著者
吉野 智生 山田(加藤) 智子 石田 守雄 長 雄一 遠藤 大二 浅川 満彦
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.238-241, 2010-06

2005年から2010年にかけ、苫小牧市および別海町で発見されたオオハクチョウ3例について、酪農学園大学野生動物医学センターで剖検を行った。3例とも栄養状態は良好であり、外傷や外貌の汚れは認めなかった。内部所見としては暗赤色流動性の血液、心臓周辺を主とした各臓器および血管の鬱血、口腔および気管粘膜の溢血点、水・唾液などの液状成分により著しく膨化した食パンによる喉頭部閉塞が共通所見として認められた。喉頭閉塞では神経系の反射的心停止が知られることから、このような現象も今回の死因の一部と推察された。
著者
山口 英美 長 雄一 貞國 利夫
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-7, 2020-03-31 (Released:2020-05-31)
参考文献数
31

2018年4月から2019年3月までの間,北海道東部において,ハシブトガラス,ハシボソガラスが利用するねぐら,就塒前集合場所における落下糞及びペリットを用いて,サルモネラ感染状況と食性の季節変化を調査した。落下糞1158検体を用いた培養検査により,25検体(2.2%)からサルモネラが検出され,血清型はAgona,Braenderup,Derby,Kentucky,Muenster,O4:i:-およびTyphimuriumであった。Kentucky3株およびO4:i:-1株が複数の抗生物質に耐性を示した。ねぐらにおけるサルモネラ検出率は,4~6月(0/246,0.0%)より9~11月(8/300,2.7%)が高く,カラスにおけるサルモネラ保有状況に季節変化があることが示唆された。これは,免疫機能が幼弱で易感染性と思われる当歳個体が初夏に巣立ち,7月以降にねぐらに参加し始めたことが影響したと考えられた。また,9~11月に検出されたAgona13株のパルスフィールドゲル電気泳動パターンは全て同一であり,特定の株が今回調査したカラス群内で感染を拡大させていた可能性が示された。ペリットを用いた食性解析の結果,全ての季節で家畜飼料の摂食が認められたことから,年間を通じてカラスが畜産環境に侵入し,畜産農場間のサルモネラ伝播に関与しうることが示唆された。
著者
長 雄一 綿貫 豊
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.107-141, 2002-03-20 (Released:2008-11-10)
参考文献数
102
被引用文献数
26 33

北海道の海鳥類の保護及び研究を進めるために,既存の調査報告書を収集して,飛来数あるいは繁殖つがい数といった繁殖地サイズの動向と海鳥類の繁殖に対する人為的攪乱及び自然界での攪乱について分析を行った。北海道では少なくとも12種の海鳥類が繁殖している。繁殖規模の概数は,ウミガラス(Uriaaalge),10つがい以下;エトピリカ(Lunda cirrhata),15つがい;ケイマフリ(Cepphus carbo),100つがい;ウミスズメ(Synthliboramphus antiquus),20つがい以下;ウトウ(Cerorhinca monocerata),300,000つがい;オオセグロカモメ(Larus schistisagus),10,000つがい;ウミネコ(Larus crassirostris),30,000つがい;チシマウガラス(Phalacrocorax urile),25つがい;ウミウ(Phalacrocorax capillatus),3,000つがい;ヒメウ(Phalacrocorax pelagicus),10つがい;オオミズナギドリ(Calonectris leucomelas),120つがい;コシジロウミツバメ(Oceanodroma leucorhoa),900,000つがいであった。その他にマダラウミスズメ(Brachyramphus perdix)の繁殖については不明である。天売島のウミガラス繁殖地にいた成鳥数は,1938年から1980年の間に年平均で12.2%ずつ減少しており,1981年から1994年の間には年平均で26.6%ずつ減少し,1998年には7つがいが確認されたに過ぎない。モユルリ島のウミガラスについて,その繁殖地にいた成鳥数は1965年から1985年までに年平均で24.8%ずつ減少したが,1985年以来飛来個体が確認されておらず,繁殖地が消失したと考える。さらにモユルリ島エトピリカ繁殖地周辺にいた成鳥数は1960年から1995年の間に年平均で10.0%ずつ減少しており,現在ではユルリ•モユルリ島を中心に15つがい前後が繁殖していると考えられる。ケイマフリでは,天売島において年平均8.8%ずつ,ユルリ島においては14.4%ずつ減少しており,北海道全体の生息数も100つがい程度と考えられることから,この減少傾向が続くと繁殖地の消失も考えられる。その一方で,モユルリ島のウトウ繁殖地サイズは1960年から1996年の間で年平均14.2%ずつ増加していた。過去30年間の間にオオセグロカモメは増加傾向にあると考えられたが,モユルリ島の繁殖地サイズは1982年から減少に転じ,1996年までで年平均7.0%ずつ減少していた。天売島のウミネコは,1980年代には3万つがいが営巣していたが,ネコ等の捕食により1990年代に半減した。その一方で利尻島のウミネコは1987年に新たな繁殖地が形成されて以来,年平均19.5%ずつ増加し,現在では1万つがい以上が営巣するに至っている。調査報告書に攪乱の記述のある繁殖地は14箇所であった。カモメ類あるいはカラス類による攪乱の記述があったのは12箇所,死因が漁網への混獲との記述があったのは8箇所,人為導入されたドブネズミ類あるいはネコによる攪乱の記述があったのは5箇所であった。日本の海鳥類繁殖地の多くは,鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律等によって保護されている。しかしながら,繁殖地周辺の採餌域あるいは越冬域といった場所は保護の対象となっていない。そのため,海鳥が混獲しにくい漁具を開発することや,繁殖地周辺での漁業活動を見直すこと,あるいは石油流出事故に対応するたあの体制構築の必要があろう。また,人間によって繁殖地に導入された,あるいは人間の出すゴミによって増加したドブネズミ,ネコ,カモメ類,カラス類等の影響について考える必要があろう。
著者
平山 琢朗 牛山 喜偉 長 雄一 浅川 満彦
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.V1-V13, 2014 (Released:2014-05-02)
参考文献数
101

