著者
木村 大樹
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.97-107, 2019-11-01 (Released:2019-11-03)
参考文献数
40
被引用文献数
2

自閉スペクトラム症(ASD)を抱える人やその傾向のある人の多くが,高い対人不安を体験している。本研究は,ASD傾向の高い青年の対人不安の特徴を自尊感情および公的自意識との関連から調べることを目的として,大学生395人に質問紙調査(自閉症スペクトラム指数AQ,対人恐怖心性尺度,自尊感情尺度,公的自意識尺度)を行った。その結果,ASD傾向群(AQ≧33, 32人)は対人不安が全般に高かった。また,ASD傾向群は〈集団に溶け込めない〉悩みの高さが特徴的であり,さらに〈集団に溶け込めない〉悩みに対して公的自意識は関連していなかった。一方で,ASD傾向の高低にかかわらず,〈自分や他人が気になる〉悩み,〈社会的場面で当惑する〉悩み,〈目が気になる〉悩みではやはり公的自意識がかかわっており,自尊感情の低さも対人不安全般にかかわっていた。また,ASD傾向は自尊感情を媒介して対人不安に関連していたが,ASD傾向自体も直接対人不安に関連していた。
著者
木村 大治
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.141, 2013 (Released:2013-05-27)

この発表では,SFの一ジャンルである「ファースト・コンタクト」,すなわち,異星人との最初の接触の「事例」を梃子として,出会いとコミュニケーションにおける「理解」の成立について論じる。
著者
大谷 武史 木村 大輔 平松 佑一 海部 祐史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11871, (Released:2021-03-15)
参考文献数
38

【目的】脳出血後に希に生じる人格変化と依存的行動を呈した症例に対し,目標設定ツールを用いた理学療法を実施し良好な結果が得られたので報告する。【症例】症例は背内側核を中心とした右視床出血を呈した60 歳台の女性である。ADL 自立の阻害因子であった依存的行動の背景には人格変化と高次脳機能障害の影響が考えられ,加えて不安と自己効力感の低下を認めた。【方法】行動変容を促すためGoal Attainment Scale を用いて段階的に目標設定し,結果を2 週間毎に共有した。行動変容の背景要因を明確にするために目標達成度,自己効力感,神経心理学的検査,運動機能を評価した。【結果】自己効力感,神経心理学的検査,運動機能が改善し退院時目標を達成した。一方で,一部の改善を認めたものの人格変化は残存した。【結論】行動の計画や実行に目標設定ツールを用いて達成経験を共有したことが自己効力感を高め依存的行動の変容につながったと考えられた。
著者
澳 昂佑 木村 大輔 松木 明好 井上 純爾 服部 暁穂 中野 英樹 川原 勲
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.355-360, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
21
被引用文献数
2 1

〔目的〕立位姿勢制御時の感覚統合の異常が改善したことにより,歩行能力が改善した症例を経験したので報告する.〔対象〕対象は脳梗塞発症後1ヵ月経過した70歳代女性とした.本症例は,明らかな麻痺がないにもかかわらず,麻痺側立脚期が短縮し,転倒の危険性を有していた.〔方法〕立位時の各感覚貢献度を算出すると,本症例は感覚情報の重みづけに異常を有していることが明らかとなった.通常の理学療法に加え,セラピストはディジョックボード上で麻痺側片脚立位姿勢をとらせ,足底からの感覚入力を促すトレーニングを行った.介入期間は1ヵ月とした.〔結果〕立位時感覚貢献度指数,歩行左右対称性,10m歩行速度に改善が認められた.〔結語〕今回の再重みづけトレーニングが本症例の立位時の感覚統合に効果があった可能性が示唆された.
著者
岩田 晃 淵岡 聡 木村 大輔 樋口 由美 灰方 淑恵 上 勝也 増原 光彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.213-216, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
15
被引用文献数
2

