著者
中川 登 夏秋 優 荒木 徹也
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.541-545, 2004 (Released:2011-11-07)
参考文献数
6

市立伊丹病院における1993年~2003年の毛虫皮膚炎患者数を調査した。その結果, 2003年が最も多く95名,次に1993年が46名,1994年は34名で,その他の年は25名以下であった。また,2003年の毛虫皮膚炎患者95名について検討したところ,男女比は49:46であり年齢分布では9歳以下の小児と50歳以上の中高年に多い傾向があった。これらの患者の皮疹の好発部位は上肢であった。月別患者数では6月と8~9月に多く,チャドクガの幼虫が出現する時期に一致していることから,その原因の多くはチャドクガの幼虫であろうと推察された。次に毛虫皮膚炎の患者数と気候との関連を調べるため,神戸における月別降水量と平均気温について調べた。その結果,1993年と2003年は長雨,冷夏であったことが判明した。このことから気象条件が毛虫の発生,及び毛虫皮膚炎患者数に影響を与える可能性が示唆された。
著者
柴田 真理朗 杉山 純一 蔦 瑞樹 藤田 かおり 杉山 武裕 粉川 美踏 荒木 徹也 鍋谷 浩志 相良 泰行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.296-303, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

すだち(気泡構造)からパンの食感を推定するために,粘弾性と気泡計測パラメータを計測し,それらの関係の定量化を行った.(1) すだちの構造把握に十分な数の気泡を含む大きさを持ち,合わせて試料間にバラツキが確保されるようにサンプリングするために,試料サイズの最適値を決定した.気泡パラメータの変動および実際の計測の安定性を考慮した結果,試料サイズの最適値は1辺20mmの立方体とした.(2) クリープ試験により得られた時間-歪曲線に4要素フォークト粘弾性モデルを適用し,4つの粘弾性係数(瞬間弾性,遅延弾性,遅延粘性および永久粘性)を得た.一方,イメージスキャナにより撮像したデータに,画像処理を利用した既往の研究8) の気泡検出法を適用し,平均気泡面積,平均気泡周囲長,単位面積当たりの気泡数,および気泡面積割合の4つの気泡パラメータを算出した.粘弾性係数および気泡パラメータの変動係数は7.5~49.2%であり,パン試料断面の部位によって不均一であることが明らかになった.(3) 粘弾性係数および気泡パラメータに相関分析を適用した結果,瞬間弾性,遅延弾性および永久粘性と気泡面積割合(画像全体に占める気泡面積の割合)に有意な相関がみられた(r>0.6, p<0.05).本実験で用いた試料においては計測した咀嚼面の気泡面積割合が大きいほど,「かたく」感じられることが示唆された.また,既往の研究と異なる方向の画像解析においても食感を推測できる可能を示せた.
著者
溝口 勝 荒木 徹也 山路 永司 木村 園子ドロテア 登尾 浩助
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

(1)間断灌漑周期とイネ収量の関係の定量的解明日本で初めてSRI農法を導入した愛知県新城市の農家の水田にモニタリング機器を設置し、平成21年6月から10月までのイネの生長と気象、土壌水分量の変化をリモートで観測した。その結果、間断灌漑の周期に応じて5cm深さの土壌水分量が応答すること、梅雨時には排水条件にするのが難しいことが確認された。(2)現地農民の水管理方法に関する聞き取り調査上記の農家に、SRI導入に至った経緯や慣行法との違いについて聞き取り調査を行った。また、インドネシアで学会に参加し、その現地見学の際にSRI普及指導員からSRIのノウハウを教えてもらった。日本の農家から、排水時に有機物(藻や水生生物)が田面水と共に水田の外に除去されてしまうことが指摘されたが、インドネシアでは灌漑時の湛水深をほぼゼロにすることで有機物を有効に土に還元していることがわかった。(3)局所的な排水の違いによるイネ収量調査千葉県柏市の水田でSRI実験を実施し、局所的な排水がイネ収量に及ぼす影響を明らかにした。(4)メタンおよび亜酸化窒素ガスフラックスの測定昨年度実施したSRI方式の水田および慣行水田からのメタンおよび亜酸化窒素ガスフラックスの測定結果を解析し、栽培方式の違いが温室効果ガス放出量に与える影響について考察した。(5)SRI実施水田と慣行栽培水田における水収支・エネルギー収支観測結果に基づき、水田における水収支・エネルギー収支を気象データから計算する方法を提案した。その他、J-SRI研究会を年6回開催し、SRIに関心を持つ研究者との意見交換を行った。こうした議論はホームページに公開されている。特に、最終年度の今年度は「SRI用語集」のWikiページを開設した。
著者
石川 智佳代 小野 昌孝 荒木 徹也 相良 泰行
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-130, 2002-09-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
7