日本で記録された野鳥の感染症・寄生虫病の病原体を体系的に理解することは、保全施策においても重要なツールの一つである.そこでこの総説では、ウイルス、細菌、真菌および原生生物性の病原体の記録情報についてまとめ、それらによる実際の疾病発生を回避する方策について簡単に論述した.
著者
松村 千恵子 倉山 英昭 安齋 未知子 金本 勝義 伊藤 秀和 久野 正貴 長 雄一 本間 澄恵 石川 信泰 金澤 正樹 重田 みどり 窪田 和子 山口 淳一 池上 宏
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.194-203, 2014 (Released:2014-06-14)
参考文献数
30
被引用文献数
1

千葉市3 歳児検尿システムでは,蛋白・潜血±以上,糖・白血球・亜硝酸塩+以上の1 次検尿陽性者に,2 次検尿と腎エコーを施行。1991~2011 年度154,456 名の精査陽性率は1.5%で,膀胱尿管逆流(VUR)16 名(血尿5,細菌尿11,尿単独3),アルポート症候群,ネフローゼ症候群,巣状分節状糸球体硬化症(FSGS),糸球体腎炎等が診断された。11,346 名の腎エコーで,先天性腎尿路奇形(CAKUT)92(0.8%),うちVUR 24 名(エコー単独11),両側低形成腎2,手術施行17 であった。VUR 全27 名中,VUR III 度以上の頻度は細菌尿例において非細菌尿例より有意に高かった(各々10/11,7/16,p<0.05)。10 名(7 名両側IV 度以上)は多発腎瘢痕を有し,うち7 名はエコー上腎サイズ異常を認めた。FSGS 1 名が末期腎不全に至った。千葉市3 歳児検尿システムはCAKUT 発見に有用と考えられた。
著者
吉野 智生 山田(加藤) 智子 石田 守雄 長 雄一 遠藤 大二 浅川 満彦
出版者
北海道獣医師会
雑誌
北海道獣医師会雑誌 = Journal of the Hokkaido Veterinary Medical Association (ISSN:00183385)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.238-241, 2010-06

2005年から2010年にかけ、苫小牧市および別海町で発見されたオオハクチョウ3例について、酪農学園大学野生動物医学センターで剖検を行った。3例とも栄養状態は良好であり、外傷や外貌の汚れは認めなかった。内部所見としては暗赤色流動性の血液、心臓周辺を主とした各臓器および血管の鬱血、口腔および気管粘膜の溢血点、水・唾液などの液状成分により著しく膨化した食パンによる喉頭部閉塞が共通所見として認められた。喉頭閉塞では神経系の反射的心停止が知られることから、このような現象も今回の死因の一部と推察された。