著者
高田 真太郎 太田 俊輔
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.741-745, 2023-12-01 (Released:2023-12-01)
参考文献数
14

表面弾性波は,電子デバイス産業で重要な位置を占めつつ,最近ではさまざまな領域で基礎研究への応用も進んでいる.これまでの研究では,主に単一周波数の正弦波型の表面弾性波が使われてきたが,生成手法を工夫すると多様な形状の表面弾性波を発生させることが可能である.こうした表面弾性波の利用は,これまで表面弾性波で行われてきた研究の幅をさらに広げる可能性を秘めている.本稿ではその一例として,我々が最近報告した表面弾性波の単一パルス生成技術に焦点を当て,その生成原理の理解から,具体的な単一パルス生成に至るまでの技術を解説する.
著者
片山 晴善
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.723-729, 2023-12-01 (Released:2023-12-01)
参考文献数
15

地球観測衛星に搭載される赤外検出器は優れた性能が要求される.JAXAでは従来の地球観測衛星で広く使用されてきたHgCdTe検出器に代わる,次世代の赤外検出器として,Type II超格子赤外検出器の研究を行っている.本稿ではJAXAで研究中のType II超格子赤外検出器について,その原理と現在の開発状況について解説する.
著者
細井 優
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.679-683, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
14

物質に歪みを印加することにより,物性の解明やその制御が可能である.特に近年では,ピエゾ素子を用いた歪み制御技術の進展が目覚ましく,本稿ではその基本的な原理や実験手法について紹介する.
著者
白田 理一郎 作井 康司
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.644-654, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
24

(株)東芝を代表とする日本がNANDフラッシュメモリの技術革新を牽引(けんいん)した結果,iPhoneなどのスマートフォン,USB,SDカード,SSD(Solid State Drive)と広く応用されている.NANDフラッシュメモリは,小型で軽量,静音性に優れ,衝撃に強く,電源を切ってもデータを保持するという優れた特性を有している.NANDフラッシュメモリが発明されなければ,パソコンやスマートフォンの普及が遅れ,デジタル社会への転換も起こらなかったかもしれない.1980年代に東芝でたった10名のグループで研究開発を始めたNANDフラッシュメモリは,2022年には10兆円のビジネスに到達し,今やNANDフラッシュメモリの無い世界は想像できない.
著者
大池 祐輔
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.68-74, 2020-02-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
20

CCDイメージセンサの登場でビデオカメラの小型化に成功し,コンシューマ製品としてディジタルカメラ市場が大きく拓(ひら)けて以来,CMOSイメージセンサにおけるカラム並列AD変換回路や裏面照射構造の開発によって,画質や動画性能の向上が加速した.さらに,3次元積層技術によって,CMOSイメージセンサは小型化・高機能化が進み,現在ではスマートフォンを中心に年間50億個以上が出荷されている.本稿では,CMOSイメージセンサの現在に至る研究開発の経緯と,さらに今後の展望として,センシング技術として検知可能な波長領域を拡張し,さまざまな応用領域への展開を加速させていく技術動向を紹介する.
著者
林 良博
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.56-57, 2014-01-10 (Released:2019-09-27)

生まれてから死ぬまで,いつも私たちとともにいる「ニオイ」.知っているようで,わからないことだらけの「ニオイ」.ここでは,身近で不思議な「ニオイ」に関する3つのトピックスについて,エキスパートの先生方に解説していただきます.まず,「犬の鼻はなぜ超高性能なのか」という素朴な疑問について,元日本獣医解剖学会会長であり,現国立科学博物館館長の林良博氏に解説していただきます.次に,誰もが他人事ではない「加齢臭」については,原因物質の発見者であり,加齢臭の名付け親でもある,(株)資生堂リサーチセンターの土師信一郎氏に,その正体と対処法を伝授していただきます.さらに,「香りが人間の心と体に与える影響」について,日本最大の香料メーカーである高砂香料工業(株)の高柳深雪氏に,生理心理的効果の検証実験をご紹介いただきます.[吉川元起・本誌編集委員]
著者
斉藤 一哉
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.302-304, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
2
著者
島﨑 佑也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.628-632, 2023-10-01 (Released:2023-10-01)
参考文献数
19

