著者
関谷 勇司 中村 遼 岡田 和也 堀場 勝広
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J98-B, no.4, pp.333-344, 2015-04-01

現在のネットワークを取り巻く状況は,クラウドやビッグデータの普及,並びにスマートフォンやIoTといったデバイスの増加により,次の世代への変革を迎えようとしている.それにともない,これらの技術を支えるインフラである,ネットワークに求められる機能や性能も,従来の要求とは異なったものとなる.そのため,新たな要求に応えることのできるネットワークアーキテクチャが必要とされる.そこで本論文では,この新たなネットワークアーキテクチャの構築とその可能性について述べる.本論文にて提案する新たなネットワークアーキテクチャは,SDNとNFVを用いて構築される.まず,SDNとNFVに関して,その概念と技術並びに現状を解説し,最新の動向について述べる.また,Interop Tokyoにて行われた実証実験を通じて得られた,SDNとNFVの課題について述べ,その解決法について議論する.最後に,新たなネットワークアーキテクチャを構築するための技術課題と展望についてまとめる.
著者
中村 遼 海老澤 健太郎 奥澤 智子 李 忠翰 関谷 勇司
雑誌
インターネットと運用技術シンポジウム論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, pp.40-47, 2022-12-01

本研究では,Equal Cost Multi-path (ECMP) を拡張することで既存の ECMP の欠点を解消した新しいロードバランス手法を提案する.一般的なハードウェアルータの持つ ECMP 機能はトラフィックをフローごとに複数のネクストホップに分散することができる.つまり ECMP をそのままロードバランサとして利用できれば,専用の機材を導入するのと比較してコスト面,運用面における負荷が少ない.しかし ECMP は,フローのハッシュ値とネクストホップ数によってパケットの転送先を決定するため,ネクストホップとなるサーバの数が増減した場合,既存のコネクションが異なるサーバに届き切断されるという問題がある.本研究では,この問題を解決するため ECMP を拡張した ECMP with Explicit Retransmission (ECMP-ER) を提案する.ECMP-ER は Layer-3 の ECMP を基礎としており,既存の経路制御プロトコルで動作する.その上で ECMP-ER では,ルータが ECMP の経路について,現在のネクストホップに加えて過去のネクストホップ情報も保持する.サーバの増減時に異なるサーバに届いたフローのパケットは,サーバがルータへ再送し,さらにルータが過去のネクストホップを参照して再送することで最終的に適切なサーバへ転送される.本研究では ECMP-ER を P4 スイッチを用いて試作し評価した結果,ECMP では 20% 以上のコネクションが切断される状況においても,ECMP-ER は全てのコネクションを維持したままトラフィックを分散できることを確認した.
著者
宮武 茉子 鳴海 紘也 関谷 勇司 川原 圭博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.752-760, 2022-03-15

フラワーゼリーとは,花の形をしたゼリーが透明なゼリーの中に浮かんでいる芸術的なスイーツであり,食べるのがもったいないと思わせるほどの美しさで見る者を惹きつける.本稿ではこの繊細なスイーツの複雑な制作過程を単純化し既存のデザインスペースを拡張することを目的として,スリットインジェクションプリンティングという造形手法と,設計ソフトウェアを実装し評価を行った.この設計ソフトウェアを用いることで,ユーザはプレビュー画面を見て試行錯誤しながら形状をデザインすることができる.またフラワーゼリーの造形に関しては,柔らかく崩れやすいゼリーのプリントを実現するため,カラーゼリーをベースゼリーに直接注入するスリットインジェクションプリンティング技術を導入したフード3Dプリンタを開発し,様々な形状のゼリーを造形できることを示した.さらに,初心者と経験者に対してユーザスタディを実施して提案手法の効果を評価し,初心者でも簡単にフラワーゼリーを作製できるようになり,経験者はデザインを試行錯誤しながら制作可能であることを示した.
著者
石原 知洋 関谷 勇司
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:21888787)
巻号頁・発行日
vol.2021-IOT-55, no.5, pp.1-6, 2021-08-30