〔目的〕二関節筋に対するストレッチングにおいて,肢位を変化させることによって,伸張部位が変化するかを検討した。〔対象〕若年健常男性7名とした。〔方法〕全ての被験者に1)SLR,2)HFKEの二つのストレッチングを行った。超音波を用いて半腱様筋の近位部と遠位部の二部位について構造学的評価を行い,ストレッチング方法による差を検討した。〔結果〕近位部では筋長に対する腱画,坐骨結節間距離の割合がSLRよりもHFKEの方が大きくなり,遠位部では羽状角がHFKEよりもSLRの方が小さくなり,筋厚に差は認められなかった。〔結語〕近位部はHFKEの方が,遠位部はSLRの方が伸張されることが明らかとなり,伸張部位を関節角度によって変化させることが可能であることが明らかになった。
著者
大村 敬一 木村 大治 磯部 洋明 佐藤 知久
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第47回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.140, 2013 (Released:2013-05-27)

人類の宇宙への飛躍が目前に迫っているかもしれない今日の状況下、人類学に何が求められ、人類学に何ができるのだろうか。本分科会の目的は、宇宙空間への人類の進出が同時代的な課題となりつつある今日の世界にあって、「地球」という限定された空間を超えて、「宇宙」 という新たなフロンティアから人類を見つめ直す宇宙人類学の可能性を示し、問題提起を行うことにある。
著者
木村 大翼 田中 久美子
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.119-137, 2011 (Released:2011-09-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿では,文書量に不変な定数を考える.このような定数には,言語や文書の複雑さや冗長性を定量化して捉える計算言語学上の意義がある.これらの指標は既存研究でさまざまなものが提案されてきたが,ほとんどの場合英語を中心とする小規模な文書を対象としてきた.本研究では英語以外のさまざまな言語や,大規模な文書も対象として扱い,主に先行研究において値が文長に依らないとされる 3 つの指標 K, Z, VM と本研究で新たに試みた指標である H と r の 5 つの指標に対し,値が一定となるかどうかの実験を行った.結果,値が言語の種類や文長に依らずに一定となる指標は K と VM の 2 つの指標であった.なおかつこの 2 つの指標の値には自然言語とプログラミング言語の間で有意な差が見られ,言語の複雑さや冗長性をある観点で表した指標となっていると考えることができる.
著者
阪本 誠 松木 明好 谷 恵介 木村 大輔
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.459-464, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
18

〔目的〕Core stability training(CST)が運動失調とバランス能力に及ぼす影響について検討した.〔対象と方法〕発症から3年経過した橋出血後の50歳代男性.運動麻痺はなく四肢体幹に重度運動失調,バランス障害,歩行障害を呈していた.週1回60分,理学療法士が自宅訪問し介入した.介入開始から4週間(A期)は,筋力増強練習,寝返り,移乗の練習を行った.その後の4週間(B期)は,それらにCSTを付加した.〔結果〕B期においてのみ,scale for the assessment and rating of ataxiaのスコアが3.5点,Berg balance scaleのスコアが2点改善した.〔結語〕CSTは重度運動失調症例の運動失調とバランス能力を改善する可能性がある.
著者
木村 大翼 鹿島 久嗣
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

カーネル法は文字列、木構造、グラフ構造などの構造データに対する強力な学習手法であり、代表的な学習器としてSVMがある。しかし、一般にカーネル関数を用いたSVM学習の計算量は入力のデータ数nについてO(n^2)であり、大規模データに対する学習は困難である。本論文では木カーネルに着目し、切断法とXBWという簡潔データ構造を用いることでO(n)の計算量で非常に省メモリであるアルゴリズムを提案する。
著者
木村 大治 亀井 伸孝 森田 真生
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第46回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.51, 2012 (Released:2012-03-28)

