を行った.デウリ村の有機質泥ではAsが50ppmを超えるものがあり,ピート層では262ppmに達する.これらはシャムタ村の一般的な泥質試料(As=20ppm)に比べ高い値を示す.As濃度はVやCuの濃度と良い相関をもち,有機物の濃縮に関係する.P_2O_5も地表の試料で高いものがあり,人間活動に関連するといえる.試料のいくつかからはイオウが検出され,海成や汽水環境で堆積したことを示唆する.しかし,TS/TOC比は一般の海成層の値(0.36)よりも低く,淡水もしくは汽水環境で堆積した可能性がある.TOC/TN=9.2〜14.2(平均値11.1)であり,プランクトンおよび高等植物の両者に起源すると判断される.有機物に関連する高濃度のヒ素は帯水層での還元的環境下で地下水汚染を引き起こすと考えられる.農業や家庭排水の増加に伴って有機物の分解は促進され,堆積物,特にピート層からのヒ素溶出の速度を増していると考えられる.
著者
国井 秀伸 瀬戸 浩二 野中 資博 森 也寸志 相崎 守弘 石賀 裕明 野村 律夫
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

高度汚水処理法・直接浄化法の開発と,底質処理法(無害化・資源化)の開発を行い,流域統合管理の視点を加えて,流域の管理の違いが水文循環過程に与える影響を評価した.さらに,科学的・普遍的な立場もふまえて,汽水域生態系モニタリングのシステムを研究・開発・構築し,さらに地域と一体となった汽水域の生態系保全活動を行うことを目的に,地域住民との連携による汽水域長期モニタリング法を検討した
著者
石賀 裕明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.285-297, 1994-07-25
被引用文献数
5

西南日本の層状チャートシークエンス中にはペルム-トリアス紀境界が記録されている.この境界は層状チャートから珪質粘上岩に移化する岩相の変化によって特徴づけられる.この珪質粘上岩には厚さ数十cmにも達する黒色有機質泥岩が挟まれる.この岩石は厚さを減じるとともに,産出頻度も次第に低下するものの,上位のトリアス紀古世珪質岩にも周期的に挟まれる.この有機質黒色泥岩は海洋植物プランクトンに由来する有機物を含み,基礎生産が高かったことが推定される.下部トリアス系の黒色有機質泥岩には黒色チャートが規則的にともなわれることがあり,ペルム-トリアス紀境界で放散虫が絶滅した後の回復に,基礎生産の高い海洋が放散虫のブルーミングに与えた影響は大きいといえる.ペルム紀末の大量絶滅の原因の一つに,一般に考えられている世界的な海退のほかに,古テーチス海東縁に連続した大陸が配列し,古テーチス海とパンサラッサ海とが隔離されたことが指摘できる.そのため海洋循環の悪化および基礎生産の高い古テーチス海の海洋浄化機能の低下が生じたといえる.この大陸の鎖はペルム-トリアス紀境界には切断され,海洋環境の回復とともに爆発的な基礎生産が起こったと考えられる.
著者
渡辺 正巳 石賀 裕明
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-10, 2008

島根県西部益田平野において,ジオスライサーを用いて得た6400 yr BPころ以降に堆積した試料を対象に,花粉分析と,イオウ濃度分析,AMS 14C年代測定を行った。花粉分析結果を基に 局地花粉帯(MGS -I,II帯)と5花粉亜帯(MGS -IIa,IIb,IIc,IId,IIe亜帯)を設定し,AMS 14C年代測定結果から堆積速度を求め,各花粉帯と花粉亜帯の境界年代を推定した。花粉分析の結果,6400 yr BPころの益田平野周辺にスギ林が分布していたことが明らかになった。このことは,スギ林が益田平野から中国山地西部へ拡大したことを示唆する。6400~5300 yr BPには,アカガシ亜属花粉とイオウ濃度の増加傾向が一致した。これは海進を伴う気候の温暖化を示す。4660 ~3570 yr BPには「縄文中期の小海退」に対応する冷涼・湿潤な気候が認められた。1500 yr BP以降に認められるアカマツ林の拡大を,人間活動に伴う自然破壊によると考えた。同時に認められるスギ林の縮小は,人間活動に伴う現象と考えられるほか,「奈良・平安・鎌倉温暖期」に伴う現象である可能性を指摘した。花粉帯の境界年代を基に,益田平野と山陰地方中央部の古植生と古気候を比較した。
著者
石賀 裕明
出版者
ペドロジスト編集部
雑誌
ペドロジスト (ISSN:00314064)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.81-83, 2014

