著者
佐藤 邦裕 吉田 一郎 支倉 千賀子
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-29, 1987-03-25 (Released:2009-05-22)
参考文献数
35

(1) 父島列島(父島,兄島,弟島),母島列島(母島,平島,向島)において1984年7月6~31日にシロアリ総合調査を行ったほか,'86年3月までにあわせて37日間シロアリの調査を行った。(2) 父島ではイエシロアリのほか,過去に例のないナカジマシロアリ,ヤマトシロアリの生息を確認した。また,兄島,弟島においてもイエシロアリの生息を確認した。(3) 父島における建築物調査として全戸の聞き込み調査を行った。イエシロアリの被害が甚大であり,特に古い木造家屋に激しいものがみられた。また,防除施工後も被害が起こることが多く,住民が施工に対する不信感を持っているように思えた。加えて施工コスト(本土からの運賃等によるコストの高騰)の問題があり,個人住宅の施工率は公共建築物に比べて低く,コスト低減のための何らかの対策が必要である。(4) 母島,向島ではナカジマシロアリ,ダイコクシロアリをまた,平島でナカジマシロアリを確認した。(5) 母島では野外でナカジマシロアリが,建築物ではダイコクシロアリの加害が多くみられた。(6) 母島の建築物の調査は,父島同様に全戸の聞き込み調査を行った。母島では父島に比べ,住民のシロアリに対する認識が不足しており,特に小笠原で問題となるイエシロアリ,ダイコクシロアリ,ナカジマシロアリの生態等の正確な情報を村民が得る場を作る必要がある。
著者
栗﨑 宏 藤井 義久 簗瀬 佳之 西川 智子 中野 ひとみ 瀬川 真未 清水 秀丸
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.256-263, 2015

寺社,木橋,古民家といった日本の伝統的木構造物では,擬宝珠,端隠し,根巻き,釘隠しなどと呼ばれる銅製金物が,防水の目的で施工されてきた。これら銅金物を施工した建築物では,金物の下方の木材部材の生物劣化が強く抑制されているものがある。これは,金物から溶出した銅が部材に移行し,木材保護効果を発揮したのではないかと考えられる。銅の溶出を検証するために,三条大橋高欄の銅擬宝珠付き木柱や釘隠し付き横木の表面と,橋のたもとに設置された防腐処理支柱の表面を,ハンドヘルド型蛍光X 線分析装置を用いて分析した。得られた蛍光X 線強度値から,FP 法に基づいて各元素の含有率を算出した。その結果,擬宝珠付き支柱表面では14の全測定点から銅が検出され,うち12点では防腐処理支柱表面で検出された銅含有率0.4%を上回った。今回の調査により,銅金物からは銅が溶出して周囲木材へ移行すること,また,その銅の量は木材の生物劣化抑制に十分寄与しうるレベルであることが確かめられた。
著者
鈴木 憲太郎 園部 宝積
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.154-160, 1993
被引用文献数
4

CCA廃材の埋設処分の可能性を調べるため,用途廃止はされたが腐朽の認められないCCA処理電柱廃材を土中に埋設し,近傍の土壌中のCCA構成成分である,クロム,ヒ素,銅の含有量を埋設後それぞれ6ケ月,6年経過後に測定した。埋設前のCCA処理丸太廃材の流脱性については,砒素の流脱量は4本のうち2本の丸太で他より高い値を示していた。しかし,これらの値は総理府令で定める溶出量の埋立基準の1.5mg/lよりも低い値であった。6価クロムについては丸太間の差は認められず,全て総理府令で定める溶出量の埋立基準の1.5mg/lより低い値でまた,埋設後においても,6ケ月経過,6年経過のいずれも,CCA処理丸太及びチップ周辺の土壌中の6価クロム量は,検出限界である0.05mg/lを下回った。丸太と接触させた土壌試料の場合,クロム含有量については,木口横の分析値は丸太下5-10cmの値よりもやや高い値を示したが,対照土壌の値を大きく上回らなかった。砒素含有量については,木口横の分析値は,特にNn.2とNo.4の丸太で,丸太下5-10cmの値よりも2,3倍高い値を示したが,丸太下5-10cmの値は対照土壌試料の値と同等と見なせた。銅含有量については,木口横の分析値は丸太下5-10cmの値よりもやや高い値を示したが,対照土壌試料の値を大きく上回ることはなかった。6年間の野外土壌接触試験結果では,丸太及びチップ直下の土壌中の銅,クロム,砒素の含有量は,対照土壌と考えられる同じエリア内にある非接触土壌の分析値を越える値にはないことが認められた。以上から,少なくも今回の試験規模である,CCA処理廃材を1m2の土壌にCCA処理丸太を0.15m3,同チップを0.085m3程度埋設した場合を大幅に越えない範囲でCCA廃材を土壌中に埋設した場合,土壌埋設を長期間続けたとしても,CCA廃材に起因する環境中の金属量の増加は無視し得る程度と考えられ,構成金属の流脱による土壌汚染のおそれは少ないと考えられた。
著者
森谷 友昭 金子 裕哉 新井 崇博 清水 宣寿 青木 香織 高橋 時市郎 木口 実 片岡 厚 石川 敦子 松永 正弘 小林 正彦 森田 珠生 山口 秋生
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.69-79, 2017 (Released:2017-06-03)
参考文献数
11

