著者
久保 真人 饗場 郁子 下畑 享良 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.219-227, 2021 (Released:2021-04-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

医師のバーンアウトの現状と対策を検討するため日本神経学会の全学会員8,402名に対しアンケート調査を行い,15.0%にあたる1,261名から回答を得た.本論文では男性医師と女性医師の比較結果について報告する.勤務・生活状況では既婚者のみに有意な差が認められた.労働時間など勤務状況では男性のほうが厳しい条件で勤務していること,家事分担では女性の負担が重いことが確かめられた.日本版バーンアウト尺度による分析では,全体の得点では性差は認められなかったが,バーンアウトと関連する要因については,男女に共通した要因にくわえて,男性あるいは女性特有の要因が明らかとなった.
著者
下畑 享良 久保 真人 饗場 郁子 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.89-102, 2021 (Released:2021-02-23)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019年10月,日本神経学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員8,402名の15.0%にあたる1,261名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感2.86/5点,脱人格化2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連していた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある.
著者
饗場 郁子 松下 剛 齋藤 由扶子 沼崎 ゆき江 河合 多喜子 楯 澄子 伊藤 信二 松岡 幸彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.177-180, 2003-03-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
7

今回われわれは,入院中の進行性核上性麻痺(progressive supranuclearpalsy:PSP)患者の転倒・転落について調査し, パーキンソン病(Parkinson disease:PD)患者と比較検討した. 対象は平成13年9月1日から10月31日の2ケ月間に国立療養所東名古屋病院へ入院していたPSP14名およびPD(Yahr stageIII以上, 痴呆の合併なし)11名. 転倒・転落した患者の割合はPSP 50%, PD 45%であった. 一人当りの転倒・転落回数はPSPでは平均3.2回/月, PDでは0.7回/月であり, PSPではPDに比べて頻度が高かった. またPSPでは転倒・転落時, 21%に外傷をともなっていた. PSPでは, 歩行可能なレベルだけでなく, ADLが悪化し臥床状態になっても転倒・転落が生じており, 転倒・転落はPSPを介護する上で長期にわたり大きな問題となっていた. PSPにおける転倒・転落原因は単に姿勢反射障害のみならず, 前頭葉性痴呆症状が強く関与していると考えられ, 医療者の注意, 指導にかかわらず突発的な行動をおこして転倒・転落にいたる場合が多い, 以上よりPSPにおいて転倒・転落を防ぐことはきわめて困難であり, 転倒・転落時の受傷を予防・軽減するための対策が必要である.
著者
下畑 享良 久保 真人 饗場 郁子 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001533, (Released:2021-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019年10月,日本神経学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員8,402名の15.0%にあたる1,261名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感2.86/5点,脱人格化2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連していた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある.
著者
下畑 享良 饗場 郁子 西澤 正豊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.149-157, 2016 (Released:2016-03-30)
参考文献数
48
被引用文献数
2

大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration; CBD)という名称は病理診断名として使用され,代わって大脳皮質基底核症候群(corticobasal syndrome; CBS)という名称が臨床診断名として使用されるようになった.従来のCBDの臨床診断基準はCBSのみを対象としているが,国際コンソーシアムは2013年にCBS以外の病型も含むCBDの臨床診断基準を作成した(Armstrong基準).しかし二つの検証試験の結果,この診断基準の感度,特異度は高くないことが明らかになった.異常リン酸化タウを標的とした治療介入が進行中であり,発症早期からの正確な診断が望まれるが,今後,前方視的研究によるバイオマーカーの発見を通して,診断基準を改訂する必要がある.
著者
高松 泰行 松田 直美 饗場 郁子
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.33-37, 2018 (Released:2018-06-12)
参考文献数
17

姿勢保持障害は進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)の主要症候であるが,その特徴について詳細に検討した報告は少ない.本研究では,PSP患者における静止立位時の重心動揺と姿勢保持障害の特徴について,健常高齢者と比較,検討した.対象はPSP患者21名,健常高齢者25名とした.年齢,性別,body mass index(BMI),静止立位時の重心動揺を評価した.PSPは,発症からの罹患期間,modified Rankin scale(mRS),進行性核上性麻痺評価尺度(PSP rating scale:PSPRS)項目V及びVI,pull testを評価した.重心動揺検査の結果,PSPと健常高齢者との間に有意差を認めた項目は,外周面積,単位面積軌跡長,前後方向動揺平均中心変位であった.PSPにおいて,pull testと相関を認めた項目は,罹患期間,mRS,PSPRS VI,外周面積であった.以上より,PSPは健常者に比べて,後方重心傾向が強く,静止立位バランスが不安定であり,単位面積軌跡長が低値であるという特徴が示された.また,pull testは疾患の進行度,機能自立度を反映しており,静止立位時のバランス能力が関係していることが示された.
著者
犬飼 晃 片山 泰司 見城 昌邦 横川 ゆき 饗場 郁子 齋藤 由扶子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.634-640, 2010 (Released:2010-10-04)
参考文献数
30
被引用文献数
5 10

症例は55歳の女性である.皮疹なく右C2,3皮膚分節の異常感覚で発症し,症状は,約3週間で右C2~C6領域まで拡大した.触覚,痛覚の鈍麻あり.頸髄MRIでC2レベル髄内にT1WIで等信号,T2WIで高信号,ガドリニウム(Gd)で増強される病巣をみとめた.脳脊髄液では水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の抗体価指数が高値で髄腔内抗体産生が示唆され,皮疹を欠くVZV神経障害(zoster sine herpete:ZSH)にともなう脊髄炎と病因診断した.抗ウイルス療法と抗炎症・浮腫療法で後遺症を残さず治癒した.ZSHにともなう脊髄炎では,脳脊髄液中抗体価指数による髄腔内抗体産生の評価が病因確定に有用であった.
著者
饗場 郁子 齋藤 由扶子 松岡 幸彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.467-470, 2005-09-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
16

進行性核上性麻痺は, 1996年に国際的な臨床診断基準が提唱され, 本邦ではパーキンソン病関連疾患として, 2003年から大脳皮質基底核変性症とともに厚生労働省特定疾患治療研究事業(特定疾患)に加えられることとなった. パーキンソニズムを呈する神経変性疾患であるが, 進行が速く, 臨床症候もパーキンソン病とは異なる部分が多い. その臨床特徴は, 初期からみられる易転倒性, 垂直性核上性注視麻痺, 体幹部や頚部に強い固縮, 前頭葉徴候・前頭葉性の認知障害, 進行性の言語障害・嚥下障害などである.