著者
大竹 文雄 加藤 大貴 重岡 伶奈 吉内 一浩 樋田 紫子 黒澤 彩子 福田 隆浩
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.32-52, 2020-08-25 (Released:2020-08-25)
参考文献数
6

本論文では,骨髄バンク登録者のうち移植患者との適合通知を受け取った人へのアンケート調査と大阪大学の一般の人へのアンケート調査を用いて,骨髄バンク登録者,幹細胞提供者と一般の人との特性の違いの有無を検証した.主な結果は,つぎの通りである.第一に,骨髄バンクに登録する人や幹細胞を提供する人は一般の人と比べると,利他的で,時間割引率が低く,リスク許容度が高い.第二に,定期的献血者や臓器提供の意思表示者は幹細胞提供確率が高い.第三に,有給ドナー休暇や有給休暇が取りやすい環境で,幹細胞提供確率が高い.第四に,同調性が高い人は骨髄バンクに登録する可能性が高いが,幹細胞提供の依頼があった際に提供をしない傾向にある.第五に,登録者と提供者の時間割引率と現在バイアスは阪大サンプルと比較して低いが,現在バイアスを含む時間割引率が高い人が幹細胞を提供する確率が高い.
著者
黒澤 彩 柴田 愛 石井 香織 澤田 亨 樋口 満 岡 浩一朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.5-19, 2019-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
52
被引用文献数
1

目的:座位行動や身体活動の日内パターンの解明を主目的とした研究についてシステマティックレビューを行い,これまでの知見を整理し,今後の課題を明らかにすることを目的とした。方法:5つの文献データベースで検索した論文について,採択基準(成人,時間帯別の座位行動または身体活動に関する内容を含むなど)を基に該当論文を選定し,1)座位行動および身体活動の日内パターンの分布・傾向,2)座位行動および身体活動の日内パターンに関連する要因,3)座位行動および身体活動の日内パターンと健康アウトカムの関連という3つの観点から整理した。結果:採択論文27編のうち,2015年以降欧米や豪州の高齢者層を中心に,加速度計法で評価した座位行動や身体活動を1時間ごと,あるいは1日を3つに区分して検討した研究が主流であった。分布・傾向を検討した12編の主な傾向として,日内の遅い時間帯で座位行動レベルの上昇と身体活動レベルの低下がみられた。また,関連要因を検討した21編の多くで,性別や年齢,肥満度と座位行動や身体活動パターンに関連がみられた。健康アウトカムとの関連を検討した研究は1編のみであった。結論:座位行動や身体活動の日内パターンを検討した論文は少なく,対象者の居住地域や年齢,扱われた関連要因や健康アウトカムに偏りがあった。 セグメント化した介入のため,今後は対象者の特性別,特に我が国の壮年・中年層を含めた研究成果の蓄積が必要である。
著者
平川 経晃 小寺 良尚 福田 隆浩 公益財団法人日本骨髄バンク 黒澤 彩子 田島 絹子 山崎 裕介 池田 奈未 小島 裕人 田中 秀則 金森 平和 宮村 耕一
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.153-160, 2018

<p>骨髄バンクコーディネートにおける実情把握を目的として,2004年1月~2013年12月に日本骨髄バンクへ登録された患者18,487人,ドナー延べ223,842件の解析を行った。末梢血幹細胞移植例は除外した。移植到達患者あたりのコーディネート件数の中央値は11件,登録から移植までの日数中央値は146日,登録患者の40%が移植未到達であった。HLA6/6抗原フルマッチドナー推定人数が多い場合に,移植到達率が上昇し,移植到達日数が短縮した。ドナー側のコーディネート終了理由は年齢・性別で異なり,20代男性ドナーは健康理由による終了率が低く,ドナー都合による終了率が高かった。複数回コーディネートを受けたドナーのうち,前回の終了理由が患者理由の場合,ドナー理由で終了した場合と比較して採取到達率が高かった。本結果を基盤情報として,より効率的で迅速なコーディネートを目指した施策の検討が必要であると考えられた。</p>
著者
黒澤 彩子 田島 絹子 遠峰 良美 吉内 一浩 福田 隆浩 公益財団法人日本骨髄バンク
出版者
一般社団法人 日本造血細胞移植学会
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.60-69, 2019
被引用文献数
1

<p> 骨髄バンクコーディネート終了時のアンケート調査より,幹細胞提供行動と,ドナーの心理社会的要因の関連を検討した。対象は健康理由または患者側の理由による終了例を除外したドナーとし,2017年4月~5月を調査期間として870人にアンケートを発送,385人より回答を得た(終了群315人,提供群70人)。ロジスティック回帰では,本人の協力度が非常に高いこと,不安が少ないこと,職場・家族の調整や説得が難しくないことが,幹細胞提供に至りやすい有意な要因であった。献血回数11回以上であることは,単変量解析にてオッズ比2.5を示した。雇用状態にあるドナーの検討では,年休のとりやすさが幹細胞提供に至りやすい有意な要因であった。終了群における提供できなかった理由は "仕事への影響" が43%,"家族の反対" 21%,"家庭生活への影響" 15%,"リスク・不安・怖さ" 11%であった。本調査から,幹細胞提供に関連する要因として,ドナー本人の協力度や職場・家庭生活の調整などが抽出された。今後,より詳細な大規模調査により,ドナーの心理社会的要因と,幹細胞提供行動の関連を検討し,具体的な施策につなげたい。</p>