本論文では,暴露試験により計測された木材表面の色を基に,木材画像の色の経年変化シミュレーションを高速に行う手法を提案する。暴露試験は,約1年間計測したデータを基に木材表面の色と試験実施場所の気候の関係性を明らかにした。求められた関係性により,提案する手法は温度,雨量,日射量を入力することで任意の地点での木材表面の色変化をシミュレーションすることができる。また,提案手法は建築物の外壁に取り付けられた木材表面の色変化シミュレーションができる。建築物の3D モデルを用意し,事前に遮蔽計算を行う。遮蔽計算の結果を基に提案手法への入力である,温度,雨量,日射量を各箇所で増減させることで,例えば,地面近くの木材では降雨の跳ね返りにより色変化が速い,というように,木材の周囲環境を考慮した木材表面の色変化シミュレーションができる。
著者
廣重 亮一 曽我部 昭好 山崎 一利 高橋 信夫 井上 章二 金城 一彦
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.13-27, 2017

木質住宅の基礎構造部における配管貫通部の防蟻を目的として,非加硫ブチルゴム,EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン系ゴム)の2種のゴム基材とそれらに防蟻剤を添加したゴム基材の防蟻性を室内で検討した。また,現場での給水および排水配管2種のさや管工法における利用を想定した形状の試験体を作成し,それらの防蟻性能を野外試験で検討した。<BR>その結果,非加硫ブチルゴムは室内試験でDOT(八ホウ酸二ナトリウム四水和物)無添加で穿孔が見られたが,DOT を添加することで穿孔は抑えられ,ビフェントリン0.175%添加で穿孔はまったくみられなかった。野外試験ではDOT 無添加,添加区とも食害・貫通は見られなかった。<BR>EPDM も室内試験では非加硫ブチルゴムと同様の傾向を示したが,排水系及び給水系EPDM パッキンとも野外試験では食害は全く見られなかった。非加硫ブチルゴム,EPDMパッキン中のDOT の各試験における溶脱は僅かで,長期に有効な防蟻機能を維持可能なことが確認され,これらのゴム基材は,木質住宅の基礎構造部における配管貫通部の防蟻に充分使用できると考えた。
著者
山本 幸一 桃原 郁夫 西村 健
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.219-222, 1999-10-25 (Released:2009-05-22)
参考文献数
11

燻煙乾燥材と焼き丸太について野外での耐朽性を明らかにするため,スギ材杭試験を実施した。燻煙乾燥材の試験はつくば(茨城)で,焼き丸太の試験は高尾(東京)でそれぞれ行った。野外杭試験の結果,燻煙乾燥材と焼き丸太の野外での耐用年数は2年程度であり,無処理材とほぼ同等であった。燻煙乾燥材及び焼き丸太を野外で使用する際,十分な防腐効力を期待することはできない。
著者
石野 信之
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 = Wood preservation (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.159-162, 1996-05-25

第46回日本木材学会が平成8年4月3日~5日の3日間熊本大学教養部を会場に開催されました。大会期間中は寒の戻りで少々肌寒さを覚えましたが何とか天候に恵まれ,キャンパスの満開に咲く桜のもと,約600件の研究発表・討議がなされました。
著者
長野 行紘 白石 徹治 村上 正人 小寺 学 DRYSDALE Jeanette
出版者
JAPAN WOOD PRESERVING ASSOCIATION
雑誌
木材保存 = Wood preservation (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.82-95, 1996-03-25
被引用文献数
3

The purposes of this report were to impove the efficacy agaist a brown rot fungus, Tyromyces palstris, by mixing various cobiocides to the inorganic preservative reported in prior paper. The efficacy of the preservatives was estimated by the method of JIS A 9201. From the experimental results, some cobiocides were selected and were subjected to further simulated field and field tests. Tebuconazole had the highest synergic effect as a cobiocide. Boric acid which was important component of ACB and CCB approved in Europe was also a superior cobiocide.<BR>In the field test, the preservative prepared by the mixing the inorganic copper solution 20, boric acid 56 and tebuconazole 1 had the comparable effect to CCA-type 1 at the same copper retention.<BR>The synergic effects became higher in order tebuconazole, DDAC, boric acid in the field test. In the simulated field test, tebuconazole had also the highest effect, however, DDAC and boric acid had considerably lower effects.<BR>The difference between these results was due to the participation of copper-tolerant fungi. The simulated field test included the copper-tolerant fungi and gave the severer test condition to the treated wood than the field test gave.<BR>From these results, it was considered that the simulated field test could be used instead of the field test with reducing greatly test period.