著者
明貝 怜美 澤井 夏海 須藤 洋行 佐藤 宏樹 藤田 行代志 三島 八重子 木﨑 速人 堀 里子 澤田 康文
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.11-16, 2022-05-31 (Released:2022-06-11)
参考文献数
7

Objective: Pharmacists at insurance pharmacies play an important role in the pharmaceutical care of outpatients receiving cancer chemotherapy. This study aimed to clarify the actual status of insurance pharmacies' involvement in cancer chemotherapy and associated issues, based on an analysis of prescription inquiries made to doctors by pharmacists at an insurance pharmacy.Design: This was a retrospective observational study.Methods: The data was collected in one insurance pharmacy, which received prescriptions mainly from Gunma Prefectural Cancer Center. Among 2, 258 inquiries recorded from January 2015 to May 2018, inquires related to oral anticancer drugs or supportive care medicine were extracted. The frequency of inquiries for each item, or the frequencies of factors that lead to inquiries were calculated. Inquiries considered to have potentially led to the prevention or avoidance of adverse drug reactions (ADRs), so-called “preavoidance” inquiries, were also extracted.Results: Four hundred and forty inquiries related to 20 oral anticancer drugs were included in the analysis. The prescriptions were changed after 92.7% of all prescription inquiries. Prescription inquiries for drugs with rest periods were more frequent than those for drugs without rest periods. The most common inquiries were about the medication schedules stated on the prescription, followed by inquiries about supportive care drugs. Approximately 60% of the pharmacy inquiries were related to“pre-avoidance”inquiries. Most of the pre-avoidance inquiries concerned prevention of ADRs, though these inquiries also contributed to“reduction or avoidance of mental anxiety”. The prescription inquiries were triggered by information collected by pharmacists from patient interviews and from medication histories.Conclusion: Our findings suggest that inquiries to the prescribing doctors by pharmacists at insurance pharmacies contribute significantly to the appropriate use of anticancer drugs.
著者
藤岡 周助 岡 香織 河村 佳見 菰原 義弘 中條 岳志 山村 祐紀 大岩 祐基 須藤 洋一 小巻 翔平 大豆生田 夏子 櫻井 智子 清水 厚志 坊農 秀雅 富澤 一仁 山本 拓也 山田 泰広 押海 裕之 三浦 恭子
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

【背景と目的】ハダカデバネズミ (Naked mole rat、 NMR) は、発がん率が非常に低い、最長寿の齧歯類である。これまでに長期の観察研究から自然発生腫瘍をほとんど形成しないことが報告されている一方、人為的な発がん誘導による腫瘍形成に抵抗性を持つかは明らかになっていない。これまでにNMRの細胞自律的な発がん耐性を示唆する機構が複数提唱されてきた。しかし、最近それとは矛盾した結果も報告されるなど、本当にNMRが強い細胞自律的な発がん耐性を持つのかは議論の的となっている。さらに腫瘍形成は、生体内で生じる炎症などの複雑な細胞間相互作用によって制御されるにも関わらず、これまでNMRの生体内におけるがん耐性機構については全く解析が行われていない。そこで、新規のNMRのがん耐性機構を明らかにするため、個体に発がん促進的な刺激を加えることで、生体内の微小環境の動態を含めたNMR特異的ながん抑制性の応答を同定し、その機構を解明することとした。【結果・考察】NMRが実験的な発がん誘導に抵抗性を持つかを明らかにするため、個体に対して発がん剤を投与した結果、NMRは132週の観察の間に1個体も腫瘍形成を認めておらず、NMRが特に並外れた発がん耐性を持つことを実験的に証明することができた。NMRの発がん耐性機構を解明するために、発がん促進的な炎症の指標の一つである免疫細胞の浸潤を評価した結果、マウスでは発がん促進的な刺激により強い免疫細胞の浸潤が引き起こされたが、NMRでは免疫細胞が有意に増加するものの絶対数の変化は微小であった。炎症経路に関与する遺伝子発現変化に着目し網羅的な遺伝子解析を行なった結果、NMRがNecroptosis経路に必須な遺伝子であるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異により、Necroptosis誘導能を欠損していることを明らかにした。【結論】本研究では、NMRが化学発がん物質を用いた2種類の実験的な発がん誘導に並外れた耐性を持つこと、その耐性メカニズムの一端としてがん促進的な炎症応答の減弱が寄与すること、またその一因としてNecroptosis経路のマスターレギュレーターであるRIPK3とMLKLの機能喪失型変異によるNecrotpsosis誘導能の喪失を明らかにした。
著者
多田 正大 下野 道広 本井 重博 須藤 洋昌 郡 大裕 川井 啓市
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.73-77,154, 1981 (Released:2009-06-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

大腸癌や腺腫の生体内における自然史に関して,明らかでない点が多い.殊に内視鏡検査の普及によって,大腸ポリープは発見され次第にポリペクトミーによって切除されるのが通例であるため,その長期経過観察例は稀である.著者らは大腸ポリープ7例について,経過観察することができたので,その自然史の一端について検討した.その結果,大腸癌のvolume doubling time(tD)は344.8日であった.腺腫では大きさにほとんど変化がないもの,急速に成長するもの,がみられた.成長する腺腫(腺管腺腫)のtDは213.4日であり,癌よりも短期間であった.腺腫の成長率の差は,その発生部位や個人の排便回数の差による細胞脱落因子によるものか,それとも宿主因子によるものか現時点では解明できないが,同様の数少い症例を集積して解明されるべき問題であると思われる.