松江は水の都と呼ばれ,松江城を中心として堀や水路(かつての運河)がある。これは松江が中海と宍道湖という湖の中間に位置するため,歴史的に水運を活用したことによる。しかし,一方では土地が低いために,たびたび洪水に見舞われることが多かった。宍道湖には斐伊川が流入しており,現在でも大雨時に市内でも浸水することもある。1972年(昭和47)年7月の水害は規模も被害も大きかったと言われる。最近では2006年(平成18年)7月にも市内で浸水が生じた。斐伊川は江戸時代の初めまでは西に流れ日本海に直接注いでいたが,出雲平野の発達とともに流路を東に変え宍道湖に注ぐようになった。この結果,宍道湖は汽水湖となるとともに,中海へも大橋川を通じて塩分濃度の低い水塊が流入するようになり,環境の変化が生じた(徳岡ほか,1990)。このような斐伊川の河道変遷に関連するのが上流域で活発に行われた「たたら製鉄」である。宍道湖・中海の環境は河川上流の地質や人間活動と深くかかわりを持っていると言える。松江周辺は地層や岩石の露出が非常によく,車で20分の距離のところで日本海の海岸に到着できる。また,大山や三瓶山が近くにあり,自然の観察の場としては恵まれている。三瓶山の麓の「石見銀山」は2007年に世界文化遺産に登録された。島根では山陰・島根ジオサイト地質100選が進められネット上で公開されるとともに,2013年には「島根の大地 見どころガイド」として出版された。また,隠岐の島は隠岐ジオパークとして日本ジオパークネットワーク加盟認定後,2013年9月に世界ジオパークネットワークへの加盟認定がなされた。ここでは島根県東部の地質と資源,人間活動の歴史について触れることとする。
著者
石賀 裕明 三原 章人 三瓶 良和
出版者
島根大学総合理工学部地球資源環境学教室
雑誌
島根大学地球資源環境学研究報告 (ISSN:13439774)
巻号頁・発行日
no.19, pp.47-55, 2000-12

Geochemical amlyses of bottom sediments and cored samples have been carried out to evaluate environmental changes of the non-marine Lake Jaike of San'in district.Soils of surrounding areas and sediments of the Lake Jinzai of brachish environment are also examined for comparative study.Cored samples with 70cm length showed gradually increasing concentrations of arsenic(from 12 to 31 ppm),lead(from 24 to 31 ppm),zinc(from 95 to 144 Pppm),phosphorous(P_2O_5,from O.09 to O.28 wt%)and total iron(from 8.20 to 11.15 wt%)but with relatively consistent values in chromium(75-83 ppm)and thorium(11-12 ppm)suggesting that the variations were caused by environmental change related to the land modification.Abrupt projection of total sulfur(TS)contents in this profile is suggestive of an excess supply of common fertilizer such as sulfate ammonium,of which the event was coincident to an extinction of fishes in 1988.In contrast to the decline of TS,phosphorus increased steadily indicating switching of aglochemicals.
著者
石賀 裕明 木藤 武雄 井本 伸広
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.10-22e, 1982-01-25
被引用文献数
1

