著者
安藤 實 石栗 太 横田 信三 吉澤 伸夫
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 = Wood preservation (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.208-215, 2001-09-25

本研究では,スギ丸太を材温80℃,40時間で燻煙熱処理を行い,壁孔壁の破壊率を測定した。また熱処理後,市販の難燃剤で減圧注入処理し,重量増加率を求め,薬剤の浸透性を評価した。さらに,作製した難燃材の難燃性及び材質特性を評価した。燻煙熱処理により,破壊された壁孔壁の割合は,心,辺材ともに増加した。減圧注入処理による重量増加率は,燻煙熱処理心材において大幅に増加する傾向が認められた。燃焼試験後の重量残存率は,減圧注入時の減圧度の増加と共に増加した。また,曲げ強さについては,薬剤注入による大幅な変化は認められなかったが,曲げヤング率は,重量増加率の増加にともなって増加する傾向が認められた。
著者
酒井 温子 岩本 頼子 中村 嘉明
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 = Wood preservation (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.165-169, 2001-07-25
被引用文献数
4 2

奈良県森林技術センター明日香実験林において実施している野外杭試験の中で,重金属を含まない木材保存薬剤を加圧注入した杭の被害経過について報告する。杭試験体は,30×30×600mmのスギ辺材とした。無処理杭の耐用年数は地際部で1.5年,頂部で3.5年であった。<BR>これに対して,IPBCの吸収量が約1.5kg/m3以上の杭では,地際部,頂部とも9年以上の耐用年数が期待できた。また,IF-1000やフッ素系薬剤で処理した杭については,今回検討した濃度範囲では,耐用年数は地際部で4~7年,頂部で6~10年で短かった。<BR>169<BR>3.4アルキルアンモニウム化合物(AAC)処理杭との比較<BR>針葉樹の構造用製材の日本農林規格(1994年改正)で認定されている木材保存薬剤の中で,重金属を含まない薬剤には,アルキルアンモニウム化合物(AAC)がある。そこで,以下にAAC処理杭とIPBC処理杭の耐用年数や被害経過を比較する。<BR>すでに報告したように3),AAC処理杭では,地際部の耐用年数は,吸収量が4.5~9kg/m3で6~9年,9kg/m3以上で9~10年であった。また,頂部は試験期間が10年あるいは13年では耐用年数に達しなかった。8年経過時で吸収量が4.5~9kg/m3で被害度は1~1.5,9kg/m3以上で0.5~1であった。<BR>一方,IPBC処理杭については,3.1で述べたように,IPBCの吸収量が1.5kg/m3以上ならば地際部の耐用年数は9年以上が期待できる。IPBC処理杭は,AAC処理杭と同等もしくは今後の被害経過によってはそれ以上の耐用年数を有するといえる。<BR>しかし,頂部についてはIPBCの吸収量が1.5kg/m3以上であっても,8年経過時ですでに被害度は1.5~2.5で,AAC処理【引用文献】<BR>1) 酒井温子, 岩本頼子, 中村嘉明:木材保存,27(3), 114-120 (2001)<BR>2) 中村嘉明:材料, 359,929-934 (1983)<BR>3) 酒井温子, 岩本頼子, 中村嘉明:木材工業,56(1), 17-22 (2001)<BR>4) 酒井温子 : 奈良県森林技術センター研究報告, 30, 27-38 (2000)<BR>5) 雨宮昭二 : 林業試験場研究報告, 150, 143-156 (1963)<BR>6) 雨宮昭二, 松岡昭四郎,庄司要作, 井上衛,阿部寛, 内藤三夫 : 林業試験場研究報告, 230,105-142 (1970)
著者
野村 安宏
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.236-244, 1990
被引用文献数
4

新規木材用防かび剤の性能を明確にするため,研究室レベルの試験から野外試験等の中規模試験を経て最後に現場での実用試験(モニター)を行った。<BR>数種の単独及び混合の化合物を,種々の剤型に製剤化し,日本木材保存協会規格第2号に従って防かび性能を評価した.その結果,化合物単体を製剤化した場合には,TPICN及びTCMTBはそれぞれ乳化製剤で高い効力を示し,IPBCは可溶化製剤で高い効力を示した。また化合物を混合して製剤化した場合では,TCMTB+MBTCが乳化製剤で高い効力を示し,TCMTB+IPBCは可溶化製剤で高い効力を示した。<BR>また各種剤型について,その実用可能性を検討した結果,浸漬処理法での作業液安定性を初め,総合的な性能を満足する製剤は乳化タイプであり,本実験ではTCMTBとMBTCとの混合物を主成分とする下記の乳化タイプが実用上優れた性能を発揮した。<BR>(1)水不溶性の有機溶剤単独またはそれと水溶性の有機溶剤を組み合わせたものが,溶剤として良好なもので,界面活性剤はHLBが適合する非カチオン系のものが良い。この組み合わせで製剤化したものが,浸漬処理使用での作業液の長期繰り返し使用にも耐えうる最も優れた乳化安定性を示した。<BR>(2)上記の水不溶性溶剤を配合する乳化タイプ製剤は,水希釈(作業液)時の液性が弱酸性(pH5~7)を示すものでも極度の鉄腐食性を示さず,処理材にも変色が見られなかった。<BR>(3)乳化タイプの製剤品では,水で希釈して初めて乳化性を示す溶媒系製剤が,水系乳剤製剤より気温の変化(-20~40℃)に安定であった。またその性状は低粘度のものが,現場での水希釈時に敏速かつ均一な乳化性を示した。
著者
国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課木材利用推進室
出版者
日本木材保存協会
雑誌
木材保存 = Wood preservation (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.213-220, 2011-09-25

木材は、我が国で古来より主要建築材として利用されてきましたが、戦後は都市の不燃化等の要請から、非木造化が指向されてきた傾向があり、特に公共建築物においては、必ずしも木材の利用が推進されてこなかった実情があります。 木材利用促進法において、木材利用についてのこれまでの考え方を抜本的に変換し、国はその整備する公共建築物について、自ら率先して、可能な限り木造化、内装等の木質化を図るという方向性が明確にされました。 これを契機に、公共建築物における木材の利用を促進するとともに、日本人が古来より慣れ親しんできた「木」の良さを、より身近に国民の皆様にも感じていただけるよう、そしてそれにより木材の利用がより一層推進されるよう、官庁営繕部としても、関係機関と連携を図りながら、様々な取組を推進していきたいと考えています。