著者
横山 和正 服部 信孝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.60, no.Suppl.2, pp.s53-s59, 2014 (Released:2015-02-14)
参考文献数
25

ワクチンというと皆さんはエドワードジェンナーについて学生時代に学んだかもしれません.当時経験的に知られていたのは,牛痘にかかったヒトは天然痘にかからないですむ,もしくは天然痘にかかったとしても死に至らず天然痘感染による症状が軽くすんでいたことから治療への応用が検討されました.他の医師が行った実験治療では多くの死亡事故もあったようです.それを踏まえてジェンナーが行ったのは,天然痘予防のためのウシ天然痘(牛痘)のヒトへの接種実験でした.現在ワクチンという呼び名で一般化したこの試みは見事に成功し数多くの人命が救われ,184年後の1980年5月,WHO(世界保健機関)は天然痘の根絶を宣言しました.このようにワクチンは正しく使用すれば効果も高く,社会に貢献するのはあきらかですが例外もあります.本日参加された皆さんはワクチンの適応,時期,その限界や副作用についてもよく知っておく必要があると思います.繰り返しになりますが,ワクチンに限らず万人に対して同じ作用・効果を起こす薬剤は存在しませんし,個々のワクチン接種時の免疫状態によって効果や副作用が変化する可能性もあるのです.またご自身,家族,友人,会社,村,市,地方,県,国,世界と接種対象のスケールアップに伴いワクチンの主たる目的も変わってきます.ワクチンはもともと個人の体内に存在していない異物(非自己)を,皮下,筋肉注射,静脈注射,経鼻,経口ルートから投与し,個人のもつ免疫能を強制的に賦活させるものです.よって,場合によっては死に至るような重篤な副作用を起こす可能性が常にあります.今回の公開講座は広くワクチンの特集であり,他の演者からすでにそれぞれの分野における最新の報告が行われてきたかと思いますが,私の講演ではインフルエンザワクチンにより起こりうる神経系の副作用についてまずお話をします.また,最近話題になっている子宮頸癌ワクチンと神経系への副作用,さらには私の主たる研究である多発性硬化症のワクチンを利用した免疫治療が歴史的にどのように行われてきたかについて述べ,日本でも増加しているアルツハイマー病に対してのワクチンによる免疫治療とその誤算,最後に今後日本でもますます増えるであろう様々なワクチンにどう向き合うかの基本姿勢についてまとめて述べます.自己を病気から守るためには非自己である感染のみならず,自己に対しての過剰反応である免疫現象を理解することが必要不可欠なのです.
著者
横山 和正 服部 信孝
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.148, no.2, pp.105-120, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
118
被引用文献数
1

多発性硬化症(MS)はヘルパーT細胞1(Th1),Th17細胞などの獲得免疫により髄鞘タンパク質に対する自己免疫性炎症反応とそれに伴う脱髄が病態形成の中心とされてきたが,MSの進行に強く影響する神経変性過程では炎症性反応の他にもいまだ未解明の病態が関与していると考えられる.近年,MS変性過程での主なプレイヤーは自然免疫とされ,MSは経過により免疫病態がシフトする不均一な疾患と捉えられる.また,MSの大多数を占める再発寛解型MS(RRMS)患者は発症から10年以内に50%が二次性進行型MS(SPMS)へ移行するが,急性発作に対するステロイド療法では再発抑制と障害進行抑制効果に対してのエビデンスはないことから,MS治療では再発抑制効果,障害進行抑制効果が期待されるインターフェロンβ製剤,グラチラマー酢酸塩(GA)をはじめとする病態修飾療法(DMT)が主な治療選択肢となる.GAは,MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の病因探索でミエリン塩基性タンパク(MBP)の生物学的認識を模倣する目的で4つのアミノ酸で化学合成され,EAEを改善することが示された合成ランダムポリペプチドである.GAはEAEに対する効果に基づいて開発され,RRMS患者を対象とした一連のピボタル試験で有効性が示されたことから1996年に米国,イスラエルで承認されて以降,世界50ヵ国以上でIFN β製剤とともにRRMSに対する第一選択薬として用いられている.GAは日本においても2015年に「多発性硬化症の再発予防」の効能効果で厚生労働省から製造販売承認を受けている.海外での20年以上にわたる臨床経験で確立された安全性に加え,MSにおける獲得免疫,自然免疫の炎症機序を標的とする免疫調整作用により,多くの新規DMTが登場しつつある現在でも,優れた治療選択肢となるものと期待される.
著者
長谷川 千洋 博野 信次 小幡 哲史 宗佐 郁 田中 達也 横山 和正
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01 (Released:2013-05-31)

