著者
早川 和一・鳥羽 陽・亀田 貴之 鈴木 信雄
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.85-92, 2011-04-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
15

今から14 年前の冬,日本海でタンカーが沈没し,流出したC-重油が日本海側沿岸に大量に漂着した.それまで原油の回収に効果を発揮した手法や機材も,原油より遥かに粘度が高いC-重油には殆ど機能せず,回収は人力作業に頼った.漂着した油は,岩や礫・石の海岸,特に手前に岩礁を有する遮蔽海岸に長期残存する傾向があった.C-重油に含まれる多環芳香族炭化水素類を指標にして,油の異同識別や汚染状況の把握が行われた.C-重油で汚染した海水を清浄海水に混ぜてヒラメの卵を飼育したところ,孵化した稚魚に脊柱彎曲が現れた.酵母two-hybrid 法を適用して調べた結果,水酸化多環芳香族炭化水素の中に強い攪乱作用を有する化合物があり,さらに構造活性相関があることがわかった.また,最近,日本海の多環芳香族炭化水素類の汚染の現状調査を開始した.
著者
鳥羽 陽 本間 千春 宇於崎 和香 Thanyarat CHUESAARD 唐 寧 早川 和一
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.23-29, 2014-01-05 (Released:2014-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
2

A high-performance liquid chromatographic (HPLC) method with fluorescence detection was developed for the quantification of polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in cigarette mainstream and sidestream smoke particulates. Fifteen kinds of PAHs classified as priority pollutants by the US EPA were quantified with six perdeuterated PAHs as internal standards. The smoke filter samples obtained from 3 brands of cigarettes using standardized smoking conditions were extracted with dichloromethane, and then treated with tandem solid phase extraction cartridges (Silica and Neutral Alumina). The limits of detection ranged from 0.24 to 2.2 pg, and were more sensitive than those by GC-MS. The analytes were quantified by using the internal standards, and the developed method achieved sufficient reproducibility and accuracy. The PAH levels in mainstream and sidestream smoke from 3 cigarette brands were in the range of 0.2 – 305 ng cigarette−1 and 26.4 – 6160 ng cigarette−1, respectively. The total PAH content in sidestream smoke was more than 10 times higher compared with that of mainstream smoke. This method should be useful as an optional analytical method to quantify PAHs in cigarette smoke particulates.
著者
中澤 章 唐 寧 井上 嘉則 上茶谷 若 加藤 敏文 齊藤 満 小原 健嗣 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.69-74, 2017

<p>著者らが開発した繊維状吸着材(DAM不織布)は,両性イオン型高分子であるジアリルアミン‐マレイン酸共重合体(diallylamine-maleic acid copolymer: DAM)を含有し,繊維表面に水和層を形成する.本研究では,悪臭物質の一つである半揮発性有機酸(C1-C5)を対象に水溶液だけでなくガス状でもDAM不織布の吸着特性評価を行った.まず,水溶液中のギ酸はDAM不織布の水和層へ溶解した後,DAMのイミノ基との静電相互作用で吸着することがわかった.一方ガス状では,ギ酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,イソ吉草酸について高い吸着能を有し,吸着量は曝露時間に依存して増加する傾向があった.ガス状有機酸に対する吸着も水溶液と同様の機序で生じていると考えられるが,さらに酢酸を除く有機酸の吸着速度定数と空気 / 水分配係数(log <i>K<sub>aw</sub></i>)が良好な相関性を有したことから,DAM不織布は大気中から不織布表面に形成される水和層へ移行性が高い親水性化合物に対するほど高い選択性をもつことが示された.</p>
著者
鈴木 元気 森川 多津子 柏倉 桐子 唐 寧 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.117-122, 2015-03-10 (Released:2015-09-03)
参考文献数
20

首都圏3地点(野毛、九段、つくば)において、野毛および九段では2006~2013年まで、つくばでは2010~2013年までの夏と冬の大気粉塵を捕集し、多環芳香族炭化水素 (PAH) 9種類およびニトロ多環芳香族炭化水素 (NPAH) 3種類をそれぞれHPLC-蛍光検出法、HPLC-化学発光検出法で測定し、その濃度の変遷を明らかにした。PAH濃度は野毛、九段で2006年から2008年の間の冬に低下傾向が認められた。NPAH濃度は、野毛では2006年から2011年の間の夏と冬、九段では2007年から2009年の間の夏および2006年から2011年の間の冬に低下傾向が認められた。つくばでは観測期間が2010年から2013年と短く、PAHとNPAHのいずれについても明確な変動傾向は認められなかった。また野毛および九段で[1-NP]/[Pyr]値の低下が確認され、PAH、NPAH濃度低下の要因の一つとして自動車排ガス規制による粉塵およびNOx排出量の減少が考えられた。
著者
亀田 貴之 早川 和一 鳥羽 陽 唐 寧
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更にそれらによる生体影響の実態解明を試みた。