著者
高瀬 幸子
出版者
日本ソーシャルワーク学会
雑誌
ソーシャルワーク学会誌 (ISSN:18843654)
巻号頁・発行日
no.24, pp.1-13, 2012-06-30

本研究の目的は,事例分析によって,ストレッサーに対して積極的に対処しようとしないタイプの高齢者の特徴を描き出し,その援助についての示唆を得ることである.事例分析の理論的枠組みにはエコロジカル視点を用い,ストレッサーとコーピングの交互作用から事例を分析した.地域包括支援センターの社会福祉士が援助している22事例のうち,コーピング特性簡易尺度において,いずれのコーピングもあまりとることがないと回答した3事例に焦点をあてて分析した.その結果,実際には回避型コーピングが多用されていることが明らかになった.一方で,能動的な行動を伴うコーピングは少なく,援助においてはソーシャルワーカーの積極的なアウトリーチの必要性が示された.このタイプの高齢者への援助は,ソーシャルワーカーに対して問題解決のための相談というコーピングがとれるように働きかけていくことが有効であることが示唆された.
著者
高瀬 幸子 合田 敏尚
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.133-138, 1990
被引用文献数
1

十二指腸粘膜膜酵素活性の誘導機構の解明を目的とし, ふ化前のふ卵14日目のニワトリ胚にヒドロコーチゾンならびにビタミンD<SUB>3</SUB>を投与して (ヒドロコーチゾンは17日目に2回目の投与) 十二指腸粘膜刷子縁の膜脂質の脂肪酸組成に及ぼす影響を観察し, 同時に膜酵素としてスクラーゼとアルカリホスファターゼ活性を測定した。これら膜酵素活性の誘導と刷子縁膜脂肪酸組成の変動との関連について比較検討した。<BR>1) ヒドロコーチゾン投与によりふ卵20日胚の十二指腸粘膜重量, 粘膜DNAおよび粘膜刷子縁の膜タンパク質量が増大したが, DNA当りのタンパク質量は増加せず対照群と同じであった。ビタミンD<SUB>3</SUB>投与ではそのような効果はみられなかった。<BR>2) 十二指腸刷子縁膜脂質の脂肪酸組成は, ヒドロコーチゾンならびにビタミンD<SUB>3</SUB>投与のいずれの場合にも18: 2 (ω6) と20: 4 (ω6) のω6系の長鎖多価不飽和脂肪酸が著明に増加した。<BR>3) ヒドロコーチゾンの投与により, スクラーゼ活性とアルカリホスファターゼ活性が増大した。ビタミンD3投与によりアルカリホスファターゼ活性が増大したが, スクラーゼ活性の誘導は起こらなかった。
著者
高瀬 幸子 森本 絢美 志村 二三夫 細谷 憲政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.309-317, 1975-10-15 (Released:2009-11-16)
参考文献数
10

比較的生活環境の類似している女子大生343名の対象について, 不定愁訴と食生活との関連ならびにそれらをとりまく諸要因との関連を観察した。1) よく眠れない者, あるいは睡眠時間の短い者, 長い者, 夢を多くみる者に愁訴数が多かった。また, 現在の生活に満足していない者, 生きることに対し退屈感をもつ者に愁訴数が多かった。 喫煙者や鎮静剤などを常用する者にも愁訴数は多かった。2) 欠食回数の多い者, 夕食時刻の一定でない者, さらに, 食事の不規則な者に愁訴数が多かった。 しかしながら, 目的があって欠食している者には, そのような傾向は比較的みられなかった。3) 食事摂取の規則性とこれに関連する睡眠, 生活状態, 居住条件などとの相互関連について考察した。 これらの諸要因は, 食事の不規則性との関連を示しながら不定愁訴の発現とも関連していた。以上の結果から, 目的意識をもって規則的な日常生活ならびに食生活をおくるものには愁訴は少なかった。
著者
合田 敏尚 高瀬 幸子 大石 邦枝 蒔田 和子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.235-241, 1993 (Released:2010-04-30)
参考文献数
6

静岡県内の都市及び都市近郊に住む幼児から高齢者 (3~69歳) の1,395人を対象に, 牛乳飲用の習慣と牛乳に対する嗜好の加齢変化を調査し, 以下の結果を得た。1) 各年齢階層別にみた牛乳飲用量の度数分布をみると, 各年齢階層での牛乳飲用量が1日当たり“1杯以上2杯未満”の者の分布が大であった。“2杯”以上の者は中高年齢層で減少し, 逆に“0杯”の者が増加した。2) 各年齢階層別にみた牛乳嗜好度 (5段階評価) の分布に特色がみられ, 牛乳の“好き”な者は若い年齢層に多く, 中高年齢層で減少した。牛乳の“嫌い”な者は中高年齢層で増加し, 50歳代では20歳代の約2倍に増加した。3) 牛乳不耐症の経験者と思われる者は, 20歳未満の年齢では少ない (5~6%) が, 20歳代から増加し始め, 30歳代以上では約1/4の者がその経験者と思われた。4) 総体的に, 加齢に伴う1日当たりの牛乳摂取量の減少と牛乳に対する嗜好度 (5段階評価) の低下が, 男女ともに観察された。成人層では年齢と牛乳摂取量との間に負の相関がみられ, 女性の場合にはその傾向が顕著であった (p<0.001)。それらの減少傾向の過程では女性の場合に特色がみられ, 20歳代後半と50歳代に牛乳摂取量及び嗜好度の上昇ピークが観察され, 前者は妊娠・授乳のための, 後者は閉経後の骨粗鬆症予防のためのそれらピークの出現と思われた。