著者
白楽 ロックビル 福田 沙織 堀田 のぞみ
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.11-29, 2008 (Released:2008-04-01)
参考文献数
15

科学研究者の不祥事を実証的に研究する基盤として,日本の最近21年間(1987年~2007年)の「研究者事件データベース」を構築中である。そのデータベースに基づく分析を試み,改善策を提言する。まず,「研究者の不祥事」は「行為」→「漏えい」→「報道」→「確立」の4段階を経ることを明確にした。その過程で,マスメディアは重要な役割を果たしている。また,不祥事をなくすための政府,学協会の対策はおざなりに思えるが,根本的には,日本の科学者の閉鎖的価値観,形式に終始する行政,権力にすり寄る御用学者,などの旧弊な構造と文化風土を改善しなくてはならない。突破口の例として,各大学の理工系学部に科学技術文化学研究室を設置する提言にまとめた。科学研究者の現場の声を政策に生かす仕組みが必要である。
著者
近道 暁郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.608-618, 2003 (Released:2003-12-01)

品種保護制度は,植物の新品種の育成者に対して,育成者権という知的財産権を与える制度である。その目的は,新品種の育成を奨励し,農林水産業の発展に寄与することにある。近時,出願・登録件数が順調に増加するなど業界において制度の利活用が図られている。また,税関での輸入差止めが可能となるなどの法改正が行われるなど,品種保護制度に対する国内の注目は高まっている。そこで,制度の沿革や法制などについて報告するとともに,育成者権侵害などの状況やそれに対する対処等の近時の動き,今後の課題についても分析,報告を行う。
著者
牧田 泰一 藤原 匡晃
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.798-808, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)

福井県は,誰もが自由に使えるオープンデータの活用推進を県内全域で行っている。県内全市町の内容・様式を統一したデータを都道府県として初めて公開し,機械判別に適した様式でデータを公開することで,二次利用を推進している。そして,データを公開するだけでなく,アプリコンテストや普及活動等を行っており,オープンデータを活用したアプリケーション開発数は全国トップクラスである。また,福井県鯖江市は日本で初めてオープンデータに取り組んだ先進自治体であり,オープンデータによる行政の透明化,市民参加,そして官民の連携を進めている。こうした福井県の取り組みと,鯖江市の注目すべき先進事例を紹介する。
著者
駒田 致和 高雄 啓三 中西 和男 宮川 剛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.69-76, 2009 (Released:2009-05-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1 4

近年の分子生物学などの飛躍的な発展の一因として,複雑な実験手技についての明確なプロトコルが確立されていることが挙げられる。しかし,テキスト形式のプロトコルでは伝達できる情報量が限られており,実験系の確立に手間や時間がかかることが多い。そこで注目を集めているのがオンラインビデオジャーナルのJoVE(Journal of Visualized Experiments)である。実験プロトコルや実験の結果についてのより多くの情報を,動画を用いて科学コミュニティー全体で共有するというJoVEの取り組みや今後の展開を紹介する。
著者
山口 栄一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.462-470, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
妹尾 堅一郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.389-397, 2008 (Released:2008-09-01)
参考文献数
3

「研究ノート」は,本来,研究における実験等に関わる“知的情報”の記録・管理媒体である。これは「リサーチツール」あるいは「ラボマネジメントツール」といった知的財産の「創出」に資するものとして意味づけられる。しかし,その一方で近年,“知的財産”の記録・管理媒体としても位置づけられるようになった。すなわち,「リーガルリスク対応ツール」としての意味が急速に高まっているのである。研究ノートの意味が異なれば,使用目的や使用法も異なってくるばかりでなく,普及啓発のやり方もこれまた異なってくるだろう。本論では,大学における研究ノートの意識実態と,研究ノートの意味の多様化について紹介する。
著者
田嶋 一夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.554-567, 1983 (Released:2012-09-28)
参考文献数
20

日本語によるデータの世界が, ほぼ無限の文字から形成されることから, 可動性のある文字セット (オープンキャラクタセット) が必要になることを論証した。またこの問題点として, 漢字における異体字の問題があることを明らかにし, これがコード化法では解決不可能であることを分析した。その上で国家的規模における文字セットコントロールシステムの必要性を提案した。また異体字取り扱い法の一つとして“漢字シソーラス”の必要性を述べた。さらに, 文字セットコントロールシステムの実現方法について考察した。
著者
田中 浩也 齋藤 和行 守矢 拓海
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.403-411, 2017-09-01 (Released:2017-09-01)
参考文献数
2

3Dプリンターは「(モノづくりのための)製造技術」として,材料工学,機械工学,制御工学などの分野で研究が盛んであるが,デジタルデータからものをつくる技術であるから,当然,情報学とも不可分である。筆者らは,文部科学省COI (Center of Innovation)「感性とデジタル製造を直結し,生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点(中核拠点:慶應義塾大学)」を通して,3Dプリンターの先進的な技術開発を進めている。今回は,その中でも情報学的な研究課題といえるトピックを3点に整理し,それぞれについてどのような技術を開発しているかを報告する。また,近年話題のAI(人工知能)技術との連携の可能性についても議論する。
著者
松澤 孝明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.481-492, 2017-10-01 (Released:2017-10-01)
参考文献数
12

研究倫理教育には,研究者の職制を考慮した研究倫理教育だけでなく,「場」の教育や再教育が必要である。まず,研究実施者に対する研究倫理教育(第1段階)に加え,研究指導者・管理者に対する研究倫理教育(第2段階)や,研究機関の研究倫理教育の責任を担う「研究倫理教育責任者」を継続的・組織的に育成するための教育(第3段階)が必要である。研究者のライフサイクルにはいくつかの転換点があり,各段階で必要となる教育は前もって行われる必要がある。他方,研究を実施する側だけでなく研究を取り巻く「場」の教育(第4段階)も,研究倫理教育の重要な使命である。研究倫理は公正な研究活動の奨励・推進の役割があり,公正な研究活動の保障や研究者の人権への配慮が必要である。「証拠の優越」原則や,不正行為としての「研究妨害」,「研究不正事案の取り扱い」に関するガイドライン等について正しく理解し,研究不正の申し立て等の乱用を防止し,安心して研究活動に取り組める環境を整備することも重要である。また,研究不正の程度を考慮し,研究者に再教育による復帰の機会を与えることも研究倫理教育の重要な役割である(第5段階)。研究倫理教育の機能や教育対象を整理(研究倫理教育の類型学)し,系統的・体系的な教育システムを整備することが求められている。