本研究は情動の神経基盤を調べることを目的に,幸福情動を賦活させる手段として実験参加者に催眠暗示を行い,脳のどの部位で賦活化が生じているかについてfMRIを用いて測定した。予備実験として催眠感受性の高い実験参加者に対してfMRI環境下での情動賦活法としての催眠の有用性を確認した後,安定した幸福情動の産生が確認された実験参加者に対して聴覚提示による催眠誘導を行い幸福情動産生時と非幸福情動産生時の違いを調べた。この結果,幸福情動産生時での共通の賦活部位として補足運動野が示された。関連研究として,情動及び催眠に関する実験研究も行い,情動の脳内メカニズムの解明を試みた。
著者
横山 和正
出版者
滋賀大学
雑誌
滋賀大学環境総合研究センター研究年報 (ISSN:13491881)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.9-19, 2006-03

A student program to identify the acorns in the University campus was created.It consists of:1. World and Japanese distrbution maps of beech and oaks.2. Practical keys to genera and species of Fagaceae to identigy Japanese oaks.3. Cholor photographs of acorns and leaves of oak trees in the campus. Students easily identified the acorns in the campus by this program, and this program seems to be helpful to understand taxonomy of Fagaceae and relatioship between oaks and human beings. Giant tree worship prevailed among the natives around the University, were investigated to understand Japanese characteristics to nature.
著者
横山 和正 服部 信孝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂醫事雑誌 (ISSN:21879737)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.s53-s59, 2014

ワクチンというと皆さんはエドワードジェンナーについて学生時代に学んだかもしれません.当時経験的に知られていたのは,牛痘にかかったヒトは天然痘にかからないですむ,もしくは天然痘にかかったとしても死に至らず天然痘感染による症状が軽くすんでいたことから治療への応用が検討されました.他の医師が行った実験治療では多くの死亡事故もあったようです.それを踏まえてジェンナーが行ったのは,天然痘予防のためのウシ天然痘(牛痘)のヒトへの接種実験でした.現在ワクチンという呼び名で一般化したこの試みは見事に成功し数多くの人命が救われ,184年後の1980年5月,WHO(世界保健機関)は天然痘の根絶を宣言しました.<br>このようにワクチンは正しく使用すれば効果も高く,社会に貢献するのはあきらかですが例外もあります.本日参加された皆さんはワクチンの適応,時期,その限界や副作用についてもよく知っておく必要があると思います.繰り返しになりますが,ワクチンに限らず万人に対して同じ作用・効果を起こす薬剤は存在しませんし,個々のワクチン接種時の免疫状態によって効果や副作用が変化する可能性もあるのです.またご自身,家族,友人,会社,村,市,地方,県,国,世界と接種対象のスケールアップに伴いワクチンの主たる目的も変わってきます.<br>ワクチンはもともと個人の体内に存在していない異物(非自己)を,皮下,筋肉注射,静脈注射,経鼻,経口ルートから投与し,個人のもつ免疫能を強制的に賦活させるものです.よって,場合によっては死に至るような重篤な副作用を起こす可能性が常にあります.<br>今回の公開講座は広くワクチンの特集であり,他の演者からすでにそれぞれの分野における最新の報告が行われてきたかと思いますが,私の講演ではインフルエンザワクチンにより起こりうる神経系の副作用についてまずお話をします.また,最近話題になっている子宮頸癌ワクチンと神経系への副作用,さらには私の主たる研究である多発性硬化症のワクチンを利用した免疫治療が歴史的にどのように行われてきたかについて述べ,日本でも増加しているアルツハイマー病に対してのワクチンによる免疫治療とその誤算,最後に今後日本でもますます増えるであろう様々なワクチンにどう向き合うかの基本姿勢についてまとめて述べます.自己を病気から守るためには非自己である感染のみならず,自己に対しての過剰反応である免疫現象を理解することが必要不可欠なのです.
著者
丸山 卓郎 代田 修 川原 信夫 横山 和正 牧野 由紀子 合田 幸広
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.44-48, 2003-02-25
参考文献数
7
被引用文献数
7

マジックマッシュルームは,幻覚性物質であるサイロシンおよびサイロシビンを含有するキノコである.最近,これらのキノコ類は日本において麻薬原料植物として規制対象となった.他方,同キノコ類は多種にわたる上,粉末状態で流通する場合もあり,形態学的な手法では同定が難しい場合が多い.本研究では,遺伝子情報を基にした同キノコ類の同定法開発を目的として,国内流通品のrRNA遺伝子の内部転写スペーサー (internal transcribed spacer, ITS) 領域を解析し,その結果を基に国内流通品を6種に分類した.次いで,解析結果を標品およびデータベース中の塩基配列と比較することにより,流通品の基原種を明らかにした.さらに,LCを用いサイロシン含量を調べた結果,<i>Panaeolus cyanescens</i> が最も高い数値を示し,<i>Amanita</i> 属の2種では検出されなかった.