著者
関嶋 政和
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.900-907, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
13

1つの薬を上市するまでに12年から14年の期間とおおよそ26億ドルの資金が必要とされており,近年,これらの期間と費用を削減するために創薬分野においてIT技術を駆使したアプローチ(IT創薬)に大きな注目が集まっている。創薬では天文学的な数の薬候補化合物の中から,薬効があり副作用の少ない化合物の探索が日夜行われており,IT創薬を活用することで機械学習の手法で薬効がある化合物を予測したり,創薬の標的タンパク質の立体構造情報を用いたバーチャルスクリーニングを実施したりすることで創薬のプロセスを効率化することが期待されている。IT創薬技術の啓蒙(けいもう)と人材育成に資することを目的として,誰でも無料で参加できるIT創薬のオープン創薬コンテストを並列生物情報処理イニシアティブの主催で開催した。参加者は自らの手法で著者らが指定する220万化合物から標的タンパク質の機能を阻害する化合物の候補を選抜し,著者らはそれらを実際にバイオアッセイにより評価を行った。さらに,技術やノウハウの共有のために,参加者の利用した方法論と得られた化合物の成果情報の公開を行った。
著者
安尾 信明 関嶋 政和
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.567-568, 2016-03-10

情報技術を用いた創薬では、標的に対する活性化合物を入手するためにバーチャルスクリーニングが行われるが、その精度は未だ不十分である。本研究では、バーチャルスクリーニングの精度を向上させることを目的とし、タンパク質-リガンドドッキングのポスト処理によるリランキングを行なった。具体的には、ドッキング中に計算されるリガンドとタンパク質の各残基の相互作用エネルギーをそのまま用い、活性化合物と類似した相互作用をもつ化合物が高得点となるスコアを開発した。また、GlideとDUD-Eベンチマークセットを用いて手法の評価を行った。
著者
坂本 亘 関嶋 政和
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2017-BIO-50, no.43, pp.1-6, 2017-06-16

創薬において創薬標的タンパク質や薬候補化合物の立体構造の可視化は重要な役割を果たしている.しかし,現在多くの分子構造描画システムでは本来 3 次元の立体構造を 2 次元のディスプレイで描画している.本来3次元であるタンパク質や薬候補化合物の立体構造は,その相互作用や化合物の最適化を考える上で,3 次元で可視化した方がより有用な知見が得られると考えられる.そこで,本研究ではタンパク質や化合物の立体構造を Mixed Reality (複合現実) を実現するデバイスである HoloLens を用いて複合現実で描画するシステムを開発した.HoloLensの性能に起因する表示上のパフォーマンスに課題はあるものの,今後課題を解決していくことで,創薬において本システムは有用なものになると考えられる.
著者
吉川 舜亮 石田 貴士 関嶋 政和 秋山 泰
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2013-BIO-34, no.1, pp.1-7, 2013-06-20

近年,次世代シーケンサの開発により大量のゲノム情報を高速かつ低価格で読み取ることが可能となった一方で,一度に読み取ることができるリードの長さが第一世代のシーケンサが数百塩基であるのに比べて第二世代以降のシーケンサでは数十から百数十塩基と短くなっており,それに伴って様々なショートリード向けのアセンブラが考案されている.本研究では,まず高速,省メモリのアセンブラとして近年提案された Sparse Assembler の性能評価を行い,主に最大メモリ使用量,実行時間の面で優れる一方で,出力されるコンティグの質は他のアセンブラに劣ることを確認した.そこで本研究では多くの研究で使用実績のある Velvet にこのアルゴリズムを適用することで,Velvet のアルゴリズムを基本としながらも従来のものより短時間かつ少ないメモリ使用量のアセンブラを実装することを目指した.
著者
恵利川 大樹 安尾 信明 関嶋 政和
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO) (ISSN:21888590)
巻号頁・発行日
vol.2020-BIO-61, no.11, pp.1-6, 2020-03-05

創薬のプロセスの一つである化合物最適化では,特定の化合物を出発点としてより薬らしい化合物の探索を行っている.機械学習を利用した化合物生成モデルの一つである ChemTS は優れた物性を持つ化合物を生成することに成功したが,特定の化合物を出発点とした化合物生成には対応していなかった.そこで,本研究ではモンテカルロ木探索を用い,特定の化合物の誘導体を生成することが可能な手法を開発した.また,本手法について化合物の薬らしさの指標である QED を最適化する実験を行い,平均 QED が 0.63 の化合物群に対して 0.93 を超える化合物を生成することに成功した.
著者
坂本 亘 関嶋 政和
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.625-626, 2017-03-16