2020 年からの COVID-19 発生により,多くの大学では遠隔講義の導入が進んだが,一部講義については対面授業や,対面と遠隔のハイブリッド型の授業などが選択的に実施されている現状がある.そのため,学生が対面・ハイブリッド授業の出席のため大学に登校した際に,同日の遠隔講義を大学から受講する状況が発生している.複数の学生が持ち込んだ機器によりリアルタイムの遠隔講義を受講するにあたり,大学の,特に無線ネットワークの品質確保が重要となる.そこで,我々は無線コントローラから得られる基地局と接続ステーションの統計情報を収集し,無線環境の可視化および個々の基地局・ステーションの接続状況について可視化・解析が可能なシステムの開発をおこなった.本システムにより,個々の基地局や利用者それぞれのクライアントについて,過去に遡って接続状況を調べるとともに,問題点の洗い出しを行うことが可能となった.
著者
橋本 賢一郎 遠峰 隆史 関谷 勇司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.236, pp.51-56, 2014-10-07

社会活動や日常生活のうち,インターネットを用いた活動の比重が高くなってきている.それに伴い,これまでの国家間のサイバー戦争だけでなく,インターネットに接続された機器や個人情報,知的財産を狙った被害が増加し対策が急務となっている.本論文では,Interop Tokyo 2014にて構築したShowNetを事例として,昨今のサイバーセキュリティに関する脅威の手法と,それに対抗するための技術,それらを組み合わせた防御システムの構築方法について考察する.また,ShowNetでのセキュリティ対策を通じて得られたデータから,標的型攻撃の存在や未知のマルウェアの侵入,更にはIPv6による攻撃も開始されていることがわかった.短期間の展示会のために構築されたネットワークへの脅威から,日常的に利用されるネットワークへの脅威を推察し,今後の攻撃の傾向と,サイバーセキュリティにとって重要と思われる防御方法に関して考察する.
著者
浅見 徹 江崎 浩 関谷 勇司 斎藤 賢爾 山下 達也 岩浪 剛太
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.9, pp.809-814, 2012-09-01
参考文献数
5

本稿は平成23年12月に解散したネットワーク高度利用推進協議会の活動報告である.平成19年8月, Winnyに代表されるP2P (Peer to Peer)技術による著作権侵害や情報漏えいによる通信業界の混乱と,それによる商用P2Pサービスの立ち遅れが目立った日本の事情を鑑み, P2Pネットワーク実験協議会が設立され,キャッシュ技術全般に対象を拡大したネットワーク高度利用推進協議会に発展し,後述するヒントサーバ実験や標準化活動, P2Pガイドラインの制定,優良P2Pの認定等普及啓発活動を行った.第171回通常国会で著作権法が一部改正され,送信を効率的に行うために必要と認められる限度において著作権侵害にはならないことが明確になった.
著者
堀場 勝広 中村 遼 鈴木 茂哉 関谷 勇司 村井 純
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.923-944, 2018-10-15

Network Function Virtualization(NFV)を利用したサービスチェイニング(NFV-SC)は,ソフトウェアによる動的なネットワークの構成変更を可能とし,通信事業者の機器や運用のコストを低減することが期待されている.しかし,Interop Tokyo 2014 ShowNetにおいてNFV-SCを実装・運用した結果,Virtual Network Function(VNF)の連結によってパケット転送性能の低下が確認され,スケールアウトに課題が残った.そこで本研究では,スケールアウトとその前提となる相互接続性が実現可能なVNF 構成を検討し,その知見に基づき筆者らが提案しているNFV-SCの方式であるFlowFallを設計・実装するとともに,Interop Tokyo 2015 ShowNetにおいて,実際のネットワーク装置を利用してFlowFallを構築・運用し,商用ネットワークサービスとして20の出展者に対して3日間のNFV-SCを提供した.本稿は,これらの実践から得られたNFV-SCにおける相互接続性とスケールアウトの実現に必要な知見を述べる.
著者
山本 成一 中村 遼 上野 幸杜 堀場 勝広 関谷 勇司
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_46-3_57, 2015-07-24 (Released:2015-09-24)

