著者
金 勲 林 基哉 開原 典子 大澤 元毅 阪東 美智子
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-87, 2015 (Released:2015-12-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

日本は超高齢社会として世界で最も高齢化が進んでおり,これに伴う高齢者施設の需要が急増している。高齢者は免疫力や感受性,環境調整力が低下するため,適切な室内環境や衛生環境を提供できる体制整備が必要であるが,環境衛生の維持管理・指導の法的根拠がなく,その管理は建築物管理に専門知識・経験を有さない施設管理者・運営者に委ねられている可能性がある。本研究では,高齢者施設の実態と課題を把握し,環境改善及び対策に資することを目的とし,首都圏の高齢者施設を対象に現場設問及び冬期実測調査を行った。温度・湿度・二酸化炭素濃度の実態と湿度環境の改善に関する検討を行った結果,温度及びCO2濃度に関しては概ね良好に管理されていたが,湿度については施設側の努力にもかかわらず,全施設において冬期最低基準とされる相対湿度40%を満たせない環境にあることが明らかとなった。また,施設によって換気量にはかなりの差があることがうかがわれた。今回調査対象とした施設のなかで建築基準法改正後の施設では換気・空調による外気導入量が多いことに起因することにより,絶対湿度が低かった。測定結果から得られた絶対湿度差及びCO2濃度差の相関と人体からの水分及びCO2発生量による理論的な相関を比べることで,換気量及び加湿の実態を推察できる可能性が示された。
著者
林 基哉 小林 健一 金 勲 開原 典子
出版者
National Institute of Public Health
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.63-72, 2020-02-01 (Released:2020-03-12)
参考文献数
6

建築物衛生法(LEHB)の制定から50年を経て,建物の衛生が再び注目されている. 1970年代には,LEHBによってシックビルディングシンドロームを予防できると考えられていたが,LEHBの基準に対する空気環境の不適合率は,この20年間増加している.最近の研究では,オフィスでのシックビルディング症候群の発生率は低くないことが示された.この不適合率の要因の 1 つは,1990年代以降の建物の省エネルギー対策のためであり,この傾向は,2017年に建物のエネルギー効率化が義務付けられたため,今後も続くと考えられている.建物衛生を考慮しつつ環境負荷を軽減するには,建築衛生の実態把握と課題の抽出が必要である.本稿では,LEHBと,日本の建物における環境衛生管理,室内空気環境,保健所による監視指導,建物衛生向上のための課題に関する最近の研究の結果を紹介する.
著者
林 基哉 金 勲 開原 典子 小林 健一 鍵 直樹 柳 宇 東 賢一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.84, no.765, pp.1011-1018, 2019 (Released:2019-11-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

The state of the increase in the nonconformity rates of air environment in specific buildings was investigated using local government survey reports. The factors in the increase of carbon dioxide concentration were analyzed in consideration of the increase of ambient concentration, the characteristics of indoor concentrations and the characteristics of the government reports. The results were as follows. 1 The nonconformity rates of humidity, temperature and carbon dioxide concentration have increased with the number of specific buildings since 1999. And reports made by the owners of specific buildings are substituted for inspections by government officials in most prefectures. 2 One of the factors in the increase of nonconformity rates of temperature, humidity and carbon dioxide concentration is the increase of reports using measurement data by building maintenance suppliers. The nonconformity rates of humidity and carbon dioxide concentration were higher in northern prefectures. 3 The frequency of indoor carbon dioxide concentration in specific buildings in Tokyo was similar to that in Osaka. The frequency distribution of the differences between indoor concentration and outdoor concentration in Tokyo follows Weibull frequency distribution. 4 The ambient concentration of carbon dioxide has increased especially in urban areas. The increase of ambient concentration is thought to increase the indoor concentrations in specific buildings. 5 The nonconformity rates of carbon dioxide concentration depend on not only ambient concentration but also the rates of ventilation reduction and survey methods by governments. The nonconformity rates were calculated using an equation composed on the basis of Weibull frequency. The coefficients of these factors were calculated using the equation and the survey data on all Japan. 6 The increase of ambient concentration made the nonconformity rate of indoor concentration 3.1% higher and ventilation reduction made it 7.2% higher and the change of survey method made it 11.6% higher in these nineteen years. These results showed that the increase of nonconformity rates depends on several factors. Therefore it is necessary to design integrated countermeasures in order to decrease these nonconformity rates.
著者
金 勲 小林 健一 開原 典子 柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 長谷川 兼一 中野 淳太 李 時桓 林 基哉
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和2年度大会(オンライン)学術講演論文集 第8巻 性能検証・実態調査 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.293-296, 2020 (Released:2021-10-28)

特定建築物及び中小規模建築24件を対象に、2019年度の冷暖房期に行った温度・湿度・CO2の2週間の連続測定からCO2濃度に関する結果を報告する。平均値としては1000ppmを超える建物は2割程度であったが、1回でも1000ppmを超える割合はほぼ7割あった。また、昨年度とは異なり期間中ずっと1000ppmを下回らない、3000ppmを超える高濃度を示すなど、著しく悪い環境にある物件はなかった。
著者
林 基哉 小林 健一 金 勲 開原 典子 柳 宇 鍵 直樹 東 賢一 長谷川 兼一 中野 淳太 李 時桓
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 令和元年度大会(札幌)学術講演論文集 第7巻 空気質 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.45-48, 2019 (Released:2020-10-31)

事務所の衛生環境の実態を把握するため特定建築物の行政報告例の分析、事務所の空気環境の調査を行う。本報告では空気環境不適率の上昇要因を明らかにするため、行政報告例不適率の実態を把握し、不適率上昇の要因に関する統計解析を行った。特定建築物数が増加する中、湿度、温度、二酸化炭素濃度の不適率が1999年以降上昇している。また、法定検査を利用した報告徴取が増加している。湿度、温度、CO2濃度の不適率上昇の要因として報告徴取数の増加が挙げられ、これらの不適率は、北の自治体ほど高い傾向がある。
著者
開原 典子 高田 暁 松下 敬幸
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.79, no.697, pp.233-239, 2014-03-30 (Released:2014-07-10)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Based on the measurement of the moisture content in the stratum corneum, the transient model of the moisture transfer in skin was proposed with using the simultaneous heat and moisture transfer equations for hygroscopic range. For the modeling, the simultaneous heat and moisture transfer equation for the hygroscopic range was adapted for the stratum corneum with the thickness of 30μm, considering the contact with the ambient air, and the skin moisture content at the depth of 30μm given as saturated. As the results, the distribution of moisture content calculated by using the proposed analytical model agreed with the measured results, by taking into account the dependence of the moisture conductivity on the moisture content. It was suggested that the proposed model could explain the transient response of skin surface moisture distribution to the change in indoor humidity.
著者
金 勲 林 基哉 大澤 元毅 開原 典子 阪東 美智子
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成28年度大会(鹿児島)学術講演論文集 第8巻 性能検証・実態調査 編 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.117-120, 2016 (Released:2017-10-31)

高齢者福祉施設における室内環境管理の実態の解明と対策の提案のため全国アンケート調査を行た。本報では施設運営及び空調設備に関して地域特性などを加味し詳細解析した結果について報告する。 冷暖房設備はIII地域を堺に方式が変わり、換気設備は換気扇が約7割、中央式が約2割であった。温湿度の管理基準を設けている施設の基準範囲は概ね妥当なレベルであるが、逸脱した数値も存在した。換気は規則的に行っている施設が半分、任意的に行っている施設が半分であり、規則的な換気の4割は1日に2回以上3回未満であった。