著者
亀ヶ谷 雅彦
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.71-86, 2001-12-28

本論文では、まず選挙予測が選挙結果に与える影響、すなわち「アナウンスメント効果」に関して内外の先行研究を概観し、その研究動向の経緯をまとめた。ついでこれらの研究の中で、アナウンスメント効果の捉え方に関して、(1) 直接・間接効果の区別、(2) 投票動員への影響か、投票選好への影響かの区別、(3) 影響方向の違い、という3つの要素が考慮されていることを見い出した。最後に、これらの要素を内包した新しいアナウンスメント効果の概念類型として、4つの投票意図変化 (生起・補強・棄権・変更) と3つの選挙情勢内容 (優勢・接戦・劣勢) を組み合わせた12の領域からなる下位概念の分析枠組みを提示した。
著者
石田 哲夫 イシダ テツオ Ishida Tetsuo
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
no.44, pp.59-68, 2008-12

近年、わが国ではナチュラルチーズの消費量の増加により、ヨーロッパを中心に、世界各国から個性ある多種類のチーズが輸入されているが、とくにナチュラルチーズを好むチーズ通をターゲットにした、希少価値の高い珍しいチーズも入手できるようになってきている。それらのチーズの中には、歴史が古いものの生産量が少なく、幻のチーズといわれるものも少なからず存在する')。しかし、その成分的特徴および微生物学的性質については、必ずしも明らかにされているとはいえない。本報告は、わが国で市販されている、希少価値の高いフランス産およびイタリア産の牛乳製チーズについて、化学組成を明らかにし、さらにそれらの微生物学的知見を加えながら、比較検討した結果である。
著者
三上 喜孝
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.A21-A33, 2001-12-28

米沢市の古志田東遺跡出土の労働力徴発に関わる二点の木簡を検討し、平安時代 (九世紀末から一〇世紀初頭) の地方社会における農業労働力編成のあり方を考察する。「田人」と記され、男女の労働力を徴発した二号木簡は、従来の史料を手がかりにすると田植労働に関わるものと考えられ、田楽の儀礼をともなった田植労働が広く行われていた実態がうかがえる。これに対して男性の労働力のみを徴発した三号木簡は、灌漑施設や土木作業に関わるものと考えられる。こうした二種の労働力徴発の形態は後の大名田堵の農業経営につながる要素をもつ一方、田植労働に関しては古代以来の「魚酒」提供による雇傭労働の形態がとられていたと考えられる。古志田東遺跡からは古代から中世にいたる過渡期的な様相を見てとることができるのである。
著者
山本 淳
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.167-184, 2002-12-27

庄内地方「郷土本」の一つ、『筬の千言』に登場する人物の言葉に注目し、そこには上方語と庄内方言とが語法上対立的に描かれている事実を示した。また、そのうち上方語を話す人物の会話部には、ごく一部庄内方言が混入しており、こうした事例から、異郷にあっていわゆるお国言葉を用いての対話が許されること、またそのような状況下にあっては当該社会の言葉の混入を避けきれないこと、の二つの可能性を指摘した。また、このような異なる言葉を用いる人物を登場させる手法は、中央の酒落本における文芸的趣向としてすでに存しており、その延長上にあって、作品に幅を持たせると同時に、方言の資料的価値も付与することを説いた。
著者
白井 雅人
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
no.37, pp.71-84, 2002-12

要旨 : アンディ・ウォーホルとのコラボレーションの中で、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、音楽の演奏とマルチスクリーンによる映画の投影、同時に行われるパフォーマンスなど、あらゆる身体感覚を刺激する総合的体験としてのマルチメディア・ショーを行った。またその音楽は、おもにそのメンバーの中でクラシック畑出身であり、とりわけアヴァンギャルドな部分を担っていたといわれるジョン・ケイルの影響により、「ドローン」と「音の壁」という二重の形式を担うものであった。そのショーでは、音楽と映像は強調された反復と持続の感覚を身体に与えるものであり、ミニマリズムの対極にある、一種のカオスを観客に提供していたと考えられる。マルチメディア・ショーの原点といえるその活動の持つ意味を、その身体性を中心に、歴史、メディア、音楽などの側面から検証する。 キーワード : マルチメディア・ショー、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、アンディ・ウォーホル、ジョン・ケイル
著者
岩原 真代
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
no.46, pp.17-27, 2010-12

要旨:「楼の上」巻では、仲忠の京極邸再興といぬ宮への秘琴伝授、そして二院行幸が行われる。庭園には「唐傘の柄さしたるやう」な滝と、嵯峨院ゆかりの桜や子の日の老松があり、院の共感体として京極邸の歴史をもの語る。いぬ宮関連の儀礼歌には、「姫松」の喩が繰り返され、百日の祝いは嵯峨院大后の六十賀と同じ正月乙子の日に当たる。賢く長命な大后の造型は、嵯峨院同様、秘琴伝授を見定める視点人物であり、いぬ宮の一将来像としてある。また、物語には大樹の下に「円居」する君臣和楽の情景が繰り返し語られる。京極邸の庭園造詣も、大滝、楼閣、大樹群を縦軸に、枝を大きく張る樹形を横軸にとる立体構造をなし、これは、いぬ宮成長後、京極邸に展開するであろう君臣関係の理想型を具現化、予祝したものと考えられる。また、仲忠の二院への忠勤ぶりは、公式行事化した京極邸再興と秘琴伝授が脅威性を孕むことを示している。 キーワード:京極邸庭園, 子の日の松, いぬ宮造型, 嵯峨院, 嵯峨院大后造型
著者
松井 真人
出版者
山形県立米沢女子短期大学
雑誌
山形県立米沢女子短期大学紀要 (ISSN:02880725)
巻号頁・発行日
no.48, pp.19-30, 2012-12

要旨:英語には未来時を表すための様々な表現手段があり、それぞれの形式の意味には未来時に対する異なる捉え方が含まれている。本稿では特に、begoing to、現在進行形、未来進行形という、進行形(be-ing) を含む未来指示の形式を取り上げ、まず、各々の形式の意味を記述文法的な視点から説明した。さらに、各々の形式と意味が結びついている理由(動機づけ)を認知文法的な視点から考察し、各々の形式の意味は、それらの形式を構成している動詞go、進行形、法助動詞willの意味に動機づけられていることを示した。 キーワード:未来時、認知、begoing to、現在進行形、未来進行形