この研究は「数学することとは,きわめて身体的な行為であろう」という予想のもとに,数学研究者たちの会話・身体動作から,彼らが数学的対象をどのように扱って研究を進めているかを明らかにしようとするものである。分析からは,現実世界には具体的な対応物のない概念に対しても,身体的と呼びうる操作がおこなわれているさまを見ることができた。
著者
木村 大毅 SUBHAJIT Chaudhury SARATHKRISHNA Swaminathan 田中 恒彦 DON Joven Agravante 立堀 道昭 ASIM Munawar ALEXANDER Gray
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.3Yin256, 2022 (Released:2022-07-11)

近年の深層学習は強化学習など様々な分野へと応用されている.ところが,一般的な深層学習ではニューラルネットワークを基本としているため,大量の学習データを用意する必要があり,異なるドメインへの学習結果の転用ができなく,更には学習後の動作の説明や解析が困難である.そこで,ニューラルネットワークを用いた深層学習と,記号的表現に基づくシンボリックAIを組み合わせたニューロシンボリックAIの活用が期待されている.本稿では,ニューロシンボリックAIを強化学習に応用した手法を提案する.結果として,提案手法は,既存の深層学習のみ手法,及び既存のニューロシンボリックAIに比べて,学習効率が良く,説明可能であることを示した.
著者
時岡 良太 佐藤 映 児玉 夏枝 田附 紘平 竹中 悠香 松波 美里 岩井 有香 木村 大樹 鈴木 優佳 橋本 真友里 岩城 晶子 神代 末人 桑原 知子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.76-88, 2017-07-01 (Released:2017-04-15)
参考文献数
27
被引用文献数
1 3

LINEとは,友人とのコミュニケーションを主眼としたアプリケーションのひとつである。近年,LINEは特に若者にとって欠かせないものとなってきている。本研究の目的は,高校生のLINEでのやりとりに対する認知のあり方について探索的に把握することと,その認知に対して現代青年に特有の友人関係のあり方が及ぼす影響について明らかにすることであった。高校生423名を対象に,本研究において作成したLINE尺度と友人関係尺度への回答を求めるオンライン調査を行った。LINE尺度の因子分析により「既読無視への不安」「気軽さ」「やりとりの齟齬の感覚」「攻撃性の増加」「即時的返信へのとらわれ」「つながり感」の6つの因子が抽出された。次に,友人関係による影響について多母集団同時分析を用いて検討した。その結果,友人から傷つけられることへのおそれが,LINEでのやりとりへのアンビバレントな気持ちを生む一因であることが示唆された。
著者
成田 穂 木村 大毅
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

AlphaZeroに代表されるようなモンテカルロ木探索と深層強化学習の組み合わせにより、素晴らしい高い性能が達成されているが、その計算コストは高く、また長い計算時間がかかるという問題点がある。本研究では、MCTSをベースとして、「失敗度」の概念を取り入れたアルゴリズムを提案する。失敗度は効率的な探索を可能にし、学習時間を削減する。これにより、エージェントは勝敗を分ける重要な局面を重点的に探索することが可能になる。我々の手法は最初の数イテレーションでAlphaZeroを超える性能を示した。
著者
木村 大助 鈴木 陽一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.251, pp.57-64, 2001-08-03
被引用文献数
5

人間が自然な状態で音を聴取する際には, 無意識のうちに頭部を動かしている場合が多い.この点に着目し, 頭部運動と音像定位の関係についての研究が進められているが, 聴覚ディスプレイシステムに代表されるような仮想音源による音像定位システムにおける頭部運動の影響について詳細に検討した研究はほとんどみられない.そこで我々は, 実音源と仮想音源を用いた音像定位実験により, 頭部運動の有無が前後誤判断及び定位精度に与える影響を分析するとともに, 音像提示時における頭部運動のパターンについて考察した.その結果, 実音源, 仮想音源に関わらず, 頭部運動により前後誤判断, 定位誤差が減少した.これらの結果は, 仮想音源を用いた音像定位システムにおいて, 頭部の動きに追従して音像を移動させることが重要であることを示している.
著者
木村 大翼 久保山 哲二 渋谷 哲朗 鹿島 久嗣
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.473-482, 2011 (Released:2011-04-19)
参考文献数
26
被引用文献数
2 12

