著者
松野 研司
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.510-514, 2021 (Released:2021-06-01)
参考文献数
10

筆者は製薬会社で研究・薬事職に従事した後、縁あって大学教員となった。現職では、メディシナルケミストリーをコアとした創薬関連授業と研究を実施している。企業時代とは異なり同一組織内では研究が完結しないため共同研究が必須であるし、標的分子の設定にも難儀することが多い。また企業時代のような完成した研究者とは違い、学生に研究を進めてもらうことになる。このような環境の下で取り組んできた研究成果および非薬学部における創薬関連教育について言及する。
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.96-97, 2022 (Released:2022-02-01)

表紙の説明:58巻偶数号表紙では,日本の医薬品産業発祥の地と言われる大阪市中央区道修町にある神社と医薬品に関する展示施設を紹介する.今月号ではCOVID-19の収束を願い,日本の薬の神様を祭る「少彦名神社」と「病除の御守り(くすりの道修町資料館提供)」を取り上げる.コレラ流行の際,漢方薬の虎頭骨等を配合した丸薬「虎頭殺鬼雄黄圓」に効き目があったことから,張子の虎が病除の御守りとなった.
著者
山田 智之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.861, 2021

2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行が続いている(2021年4月現在).<br>このような背景のなか,COVID-19に対するワクチンが開発され(COVID-19ワクチン),各国で接種が進められている.これまでワクチンは,生ワクチンや不活化ワクチン等が認可されてきたが,COVID-19ではmRNAワクチンやウイルスベクターワクチン等の遺伝子を用いたワクチンを中心に開発が進められてきている.<br>例えば,mRNAワクチンとは,新型コロナウイルスのスパイクタンパク質をコードするmRNAを,体内での分解を防ぐために脂質ナノ粒子で包みカプセル化したものである.ワクチン投与後はヒト細胞中に取り込まれたmRNAを鋳型としてスパイクタンパク質が生成され,免疫応答が誘導される.これらのワクチンは既存の生ワクチンや不活化ワクチンと異なりウイルス培養を必要としないため,従来型のワクチンと比較して迅速な開発と実用化が可能であり,2020年1月にゲノム配列が報告されてから1年足らずで実用化に至った.本稿では,Badenらが報告した2021年5月現在,モデルナと武田薬品工業が我が国で承認申請中のmRNAワクチンであるmRNA-1273の臨床試験結果を紹介する(注:本ワクチンは2021年5月21日に厚生労働省から特例承認を取得し,すでに接種が開始されている).<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Polack F. P. <i>et al</i>., <i>N</i>. <i>Engl</i>. <i>J</i>. <i>Med</i>., <b>383</b>, 2603-2615(2020).<br>2) Baden L. R. <i>et al</i>., <i>N</i>. <i>Engl</i>. <i>J</i>. <i>Med</i>., <b>384</b>, 403-416(2021).<br>3) Seki Y. <i>et al</i>., <i>J</i>. <i>Infect</i>. <i>Chemother</i>., <b>23</b>, 615-620(2017).<br>4) Dagan N. <i>et al</i>., <i>N</i>. <i>Engl</i>. <i>J</i>. <i>Med</i>., <b>384</b>, 1412-1423(2021).
著者
菅原 英輝
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.786_1, 2020

新型コロナウイルスによるパンデミックの先行きが見えず人々の不安が絶えない大きな理由の1つとして、現時点では有効な治療薬が無いことが挙げられる。5月7日、抗エボラ出血熱薬であるレムデシビルが我が国初の新型コロナウイルス感染症治療薬として特例承認された。今回の治療薬の開発および臨床使用における薬学関係者の活躍が人々の不安を解消し、さらにはパンデミックの終息に向けて大きな役割を担うことを期待したい。
著者
西原 正和
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.412, 2021

COVID-19は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症で,2019年12月に中国湖北省武漢市で確認されて以降,世界中に拡大した.今やパンデミックに至ったCOVID-19に対抗するため,各国では治療薬候補の選定やワクチンの開発を喫緊の課題として推し進めている.日本でも,レムデシビルがCOVID-19の重症患者を対象とした治療薬として特例承認され,天然物から開発された駆虫薬・イベルメクチンについても,COVID-19治療薬としての臨床試験が行われている.一般的にウイルス感染症の治療では,相乗効果を得るため異なる標的を持つ抗ウイルス剤を組み合わせる.本稿では,ベルベリンやレムデシビルを含む9種の化合物について,SARS-CoV-2に対する単剤および併用での効果を評価したPizzornoらの報告を紹介したい.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Pizzorno A. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Antiviral</i> <i>Res</i>., <b>181</b>, 104878(2020).<br>2) Wu Y. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Chin</i>. <i>J</i>. <i>Integr</i>. <i>Med</i>., <b>17</b>, 444-452(2011).<br>3) Ianevski A. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Bioinformatics</i>, <b>33</b>, 2413-2415(2017).
著者
秋元 浩
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.459, 2014

森田さんに最初にお目にかかったのは,昭和47年にポスドク第1号として武田薬品工業に入社した時である.当時,森田さんは化学研究所第一研究部長であったかと記憶しているが,それよりもどこの貴公子かと見間違うばかりに痩身長軀のスタイルがとてもカッコ良かったとの印象が強い.きっと,森田さんの出自の良さがその当時からにじみ出ていたのであろう.
著者
加藤 文子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.251, 2014 (Released:2016-04-19)
参考文献数
3

