著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

古代ガラスにはSrが100~500 ppm含まれており、地中海周辺地域の出土品を中心にSr同位体比による産地推定が行われている。一方、日本出土品でSr同位体比分析が行われた例はほとんどない。本研究では、日本出土のガラス製遺物のSr同位体比分析を実施し、これまで特定することのできなかった生産地の特定を目指すものである。研究期間の前半では、化学組成において地中海周辺地域で生産された可能性の高いナトロンガラス(Group SI)を分析対象とした。さらに、主成分はナトロンガラスに類似するものの、微量成分や製作技法から判断すると南~東南アジア産と考えられる「ナトロン主体ガラス」(Group SIV)も調査した。その結果、Group SIは確かに地中海周辺地域で生産された「ナトロンガラス」であるが、Group SIVは真正の「ナトロンガラス」ではないことが確認された。さらに、日本出土のナトロンガラス(Group SI)の多くは、現在のイスラエル周辺で生産された可能性が高いことが明らかとなった。研究期間の後半では、インド~東南アジアで生産されたと考えられるカリガラスおよび高アルミナソーダガラスのSr同位体比を測定した。その結果、これらのガラスは地中海産のナトロンガラスとは全く異なる値を示した。特にカリガラス(Group PI)は今回調査した資料の中で最も高い値を示した。筆者らは製品の流通状況などからGroup PIのカリガラスについてインド産の可能性があると考えているが、インドのガンジス川流域の土壌は高いSr同位体比をもつことが知られており、関連性が注目される。最終年度では、これまでに実施した同位体比分析の結果について学会誌で報告するとともに、Sr同位体比にNd同位体比を組み合わせた日本出土のナトロンガラスの産地同定についても試みた。その結果、地中海産のガラスと矛盾しない結果が得られた。
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本列島では5世紀後半に西方起源と考えられる植物灰ガラスが突如出現し、6世紀にかけて大量に流通した。この時流入した植物灰ガラスは極めて多く、それまで流通の中心であったインド~東南アジア産のガラスに匹敵する。すなわち、日本列島への植物灰ガラスの大量流入は、交易ルートの中心が海路から陸路へ転換したことを示唆する。一方で、日本で出土する植物灰ガラスは、西アジア産の典型的な植物灰ガラスとは化学組成の特徴がやや異なる。本研究では、日本で出土する植物灰ガラスの具体的な生産地は一体どこなのか、そして、どのようなルートで流入したのか、という問題について同位体分析や超微量成分分析から明らかにする。
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構・奈良文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本で出土するインド・パシフィックビーズは色調によって出現時期が異なり、弥生時代と古墳時代の両時期に出現するのは、黄緑色、赤褐色、淡紺色など一部の色調に限られる。本研究で、これまで分析事例の少なかった弥生時代のインド・パシフィックビーズの分析を進めた結果、黄緑色と赤褐色のものは、弥生時代と古墳時代で基礎ガラスの化学組成が異なることが明らかとなった。生産地の変化を示唆する重要な知見である。
著者
田村 朋美 青野 友哉 中村 和之
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構 函館工業高等専門学校
雑誌
函館工業高等専門学校紀要 (ISSN:02865491)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.85-92, 2018 (Released:2018-01-31)
参考文献数
11

In this study, chemical compositions were reexamined on the glass beads excavated from the Usu-Oyakotsu site in Date City, Hokkaido. As a result, it was possible to clarify that these glass beads are composed of potash lime glass and potash lead glass. In particular, it is noteworthy that the majority was potash lime glass. In addition, it became clear that the potash lime glass is divided into two compositional types, lead - containing type and lead - free type. Especially for lead - containing type, it might be one of the features of potash lime glass distributed in the early Ainu culture period.
著者
新里 貴之 中村 直子 竹中 正巳 高宮 広土 篠田 謙一 米田 穣 黒住 耐二 樋泉 岳二 宮島 宏 田村 朋美 庄田 慎矢 加藤 久佳 藤木 利之 角南 聡一郎 槇林 啓介 竹森 友子 小畑 弘己 中村 友昭 山野 ケン陽次郎 新田 栄治 寒川 朋枝 大屋 匡史 三辻 利一 大西 智和 鐘ヶ江 賢二 上村 俊雄 堂込 秀人 新東 晃一 池畑 耕一 横手 浩二郎 西園 勝彦 中山 清美 町 健次郎 鼎 丈太郎 榊原 えりこ 四本 延弘 伊藤 勝徳 新里 亮人 内山 五織 元田 順子 具志堅 亮 相美 伊久雄 鎌田 浩平 上原 静 三澤 佑太 折田 智美 土肥 直美 池田 榮史 後藤 雅彦 宮城 光平 岸本 義彦 片桐 千亜紀 山本 正昭 徳嶺 理江 小橋川 剛 福原 りお 名嘉 政修 中村 愿 西銘 章 島袋 綾野 安座間 充 宮城 弘樹 黒沢 健明 登 真知子 宮城 幸也 藤田 祐樹 山崎 真治
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

徳之島トマチン遺跡の発掘調査をもとに、南西諸島の先史時代葬墓制の精査・解明を行なった。その結果、サンゴ石灰岩を棺材として用い、仰臥伸展葬で埋葬し、同一墓坑内に重層的に埋葬することや、装身具や葬具にサンゴ礁環境で得られる貝製品を多用することが特徴と結論づけた。ただし、これは島という閉ざされた環境ではなく、遠隔地交易を通した情報の流れに連動して、葬墓制情報がアレンジされつつ営まれていると理解される。