ドライフラワの需要拡大のためには, 耐久消費財としてのドライフラワの作成とそれを応用した製品の開発が望まれる。このようなドライフラワを作成するためには, 生花と同様の形態と色彩の長期保持が望まれている。本研究では, ドライフラワ作成時における変形と変色を抑制し, さらに乾燥時間の短縮に最適な乾燥法を選択することを目的とし, リトルマーベル (バラ科バラ属) を供試材料とし, 従来から採用されてきた空気乾燥法に加えて, シリカゲル細粒充填層内に埋没させた材料を電熱ヒータで加熱して乾燥する方法, 凍結乾燥法および減圧マイクロ波乾燥法などを選び, その適用性を比較検討した。試料を固定した乾燥法では萎縮が少なく, その形態が保持された。また, 乾燥前後の花弁の色差は含水率の低下に伴い生じる萎縮により増大するが, 乾燥過程での萎縮の防止に有効な乾燥法を選択することにより抑制可能であることが分かった。色差発現の主要因はハンタ表色系におけるL*, b*値の減少によるものであることが確認された。ドライフラワの作成には形態, 色彩, 乾燥時間の面でヒータを併用したシリカゲル埋没乾燥法が最適であることが分かった。
著者
佐々木 俊介 渡辺 浩平 荒木 徹也
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.27, 2016

本ポスター発表においては、映像人類学に基づくダンプサイト・ウェイスト・ピッカーの活動記録を、写真、図表、動画を用いて発表する。調査地はインドネシア共和国西ジャワ州バンタル・グバンに設置された廃棄物最終処分場の周囲に形成されたスラム街であり、発表者は2010年2月より、19回渡航し、計707日間滞在している。調査地のウェイスト・ピッカーたちは廃棄物最終処分場内において有価物収集を行っており、有価物収集の際には、自分自身で作成あるいは道具製作者から購入した道具を用いている。有価物売買においては伝票が発行されるなど、取引上のごまかしが起こりにくい取引方法がとられている。ウェイスト・ピッカーたちが1日に収集する有価物は世帯当たり約100kgであり、ここから推定されるリサイクル率は6.5%である。ウェイスト・ピッカーの収入は、月に240US$でありジャカルタにおける法定最低賃金と同水準にある。
著者
柴田 真理朗 杉山 純一 蔡 佳瓴 蔦 瑞樹 藤田 かおり 粉川 美踏 荒木 徹也
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.196-201, 2011-05-15 (Released:2011-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 3 6

糊化させた米のパンの品質への影響を評価するため,小麦粉パン,米粉パンに加え,糊化させた米粉を添加したパン(糊化米粉パン),お粥を加えたパン(お粥パン)を調製し,それぞれの形状,粘弾性係数,および気泡パラメータを計測した.(1) お粥パンが最も膨張し,糊化米粉パンも小麦粉と同等に膨張したことから,糊化処理した米の添加によってパンの膨張が促進されることが分かった.(2) 糊化させた米を添加したパンは,小麦粉,米粉パンより粘弾性が低い,つまり柔らかいことがわかった.(3) 4種類のパン試料の気泡構造は同一であったことから,粘弾性の差は気泡壁(固相)の違いに依るものと推察された.以上より,糊化処理をした米粉または米の配合が15%の場合,グルテンなどの品質改良剤や,特別な前処理なしで従来の小麦粉100%のパン,または米粉パンより膨張性が良く,柔らかい食感を持つパンを調製することが可能であることが確認された.
著者
溝口 勝 山路 永司 小林 和彦 登尾 浩助 荒木 徹也 吉田 貢士 土居 良一 鳥山 和伸 横山 繁樹 富田 晋介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

SRI 農法が東南アジアの国々で爆発的に普及しつつあるが、その方法は国や農家ごとに異なり、適切な栽培管理技術は未だ確立できていないのが現状である。そこで本研究では、日本で気象や土壌・地下水位等の科学的なパラメータを測定するための最新のモニタリング技術を開発しつつ、主としてインドネシア、カンボジア、タイ、ラオスの東南アジア4 カ国にこのモニタリング技術を導入して、農業土木学的視点からSRI 農法の特徴を整理し、SRI栽培の標準的な方法について検討した。加えて、現在懸念されている気候変動に対する適応策として、各国の農家が取り得る最善策を水資源・農地管理に焦点を当てながら考察した。