一般用医薬品(OTC薬)の副作用は年間250症例前後報告されている.中でも総合感冒剤,解熱鎮痛消炎剤が上位を占め,アナフィラキシーショック,肝機能障害,スティーブンス・ジョンソン症候群等の重篤な症例や死亡に至る症例も報告されている.今回,OTC薬の総合感冒剤や解熱鎮痛消炎剤にも用いられている非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)により,血管や上部消化管合併症リスクが増加する結果を示した報告について紹介したい.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No. 293, Aug. (2012).2) Coxib and traditional NSAID Trialists' (CNT) Collaboration, Lancet, 382, 769-779 (2013).3) U.S. Food and Drug Administration, news release, Aug. (2013).
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.288-289, 2020

ミニ特集:乾癬治療の最前線<br>ミニ特集にあたって:乾癬は,慢性炎症性の皮膚疾患であり,皮膚の細胞が異常に増殖することでかゆみ,爪の変形,関節炎等様々な症状が発現する.また,乾癬という病名や見た目から"感染する"とよく誤解されるが,うつることはなく,遺伝的素因に様々な環境因子(不規則な生活や食事,ストレス,肥満,感染症,特殊な薬剤など)が原因であると言われている.これまで乾癬の治療には,外用療法,光線(紫外線)療法,内服療法が行われていたが,近年生物学的製剤による注射治療が開発され,患者QOLの向上に大きく貢献している.本稿では,乾癬の臨床や研究に携わっている先生方にご執筆いただくことにより,今後の乾癬治療や啓発活動について考えていきたい.<br>表紙の説明:いよいよ新学期.大学には新入生が,職場には新人が入ってくる.受験時には,天神さん(天満宮)に合格祈願した読者も多いのではないだろうか.天満宮に祀られている菅原道真は,梅をこよなく愛し,大宰府に左遷させられた道真を慕って京から梅の木が飛んできたとの伝承がある(飛梅伝説).そんなことから,梅鉢紋が三階松紋と並んで天満宮の神紋になっているらしい.電子付録では,波乱万丈の道真の生涯,梅の花,梅にまつわる文化,さらには梅の家紋と著名人を紹介したい.
著者
牧野 健一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1166, 2018

「ひらめき」は,突然かつ瞬間的になされる学習であり,心理学においては洞察学習と呼ばれる学習機構である.らに,洞察学習の特徴として,学習の成立に伴った快と驚きの情動反応,すなわち「アハ体験」(Aha! moment)が生じることが知られている.<br>近年では,洞察学習時における脳活動に関して,主にヒトfMRIを用いた研究が行われている.現在までに,洞察学習に付随した前帯状皮質や海馬などの脳領域の活動上昇が報告されている.しかしながら,洞察学習時における脳活動は,特に皮質下領域の活動性に関しては,未だ十分に明らかとなってはいない.本稿では,7Teslaの超高磁場fMRI(7 T fMRI)を用いることで,アハ体験と相関したドパミン神経系の活動を捉えることに成功した知見を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Köhler W., "The mentality of apes", Routledge & Kegan Paul, London(1925).<br>2) Topolinski S., Reber R., <i>Curr</i>. <i>Dir</i>. <i>Psychol</i>. <i>Sci</i>., <b>19</b>, 402-405(2010).<br>3) Luo J., Niki K., <i>Hippocampus</i>, <b>13</b>, 316-323(2003).<br>4) Aziz-Zadeh L. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Hum</i>. <i>Brain</i> <i>Mapp</i>., <b>30</b>, 908-916(2009).<br>5) Tik M. <i>et</i> <i>al</i>., <i>Hum</i>. <i>Brain</i> <i>Mapp</i>., in press.
著者
栗原 堅三
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.95-98, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
7

私が北大薬学部に在籍していた頃,研究室の共通テーマは神経と感覚であった.教室員はこの範囲で,各自が独自の好きな研究を行っており,それなりの成果を挙げていた.教授はお金を持ってきて,教室員には自由に研究させると言えばかっこいいが,要は研究室をあげて1つのテーマで統一した研究をやらせるだけの実力と指導力がなかったのに過ぎない.そんな中で,ここに取り上げる「うま味」は,私が大学院の学生諸君と一緒にやった研究である.うま味が世界のUMAMIになるまでには,私以外の多くの優れた研究者が貢献してきたが,ここでは私たちの研究を中心に話を進めさせていただきたい.うま味物質は,グルタミン酸(コンブ),イノシン酸(カツオブシ),グアニル酸(干しシイタケ)の3者である.実はそれぞれの単体のうま味はそれほど強くないが,グルタミン酸とイノシン酸またはグアニル酸を混合すると,大きな相乗作用が働き,5倍も6倍もうま味が強くなる.ところで,コンブの「だし」には,グルタミン酸とアスパラギン酸(グルタミン酸より弱いがうま味を持っている)が圧倒的に多く,他のアミノ酸はごく微量しか含まれていない.コンブ「だし」は純粋なうま味溶液と言える.また母乳にはグルタミン酸が含まれているが,その含量は突出しており,なんとコンブ「だし」のそれとほぼ同程度である.
著者
高橋 秀依
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.297-300, 2017 (Released:2017-04-01)
参考文献数
4

医薬品の一般名に含まれるステムは、医薬品を体系的に理解するために重要である。本稿では、ステムの具体的な活用の仕方についてSGLT2阻害剤のステムを例にあげて解説し、その他の汎用されるステムや最近の生物製剤のステムについてまとめた。ステムを活用することで医薬品の理解が深まることが期待される。