著者
九鬼 克俊 柿木 達也 高宮 静男 前田 潔
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.33-53, 2001-12-20
被引用文献数
1

阪神淡路大震災の高齢者における精神疾患への影響を明らかにするため, 被災地中心部と周辺部に位置する総合病院精神科外来を受診した65才以上の高齢者の特徴を, 外来診療録をもとに後方視的に調査した。中心部, 辺縁部ともに痴呆・せん妄, 気分障害が多く, さらに, 中心部では身体表現性障害が, 周辺部では post-traumatic stress disorder (PTSD), acute stress disorder (ASD) を含む不安障害が多数を占めていた。地震後, 周辺部病院群ではPTSD・ASDの有意な増加がみられた。震災を契機に発症した例では, 痴呆・せん妄および身体表現性障害は周辺部病院群より中心部病院群において有意に高率で, PTSD・ASDは逆に中心部病院群より周辺部病院群において高率であった。被災地中心部では, 痴呆の顕在化に対処する体制が必要とされるとともに, 精神的ストレスが身体症状として現れることが多いため, 身体科と精神科の連携を強化する必要があると思われた。周辺部でPTSD・ASDの受診率が高かったことは, 避難先での精神保健活動の必要性が高いことを示唆していると考えられた。
著者
井上 建 小坂 浩隆 岡崎 玲子 飯田 直子 磯部 昌憲 稲田 修士 岡田 あゆみ 岡本 百合 香山 雪彦 河合 啓介 河野 次郎 菊地 裕絵 木村 大 越野 由紀 小林 聡幸 清水 真理子 庄司 保子 髙倉 修 高宮 静男 竹林 淳和 林田 麻衣子 樋口 文宏 細木 瑞穂 水田 桂子 米良 貴嗣 山内 常生 山崎 允宏 和田 良久 北島 翼 大谷 良子 永田 利彦 作田 亮一
出版者
日本摂食障害学会
雑誌
日本摂食障害学会雑誌 (ISSN:24360139)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-12, 2023-10-05 (Released:2023-10-05)
参考文献数
19

COVID-19パンデミック下,摂⾷障害患者における社会からの孤立,受診控え,症状の悪化,さらに新規患者の増加などが報告された。そこで我々は,2019,2020,2021年の神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)および回避/制限性食物摂取障害(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder: ARFID)の新規患者数,入院患者数,性別,年齢層,COVID-19の影響の有無について,国内で摂食障害を専門的に診療している医療機関に対して調査を依頼した。すべての項目に回答のあった28施設の結果について集計・解析した。ANの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は400人,266人,2020年は480人,300人,2021年は610人,309人であった。一方,ARFIDの新規・入院患者数はそれぞれ,2019年は70人,15人,2020年は97人,22人,2021年は112人,17人であった。AN,ARFIDともに2019年と比較して2020年,2021年は新規患者数,入院患者数ともに増加し,これは10代でより顕著であった。さらにANにおいては20代の患者も増加していた。COVID-19 パンデミック下にARFID 患者数の増加が示されたことは重要な知見であると考えた。