Kernel method is one of the promising approaches to learning with tree-structured data, and various efficient tree kernels have been proposed to capture informative structures in trees. In this paper, we propose a new tree kernel function based on ``subpath sets'' to capture vertical structures in tree-structured data, since tree-structures are often used to code hierarchical information in data. We also propose a simple and efficient algorithm for computing the kernel by extending the Multikey quicksort algorithm used for sorting strings. The time complexity of the algorithm is O((|T_1|+|T_2|)log(|T_1|+|T_2|)) time on average, and the space complexity is O({|T_1|+|T_2|)}, where |T_1| and |T_2| are the numbers of nodes in two trees T_1 and T_2. We apply the proposed kernel to two supervised classification tasks, XML classification in web mining and glycan classification in bioinformatics. The experimental results show that the predictive performance of the proposed kernel is competitive with that of the existing efficient tree kernel proposed by Vishwanathan et al., and is also empirically faster than the existing kernel.
著者
新原将義 太田礼穂 広瀬拓海 香川秀太 佐々木英子 木村大望# 高木光太郎 岡部大介#
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第57回総会
巻号頁・発行日
2015-08-07

企画趣旨 近年,ヴィゴツキーの「発達の最近接領域(ZPD)」概念はホルツマンによって「パフォーマンス」の時空間として再解釈され,注目を集めている(e.g., Holzman, 2009)。パフォーマンスの時空間という考え方によってZPDは,支援者によって「測定」されたり「支援」されたりするものから,実践者らによって「創造」されるものへと転換したといえるだろう。 こうした潮流において現在,パフォーマンスの時空間を創造するための手法として,インプロ及びそれを題材としたワークショップ形式の実践が注目されている(Lobman& Lundquist, 2007)。こうした試みの多くは,単発的な企画として実施される(e.g., 上田・中原,2013;有元・岡部,2013)。 こうしたインプロ的な手法は,確かに対象についての固定化された見方から脱し,新たな関係性を模索するための手法として有用なものであり,また直接的には協働しないがその後も互いに影響し合う「触発型のネットワーク」を形成する場としての機能も指摘されつつある(青山ら,2012)。しかしインプロやワークショップを,単発の企画としてではなく実践現場への長期的な介入の手法として捉えた場合,ただインプロ活動やワークショップを実施するのみではなく,「それによって実践現場に何が起こったのか」や,「インプロやワークショップは実践現場にとって“何”であったのか」,そもそも「なぜ研究者の介入が必要だったのか」といったことも併せて考えていく必要がある。インプロという手法がパフォーマンスや「学びほぐし」のための方法論として広まりつつある今,問われるべきは「いかにインプロやワークショップ的な手法を現場に持ち込むのか」だけではなく,「パフォーマンスという観点からは,介入研究はいかにあり得るのか」や「インプロやワークショップの限界とは何か」といった問いについても議論するべきであろう。 