インターネット接続が普及し,さまざまな場面でネットワーク技術が利用されるようになった.しかしながら,その運用形態は進化していない.機器毎の固有の設定を個別に実施する旧来からの手法にとどまっている.研究レベルでは,いくつかの提案がされているが,現在のネットワーク利用に対し,実用的な運用レベルの要求を満たすものではない.本研究では,新しい運用管理アーキテクチャGINEW (General Integrated Network EngineeringWorkbox)を提案した.そのプロトタイプ実装の適用結果を報告する.
著者
田崎 創 岡田 和也 関谷 勇司 門林 雄基
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICSS, 情報通信システムセキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.502, pp.113-118, 2014-03-20

脅威検知や解析は今日のサイバー空間において必要不可欠なものとされているが,常に最新のサイバー空間上の悪性活動を検知する事は,観測する情報や視点が限定されているため困難である. NECOMAプロジェクトはマルチレイヤでの脅威分析を導入する事でこれらの悪性行動による影響を軽減する事を目的としている.マルチレイヤ分析は脅威を深く検証する事を可能とするであろうが,この手法は収集データの分量が増加する事による規模の課題や,それらのデータの解析に要する計算資源の増加に対する課題に容易に直面する.これらを解決するため,我々はオープンソースソフトウェアの大規模データの分散処理・格納を実現するHadoopを利用した脅威解析基盤MATATABIを設計・構築した. MATATABIは規模の大きい計測データの解析を高速に行える仕組みと,データの収集から解析,対策までのプロセスを一元的に行える仕組みを提供する.本論文では, Hadoop基盤を利用した脅威分析基盤構築の報告と, 4種類のデータ処理機構において,ログデータやパケットトレースといった利用方法に応じての性能評価の結果と考察を提示する.
著者
岡本 慶大 寺田 直美 赤藤 倫久 岡本 裕子 関谷 勇司 河合 栄治 藤川 和利 砂原 秀樹
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2011-IOT-12, no.30, pp.1-6, 2011-02-21

インターネットにおける大規模コンテンツ配信では,突発的なアクセス増加によりリソースの不足が起こると,大幅に配信品質が低下してしまう.この問題に対して,クラウドから計算機資源を一時借用し,品質低下を防ぐという解決法が考えられる.本論文では,全国高等学校野球選手権大会のインターネット中継において実施した,クラウドを利用した大規模コンテンツ配信実験について報告する.
著者
関谷 勇司 長 健二朗 加藤 朗 村井 純
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.1542-1551, 2004-10-01

DNSはインターネットの基盤サービスである.しかし,DNSのサービス状況を測定するための手法はまだ確立されていない.そこで本研究では,インターネットにおける名前解決システムであるDNSのパフォーマンスを測定並びに評価するための手法を確立する.本研究にて提案する手法は,世界各地において手軽に実施できる測定手法であり,どのようなDNSサーバ,若しくはDNSサーバ群に対しても行える手法である.本手法では,dnsprobeというツールとダイヤルアップを用いて手軽に測定を行い,基準DNSサーバを用いることによって,測定結果を補正することが可能である.これによって,世界各地からの測定結果を,補正して一律に比較することが可能となる.今回は,この手法を用いて,ルートDNSサーバヘの到達性を27地点から測定する.この結果によって,現在のルートDNSサーバヘの世界の各地点からの到達性と傾向をつかむことができる.本研究の手法を利用することにより,DNSサービスの公平性を判定したり,新たにDNSサーバを設置する場合の設置場所決定に関する一助とすることができる.