タンパク質の構造についてより深く理解するために、複合現実(Mixed Reality)、特にMicrosoftのHololensを用いたタンパク質の分子構造描画システムを開発した。遠隔会議等で用いられることも想定し、複数台のHololensの通信機能も実装した。また、通信機能でタンパク質の角度や大きさを複数台で共有、操作することで、複数人でのタンパク質についての議論がしやすくなった。
著者
吉野 龍ノ介 安尾 信明 萩原 陽介 大野 一樹 生田目 一寿 折田 正弥 関嶋 政和
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.78-79, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
6

シャーガス病、アフリカ睡眠病、リーシュマニア症はトリパノソーマ科の寄生原虫の感染によって引き起こされる病気であり、主に発展途上国である熱帯地域が感染地域であるため、顧みられない熱帯病として知られている。我々は、新たな抗トリパノソーマ科原虫の医療薬の開発を目的とし、ドッキングシミュレーションによる医療薬候補の探索を行い、in vitro 試験及びX線構造解析による複合体構造の詳細な解析を行った。我々はまず、標的蛋白質であるスペルミジン合成酵素の活性中心に対して、Drug Likeな化合物、約480万個のドッキングシミュレーションを行い、更にドッキング結果の上位の化合物をin vitro試験によって評価を行った結果、IC50が10uMオーダーのヒット化合物が得られた。ヒット化合物の複合体モデル構造をもとにヒット化合物の構造最適化を行い、新たな抗トリパノソーマ治療薬が開発されることが期待される。
著者
新井 直樹 吉川 舜亮 安尾 信明 中嶋 悠介 吉野 龍之介 関嶋 政和
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.104-105, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
2

Structure Based Drug Discovery (SBDD)では、標的となる蛋白質の構造に対して、ヒット化合物の探索が行われる。ヒット化合物が得られた後に、活性をあげたり物性を改善するなど、化合物をよりドラッグライクな化合物へと変化させていく。本研究では、実際に合成が可能であるように化合物の成長を行うことが可能となるよう、Hydrogen Bonding Donor (HBD), Hydrogen BondingAcceptor (HBA)の数、安定性の増加に関与する合成ルールを多段階に適用することで化合物をドラッグライクに変化させることを可能にした。さらに、webサービスとして実装することで、ユーザがヒット化合物を得た後に、インタラクティブに合成ルールを確認しながらヒット化合物から合成可能なドラッグライクな化合物群を獲得することを可能にしている。
著者
秋山 泰 瀬々 潤 関嶋 政和
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、無限次数多重検定法(LAMP)を開発し、ヒト乳がん細胞等における制御因子の同定に適用した。形状相補性に基づくドッキング手法MEGADOCKを発展させ、キナーゼ等の標的タンパク質の網羅的解析を実施し、結果をデータベース化した。また化合物プレ・スクリーニングを行うSpressoシステムを開発した。分子動力学計算により熱揺らぎに基づく結合ポケットの変形を評価することにより、バーチャルスクリーニングの性能が向上することも見出した。
著者
齊藤 有紀 石田 貴士 関嶋 政和 秋山 泰
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2013-BIO-34, no.15, pp.1-6, 2013-06-20

近年,薬剤開発に必要な時間や費用が増大しており,薬剤開発の期間短縮や費用削減が求められている.そのための手法としてコンピュータ上でのシミュレーションを用いて,ターゲットとなるタンパク質を阻害する薬物の構造を設計する手法が注目を浴びている.一方で,薬物として使用する化合物は,体内で代謝・排泄されなければならないという条件がある.この条件を満たす薬物の選定のために行われるのが薬物クリアランス経路予測である.そこで我々は,コンピュータ上で行われるシミュレーションのひとつである,タンパク質と化合物のドッキング計算による結合自由エネルギー計算を,薬物クリアランス経路の予測に応用し,これまで我々が開発してきたクリアランス経路予測システムの精度改善を行った.
著者
杉浦 典和 石田 貴士 関嶋 政和 秋山 泰
雑誌
研究報告バイオ情報学(BIO)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.25, pp.1-7, 2012-06-21

代表的な de novo アセンブラの一つである Velvet は,大規模なゲノムのアセンブリにおいて消費メモリ量の多さが課題とされている.本稿ではハッシュテーブルを分割することで,特に消費メモリ量の多い前半の velveth の消費メモリを削減する手法を提案した.またハッシュテーブルを分割する手法として,新たにリード分割法を提案した.リード分割法の提案により,従来より提案されている k-mer 値に応じた分割法に比べ,少数計算機で実行する際の実行時間の削減に成功した.Velvet is one of the most representative de novo assembler. However it has a problem that its memory consumption is too large for large scale assembling. Here, we propose a method to decrease the memory consumption of velveth which is the first half of Velvet and requires generally larger memory than the remaining half part. We propose a novel hash dividing method by dividing reads. By using this method, we have succeeded to decrease the elapsed time compared to the existing method, which divides a hash table corresponding the k-mer value.