著者
牟 安峰 平 明日香 松尾 恵太郎 高田 穣
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.547-553, 2021 (Released:2021-07-03)
参考文献数
11

細胞バンクに保存されていた日本人再生不良性貧血患者サンプルのエクソーム解析を発端に,新たな遺伝性骨髄不全症候群が同定された。本疾患は,もともと姉妹染色分体交換(SCE)が高頻度に認められることから新規疾患として認識されていたが,次世代シーケンサーという新技術開発によって原因遺伝子同定がなされたものである。ADH5とALDH2の2つのアルデヒド代謝酵素の同時欠損により,骨髄における血球分化に伴う内因性ホルムアルデヒドが分解されずDNA修復不能なレベルのゲノム損傷を引き起こし,骨髄不全とMDS白血病発症に至ると考えられる。本稿では,この疾患の存在が広く認知されるよう,日本の血液分野の臨床家にむけて,この疾患発見にいたる経緯と現在判明している特徴,その病態を概説する。
著者
木浦 勝行 瀧川 奈義夫 市原 英基 中村 栄三 吉野 正 高田 穣
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

健常雄性 Slc: Wistar ラット 10 匹に鉄およびキレート剤を腹腔内へ反復投与し,5 匹で悪性腹膜中皮腫を認めたが,コントロール群,キレート剤投与群では認めなった。免疫染色(Calretinin, CEA 染色),電子顕微鏡による観察を行い,いずれも上皮型中皮腫であることを確認した。また,DNA 酸化損傷マーカーである 8-hydroxy-2-deoxyguanosine による免疫染色は陽性であり,従来の学説は確認された。ラジウムを含む微量元素を最終解析中である。
著者
境 昭二 高田 穣 中川 良二 川田 芳雄
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.26-30, 1985-02-05 (Released:2017-06-28)

1)オキサミドは,pH10以上のアルカリ域で加水分解され,オキサミン酸を経てシュウ酸を生成する.酸性域ではpH1以下でなければ加水分解されない.2)オキサミド分解菌富化土壌の水抽出によって調製したオキサミド分解活性を有する溶液(以下,オキサミド活性溶液と略す)は,フッ化アンモニウムによる滅菌処理,あるいはメンブレンフィルターによる除菌処理によってその活性を失う.3)1)および2)から,土壌中におけるオキサミドの分解は,微生物作用によるものと考えられる.4)^<14>Cで標識したオキサミドをオキサミド活性溶液中で分解させると,オキサミド態炭素はすべて二酸化炭素として回収される.また,分解途中にオキサミン酸とシュウ酸が一時的に検出され,ギ酸は検出されない.5)オキサミド活性溶液中でシュウ酸はオキサミドより分解が速いが,オキサミン酸はオキサミドとあまり変わらない.したがって,オキサミン酸およびシュウ酸の集積がわずかにしか認められないのは,オキサミン酸とシュウ酸が少なくともオキサミドよりも遅くない分解速度を示すためであると考えられる.6)4)および5)から,オキサミン酸およびシュウ酸を通らないオキサミドの分解経路の存否については不明であるが,大部分は次の反応式のように,まず加水分解によって脱アミド化され,順次オキサミン酸とシュウ酸を生成し,シュウ酸はさらに酸化されて二酸化炭素になる経路をたどるものと考えられる.[chemical formula]