- 著者
-
栗原 堅三
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.2, pp.95-98, 2015 (Released:2018-08-26)
- 参考文献数
- 7
私が北大薬学部に在籍していた頃,研究室の共通テーマは神経と感覚であった.教室員はこの範囲で,各自が独自の好きな研究を行っており,それなりの成果を挙げていた.教授はお金を持ってきて,教室員には自由に研究させると言えばかっこいいが,要は研究室をあげて1つのテーマで統一した研究をやらせるだけの実力と指導力がなかったのに過ぎない.そんな中で,ここに取り上げる「うま味」は,私が大学院の学生諸君と一緒にやった研究である.うま味が世界のUMAMIになるまでには,私以外の多くの優れた研究者が貢献してきたが,ここでは私たちの研究を中心に話を進めさせていただきたい.うま味物質は,グルタミン酸(コンブ),イノシン酸(カツオブシ),グアニル酸(干しシイタケ)の3者である.実はそれぞれの単体のうま味はそれほど強くないが,グルタミン酸とイノシン酸またはグアニル酸を混合すると,大きな相乗作用が働き,5倍も6倍もうま味が強くなる.ところで,コンブの「だし」には,グルタミン酸とアスパラギン酸(グルタミン酸より弱いがうま味を持っている)が圧倒的に多く,他のアミノ酸はごく微量しか含まれていない.コンブ「だし」は純粋なうま味溶液と言える.また母乳にはグルタミン酸が含まれているが,その含量は突出しており,なんとコンブ「だし」のそれとほぼ同程度である.