著者
高妻 洋成 降幡 順子 脇谷 草一郎 福永 香 佐野 千絵 吉田 直人 犬塚 将英 小川 雄一 大谷 知行 林 伸一郎 水野 麻弥
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ミリ波およびテラヘルツ(THz)波を用いた文化財の非破壊非接触診断技術の開発研究をおこなった。THz波については種々の材料のTHz分光スペクトルを取得し、材料分析のための基礎データを作成した。彩色文化財に対してTHz波イメージングおよびミリ波イメージングを応用するための基礎実験をおこなうとともに、木製彩色文化財および漆喰壁画に対してイメージングを実施した。ミリ波およびTHz波は文化財の表層にある程度侵入して、その内部構造を可視化することが可能である。さらにTHzイメージングでは、パルス波を用いることで、時間領域分光法により断面構造や任意の深さにおける平面的なイメージングも可能である。障壁画などの彩色層下にあってある程度の厚みをもつ下地漆喰などの状態や表具や額装などの絵画の構造について、従来、得ることのできなかった情報を非破壊で知ることが可能となった。
著者
平澤 毅 ひらさわ つよし Hirasawa Tsuyoshi 高妻 洋成 こうづま ようせい Kouzuma Yousei
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
奈良文化財研究所紀要 (ISSN:13471589)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.44-45, 2009-07-10

本稿においては、平成20年度遺跡整備・保存修復科学合同研究集会「埋蔵文化財の保存・活用における遺構露出展示の成果と課題」(2009年1月30日・3旧)での検討を踏まえつつ、遺構露出展示の今日的課題を展望する。
著者
藤岡 穣 淺湫 毅 稲本 泰生 加島 勝 高妻 洋成 高橋 照彦 村上 隆
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

国内の彫刻史、金工史、考古学、保存科学の研究者との連携、協力に加え、韓国国立博物館の研究グループとの共同研究という研究体制のもと、日本、韓国、中国、ベトナム、欧米等において、 半跏思惟像および関連の金銅仏について、 蛍光X線分析 100 余件、3 次元計測 11 件 、X線透過撮影 7 件の調査を実施した。その結果、青銅の成分については、日本製の金銅仏は止利派の作例を除けば多くは自然銅に僅かに錫を混ぜた青銅を用いており、南朝作例では錫分が特に多く、百済製とみられる作例でも錫分が多い傾向をしめすこと、華北の作例では錫と鉛が同程度に含まれるとの暫定的な見解を得ることができた。また、技法面では、従来、鬆(青銅の凝固時に内部に残る気泡)が多いのは韓半島もしくは中国製とみられていたが、鬆の多寡は必ずしも製作地に関わらないこと、韓半島や中国の作例では細部の造形も基本的には鋳型の段階で表現しているのに対して、日本の作例では鏨の使用が多いことなどが明らかになった。一方、 2009 年に南京において初めて南朝・梁代の金銅仏が出土し、 2010 年にはカンボジア南部で 2006 年に出土した梁代とみられる金銅仏が紹介されたが、その一部は山東や韓半島出土ないし伝来の金銅仏に近似しており、従来、文献から指摘されていた南朝と百済との交流、さらには山東を含む 3 地域間の交流が実作例によって裏付けられた。以上の科学的調査、南朝製金銅仏の発見等の結果、日本や韓国に伝来する金銅仏については製作地を再検討する必要があること、半跏思惟像についても南朝を含めた伝播のあり方を検討する必要があることが明らかとなった。
著者
北田 正弘 高妻 洋成 肥塚 隆保 建石 徹
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.71-75, 2015
被引用文献数
6

&nbsp;&nbsp;The mural of the <i>Takamatsuzuka</i> tumulus in Asuka, Nara prefecture, was painted in the 7-8th centuries. Red, green, blue, yellow, and black pigments are used in the mural. The microstructure of one of them, the red pigment, was described in the previous paper. In this study, the black pigment observed within the red pigment area has been investigated. An optical microscope, a scanning electron microscope, and a transmission electron microscope are utilized to examine the microstructure. Among the black particles, two different Fe compounds are observed. One is magnetite (Fe<sub>3</sub>O<sub>4</sub>) comprising small amounts of Ti, Al, and Mg, and the other is ilmenite (FeTiO<sub>3</sub>) containing a small amount of Mg. In addition to the above compounds, an oxide particle containing Zr is also observed.<br>
著者
北田 正弘 高妻 洋成 建石 徹
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.404-412, 2015 (Released:2015-08-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

The Takamatsuzuka tumulus was constructed in the 7th to 8th centuries at Asuka in Nara prefecture. The mural and wall surfaces are soiled and deteriorated by rainwater, mold, and other causes. The mural is painted on the stone wall that is coated with stucco. The stone walls are jointed with masonry joint stucco. The purpose of this investigation is to clarify the composition, crystal structure, and other material factors of the surface contaminant layer on the joint stucco. An X-ray computer tomography, an X-ray diffractometer, a scanning electron microscope, and a transmission electron microscope are utilized to examine the microstructure. The contaminant layer thickness is 0.2-0.3 mm. Kaolinite, muscovite, montmorillonite, hematite and a few silicates are detected from the contaminant layer. The compounds detected are constituents of soil-like clay, and most of them contain Fe. By transmission electron microscopy observation, the contaminant layer is found to consist of fine mineral grains, as mentioned above, most of which are acicular. The acicular grain size is approximately 0.2-1 μm in length and 0.015-0.2 μm in width. The grains are in a row parallel to the layer surface. The hematite grains are circular with diameters of 15-250 nm. In addition, iron titanate is observed. The yellowish brown color of the stucco surface is mainly due to iron ions contained in the above-mentioned compounds. It is thought that the grains deposited on the stucco surface from colloidal-like water containing the above-mentioned fine grains.