- 著者
-
藤井 茜
巷岡 祐子
河野 達夫
榎園 美香子
槙殿 文香理
陣崎 雅弘
- 出版者
- 日本小児放射線学会
- 雑誌
- 日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.1, pp.47-51, 2023 (Released:2023-04-15)
- 参考文献数
- 9
胸骨骨折は,長管骨骨幹部骨折や肋骨骨折と同様に児童虐待を示唆する最も特異な徴候の一つと考えられているが,文献的にはあまり報告されていない.胸骨骨折の多くは胸骨柄と体部の間で起こり,特に小児では分節脱臼/骨折の形式を示す.ルーチンの全身骨単純X線写真撮影法は,上肢との重なりや不適切な撮影範囲により,胸骨病変の描出が不十分で評価に適さない場合がある.胸骨を意識して,脊椎側面像を上肢挙上位で撮影する,胸骨側面ターゲット撮影を追加するなどの工夫が有用である.また胸部CTは急性期・陳旧性ともに骨折の検出に優れる.虐待を見逃した場合の影響の重大さに鑑みて,臨床的に虐待が疑われるにもかかわらず画像上の確証に乏しい場合には,胸部CTを積極的に用いることが正当化されると考える.日本医学放射線学会画像診断ガイドライン(2021)では,虐待を疑う状況における肋骨骨折の検出に関して,適切な線量設定のもとに胸部CTを行うことを弱く推奨している.