ISHIGA & IMOTO (1980)は丹波地帯の赤色層状チャート層に含まれるPseudoalbaillella群集およびFollicucullus群集について両群集の構成種の変化を報告した.TAKEMURA & NAKASEKO (1981)はAlbaillella科のなかでperforate shellをもち非対称な翼または,"はしご"型の翼をもつことで特徴づけられる放散虫化石について新たにNeoalbaillella属を設定した.筆者らは丹波地帯の2地点および,彦根東部の1地点の灰色層状チャート層から得られたNeoalbaillella属について新たに2種を記載し,Neoalbaillella群集とFoillicucullus群集との生層序学的関係を検討した.Neoalbaillella群集は下位より,Neoalbaillella optima-Albaillella triangularis亜群集, Na. ornithoformis亜群集に2分される.Neoalbaillella群集はFoillicucullus群集よりも層序学的に上位に位置することと,共存するコノドソト化石に基づけば,ガダループ世もしくは,ガダループ世以降の年代を示す.
著者
田崎 和江 赤坂 正秀 石田 秀樹 三瓶 良和 石賀 裕明
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

汚染された環境を浄化する方法として,物理学的に取り除く方法,化学反応により無害化する方法,そしてバクテリアなどの生物機能を活用して回復する方法がある.特に,生物機能を利用して浄化するバイオレメデイエーションは,浄化に長期間を要する汚染に対して二次汚染のない有効な方法である.単純な組織構造を有しているバクテリアは,汚染環境から有害物質を細胞内に取り込み,固定して,各種の生体鉱物を細胞内外に生成する働きがある.この生体鉱物化作用のメカニズムを解明し,汚染された環境の浄化に役立てることが本研究の目的であった.本研究補助金で購入した位相差偏光顕微鏡や低真空走査型電子顕微鏡を用いて,地球上の様々な環境(鉱山,鉱床,温泉,間欠泉,汚染土壌,湖沼堆積物,風化花崗岩,活性汚泥など)からFe,Mn,Zn,Cu,U,Cdなどの元素を持つバクテリアが細胞内に生体鉱物を生成している例を数多く発見した.特に,室内実験からMnやFe,イオンがバクテリアの細胞に取り込まれ,マンガンノジュールを形成する過程を透過型電子顕微鏡観察により明らかにすることができた.また,XRD,XRF,EDX,FT‐IR,ESCAなどの方法も用い,この生体鉱物化作用を総合的にとらえそのメカニズムを明かにした.3年間の研究成果は,国内および国際学会で発表し,論文も学術誌に多数公表した.
著者
田崎 和江 沢田 順弘 鈴木 徳行 飯泉 滋 高須 晃 石賀 裕明
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

ODPの伊豆・小笠原弧の深海底掘削が行なわれた後,昨年度は,船上での成果を“Proceedings of the Ocean Drilling Program(Vol.126)"にまとめ公表した。それに次いで,今年度は,各研究者が専門的な立場で,より詳細な陸上での成果を“Scientific Volume"にまとめた。さらに,日本人の研究成果は,地学雑誌,月刊「海洋」,月刊「地球」に特集号を組み,日本語でも成果を発表した。研究代表者の田崎は,これらの報告書,雑誌にすべて論文を投稿し,当補助金により購入した電子顕微鏡をフルに活用し,3年間で40編の成果を得ることができた。伊豆・小笠原弧の深海底堆積物のうち,特に,火山砂,軽石に注目しXRD,SEM,TEM,FTーIR,マイクロESCA等の機器類により,鉱物組成を検討した。その結果,火山性堆積物の中に,有機物の存在を認めた。スメクタイト,沸石などの熱水変質鉱物の中に,グロ-コナイトやセラドナイトが共存し,その化学組成は,CH,CO,CーCCooHの化学結合を持つことが明らかとなった。今まで,グロ-コナイトの生因の一つに有機物が関与するという説があったが,今回の研究結果で,それが証明された。さらに特筆することは,この火山性堆積物の中に,多量のバクテリア化石を,電子顕微鏡で明らかにしたことである。200℃前後の熱水の循環があり,火山ガラスや造岩鉱物が変質する中にバクテリアが存在し,化石化して保存されていた事実は,深海底にブラックスモ-カ-が存在していたことを示唆している。さらに,グロ-コナイトの生成に,バクテリアが関与していることも暗示している。深海底における物質循環において,有機と無機の境界は不明りょうであり,両者の相互作用により有機炭素からグラファイトが生成される過程も,電子顕微鏡により追跡することができた。これらの研究成果は,国際誌chemical Greologyに投稿した。