層状のバルク結晶から得られる2次元結晶を自在に組み替えて,従来実現できなかった新しいヘテロ構造(van der Waalsヘテロ構造)を作製することができるようになりました.基礎物性の探索を目的とした高品質のvan der Waalsヘテロ構造試料作製の概要を,2次元結晶の作製,探索からその積層方法まで含めて紹介します.
著者
古濱 洋治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.907-910, 1993-09-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
16

光を用いた衛星間中継システムは,将来の人類の軌道上における諸活動を支えるインフラストラクチヤーの一つと考えられている.衛星間光通信システムの特長は,小型軽量の装置による耐干渉性のある大容量通信の可能性があることである.反面,従来技術とは異なる開発要素がある.本編では,この技術の利用形態,特徴,要素技術および展望について紹介する.
著者
平山 宏之
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-138, 1970 (Released:2009-02-09)
参考文献数
2
著者
岡崎 進
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.988-992, 2017-11-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
4

分子動力学(MD)シミュレーションでは,研究対象となる現実の物質と同じ振る舞いをする原子や分子で構成された系を,計算機の中に作り出します.そして,実際に構成分子の運動方程式を解くことにより,それらをある温度,圧力などの下で時間発展させ,熱平衡状態を実現させたうえで静的,動的性質を解析し,物質の振る舞いを原子,分子レベルで研究しようとするものです.つまり,計算機による物質の観察,一種の実験に相当します.
著者
下馬場 朋禄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.137-141, 2015-02-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

ディジタルホログラフィや計算機合成ホログラムなど,コンピュータ上でホログラムを扱う技術を総称してコンピュータホログラフィと呼ぶ.コンピュータホログラフィの応用は多岐にわたるが,本稿では,特に大面積のホログラムを撮影するためのスキャンニング技術とレンズを使用しないホログラフィックプロジェクション技術について紹介する.
著者
木村 勇気
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.545-549, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
31

宇宙にはダストと呼ばれる無数のナノ粒子が存在しており,さまざまな場面で重要な役割を果たしているため,ダストの形成過程の理解は天文学,惑星科学の土台となる課題である.我々は気相からの核生成過程の一般性と,宇宙における物質進化を理解する鍵はナノ領域特有の性質にあると考え実験を基に研究を行ってきた.その結果,気相からの均質核生成のキーファクターはダイマーの形成と融点降下にあることが分かり,ダストの形成過程の理解にはナノ粒子の融合成長を考慮する必要があることが分かってきた.ここでは,最近の研究の一端を紹介する.
著者
小濱 芳允
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.556-559, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
19

パルス磁場の発生手法についてその基礎から解説し,強磁場研究の実情を紹介したい.まずは従来のパルス磁場技術を示し,これと使いやすい磁場の代表格であるロングパルス磁場との差異を示す.更に,最先端のフィードバック技術で発生されたフラットトップ磁場を解説し,その有用性を議論する.最後にこれらの磁場発生手法で可能となった最近の研究動向を紹介する.
著者
金岡 政彦
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.530-534, 2023-09-01 (Released:2023-09-01)
参考文献数
25

巨大な顕微鏡と称される放射光施設では,放たれるX線の特性からラボ用分析装置では得られない極めて高い分解能の観察ができるため,さまざまな分野の最先端研究が行われている.この高分解能を得るには高精度光学素子の存在が不可欠であり,2nm以下という卓越した精度で表面を平滑化したX線全反射ミラーを安定供給しているのは筆者らの組織だけである.本稿では,このグローバルニッチトップ型ビジネスを支える独自のナノ加工技術の存在と,その実用化・事業化の成功について述べ,新たに進める技術の応用開発の一例を紹介する.