社会・文化的アプローチではこれまでも,コールの第五次元(Cole, 1996),エンゲストロームの発達的ワークリサーチ (Engeström, 2001) など,発達的な時空間をデザインすることを試みた先駆的な実践が複数行われてきた。本企画ではこうした知見からの新たな取り組みとして,パフォーマンスの時空間の創造としての介入研究の可能性について考える。長期的な介入の観点としてのパフォーマンス概念の可能性のみではなく,そこでの困難や,今後の実践の可能性について,フロアとの議論を通して検討したい。公園で放課後を過ごす中学生への“学習”支援:英語ダンス教室における実践の記録広瀬拓海・香川秀太 Holzman(2009)の若者を対象とした発達的活動には,All Stars projectにおける「YO!」や,「ASTSN」といった取り組みがある。これらの背景には,学習・発達を,社会的・制度的に過剰決定されたアイデンティティや情動をパフォーマンスによって再創造することとしてとらえる哲学および,このような意味での学習・発達の機会を,学校外の場において社会的に奪われた人種的マイノリティの若者の存在がある。近年,日本においても経済的な格差が社会問題化しはじめている。これらの格差は,日本においても子ども達の学校外の体験格差としてあらわれ,特に情動性・社会性といった面での発達格差をもたらすと考えられる。 話題提供者はこのような関心のもと,2014年3月から,放課後の時間に公園で屯する若者を主な対象とした計6回の活動を実施してきた。これは,調査対象者の「英語学習」に対する感情の再創造を目的として,彼らが「興味あること」として語った「ダンス」を活動の基礎に,外国人ダンサーがダンスを英語で教える学習活動を組織したものである。外国人ダンサーとのやりとりの中で,子ども達がデタラメや片言で英語を「話している」状態を作り出すことによって,学校での経験を通して形作られた彼らにとっての英語学習の意味が解放され,新たに創造されることが期待された。 本シンポジウムでは特に,これらの活動に子ども達を参加させることや,ダンスというアクティビティに子ども達を巻き込むうえでの困難に注目してこの活動の経過を報告する。そしてそれらを通して,日本においてこのようなタイプの学習の場を学校外に組織していく上で考慮すべき点について議論したい。パフォーマンスとしてのインプロを長期的に創造し続ける: 方法論から遊びの道具へ木村大望 話題提供者は,2010年10月にインプロチームSAL-MANEを組織した。発足当初のチームは,子どもから大人までを対象とした対外的なワークショップ活動を積極的に行っていた。インプロは「学びほぐし」の方法であり,それを通じた自他の学びや変容が関心の中心であった。しかし,2012年に話題提供者が海外のインプロショーを鑑賞したことをきっかけに,チームは定期公演を主軸としたパフォーマンスとしてのインプロの追究へ活動の方向性をシフトさせた。ここでインプロはチームにとって「遊び」の道具となり,それ以前の方法論的理解は後景に退くこととなった。それに伴い,チームの活動は対外的なワークショップ活動から対内的な稽古的活動に転換していく このようにSAL-MANEの活動はインプロを方法論的に用いて第三者の学習を支援するための場づくりから,チームに携わるメンバー自らがパフォーマンスを「創造」する場づくりへ変遷している。この背景には,インプロに対するメンバーの理解や認識の変化が密接に関連している。インプロを手法として用いながら,自らがインプロによって変容した事例と言えるだろう。 本シンポジウムでは,この経過の中で生じた可能性と課題・困難について報告する。パラダイムシフトする「場」:21世紀のドラマへ佐々木英子 2000年前後から,同時多発的に世界各地で急速に発達してきた応用演劇という分野がある。この多元的な分野は,演劇を応用した,特定のコミュニティや個人のための参加者主体の参加型演劇であり,産業演劇とは一線を画している。この現象は,急速なグローバルチェンジの波を生き延びるための,多様性の中で相互作用によりオーガニックに変容し,持続可能な未来を「再創造」しようとする人類の知恵かもしれない。 話題提供者は,英国にて,応用演劇とドラマ教育を学ぶと共に,それに先駆け,2000~2003年,この21世紀型ドラマの「場」を,社会への「刺激」として,勉強会を行い身の丈で提案活動をした経験がある。社会から突然変異と見られたその活動は,子ども時代,正に「ZPD」において手を差し伸べられず,発達しようとする内的衝動が抑圧され腐らされるような苦痛の中,どうすれば生き延びるかを,体験と観察,思考を積み重ねた末に行った自分なりの代替案でもあった。 本シンポジウムでは,提案活動のきっかけとなった自身の子ども時代のドラマ体験,2001年の発達障害の子ども達が参加した演劇,また,最近では2014年に中学校で行った異文化コミュニケーション授業を通して経験・観察された可能性や困難などについて報告する。