著者
中西 勇介 リム ホンエン 宮田 耕充
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.292-296, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
29

遷移金属カルコゲナイド(TMC)は,その多彩なナノ構造と物性により,近年大きな注目を集めている.特に,合成技術の発展に伴い,単層の2次元TMDCや関連するナノチューブ,ナノリボン,そしてナノワイヤなどのさまざまな1次元ナノ構造の作製が可能になってきた.本稿では,1次元のTMC細線構造に焦点を当て,孤立したTMC細線および大面積ネットワーク薄膜の気相成長に関する筆者らの研究を紹介する.
著者
田辺 里枝
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.298-301, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
3

現代の工業社会を支えている各種の加工技術の中で,レーザー加工や放電加工などのエネルギー加工は,工具と被加工材とが直接接触しないという点が,特徴的な加工法です.それらの加工現象は,非常に高速で加工時に発光が伴うため,一般には直接的な観察が難しい現象で,その詳細は十分には理解されていません.このような短時間現象の観察では,高速度撮影による可視化は,現象理解において重要な技術です.特に,その時間的変化,ダイナミクスを観察することはキーポイントと言えます.本稿では,高速加工現象の高速度撮影システムの構築において必要な技術を紹介します.
著者
石井 正俊
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.273-277, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)
参考文献数
27

IT(情報技術)の急速な発展と社会浸透により,私たちの暮らしがより快適なものへと変容している.半導体技術は,このような社会インフラシステムを下支えする根幹技術であり,私たちが今後さらなる利便性を享受していくためには,継続的な半導体技術の発展が不可欠である.本稿では半導体技術の現状を振り返りつつ今後の人工知能を支えるハードウェアプラットフォームについて展望する.
著者
岡田 晋
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.1097-1100, 2015-12-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
17

グラファイトに代表されるsp2炭素からなるネットワーク物質は,原子欠陥やトポロジカル欠陥の導入により容易に磁気的な性質を帯びることが知られている.ここでは,カーボンナノチューブ(CNT)に端やトポロジカル欠陥を導入することにより,磁性CNTが実現されることを量子論に立脚した第一原理計算の結果を基に示す.特に,有限長のCNTと5員環と8員環からなるトポロジカル欠陥を有するCNTにおいて,詳細な原子形状に依存した磁性状態が発現することを紹介する.
著者
米沢 富美子
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.926-928, 1998-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
3
著者
西根 勤 大杉 義彰
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.761-765, 2005-06-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
4

ポストゲノムの時流の中で,より生命の本質にせまるべくプロテオームと総括される網羅的たんぱく質解析が,方法論の検討段階から結実期を迎えつつある.RNA発現プロファイルとたんぱく質発現プロファイルの相関が低いといわれているように,遺伝情報のみから生命の実体であるたんぱく質の構造と機能を解明することは難しい.また,たんぱく質を調べることは,新規診断や創薬につながる可能性を秘めており,プロテオームはゲノム同様に大いに期待されている.プロテオミクスの進展には,いくつかのブレークスルーが必要であったが,その一つが質量分析技術の発達である.
著者
井藤 賀操 加藤 由佳梨 川上 智 榊原 均
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.710-713, 2011-08-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
28

ヒョウタンゴケの原糸体細胞の成長パターンを調査し,潤沢な培養条件では指数増殖期が認められたことから,本種が裸地環境へいち早く適応し繁茂できる生存戦略をもつ種類である可能性について意見を述べた.本種の乾燥粉末を利用した金属回収方法は,一般にカーボンニュートラルなプロセスとして分類される.私たちはさまざまな環境制御要因条件で原糸体細胞を生産し,鉛吸着材としての品質評価を実施した.400L規模に大型化した装置で生産した原糸体細胞においても,鉛吸着材としての十分な性能があることが確かめられた.したがって,私たちは,原糸体細胞を鉛回収するための新素材として位置づけ,産業利用できることを提案した.
著者
中井 順吉 宮崎 隆雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.558-562, 1963-08-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
6

Electrical properties of metal-oxide-metal diode prepared by evaporation method are discussed with the theory by R. Stratton on tunneling currents through thin insulating films. Experimental results are successfully interpreted by the theory and the temperature dependency of tunneling current is found to agree in its general trend with the theory.
著者
浅川 賢一 田幸 敏治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1185-1191, 1980-12-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
15

The microvibration of the ground was measured by the 50 meter vacuum interferometer which was installed in the underground tunnel in the Nagatsuta Campus of the Tokyo Institute of Technology. There are often anomalous vibrations caused by cars passing on a near road for example. We propose a new method to detect and distinguish such anomalous vibrations. The signal which represents the vibration of the ground is put into a prediction error filter which is made from the normal part of the stignal. If there are any anomalous vibrations, its output, namely prediction error, becomes greater, and we can easily recognize its existence. This method is very sensitive and its characteristics is clerrly revealed by investigating the power spectrum and the frequency histograms of the signal.
著者
藤本 憲次郎 相見 晃久
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.225-229, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
29

近年「データ駆動型研究」や「インフォマティクス」をタイトルに含む研究が増え,ハイスループット・自律化実験を交えたDX化に向けた取り組みが活発になってきた.対象となる素材や形態が多くある中,本稿では多元系酸化物粉末に焦点を当てたインフォマティクス研究につながる研究として取り組んできたコンビナトリアル技術,具体的には液相プロセスに基づいた粉体試料群の自動作製,高速粉末X線回折,物性評価治具そして放射光粉末X線回折のための治具開発について紹介する.
著者
芹澤 愛
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.230-233, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
24

アルミニウム合金は,カーボンニュートラル実現の観点から輸送機器をはじめとした各種部材への展開が期待される軽量金属材料であるが,用途拡大のためにはさらなる高強度化ならびに高耐食化が不可欠である.本稿では,筆者がごく最近開発した,水蒸気のみを利用した環境負荷の低い新しい表面処理技術である水蒸気プロセスについて解説する.水蒸気プロセスでは,アルミニウム合金表面に水酸化物結晶を緻密に形成することでバリヤ性が発現し,耐食性が向上する.これと同時に,水蒸気の熱エネルギーを活用し,アルミニウム合金を組織制御することで析出強化により高強度化が実現する.水蒸気プロセスによって実現する,このような興味深いアルミニウム合金の多機能化手法について紹介する.
著者
山内 美穂
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.208-213, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
18

持続可能なものづくりを実現するには,高効率触媒の開拓が必要となる.本稿では,水を水素源とする電気化学的物質変換反応を活性化するために求められる触媒の組成,配列,構造を議論するとともに,筆者らが開発した無機ナノ触媒の機能を紹介する.初めに,炭素循環の要となるCO2還元反応(CO2RR)を促進する無機触媒の制御要因について議論する.また,高効率蓄電の新しい方法となる有機酸あるいはケトンからのアルコール化合物を合成するために作製されたTiO2をベースとする電極材料を紹介する.さらに,有機酸とケトンの電気化学的還元の応用例として熱電子変換とアミノ酸合成についての研究例を紹介する.
著者
竹内 一郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.199-207, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
44

With its ability to enable rapid screening of a large number of different materials, the combinatorial high-throughput approach has become an integral part of the experimental toolbox for materials exploration and discovery efforts across virtually all areas of materials science. With the advent of the Materials Genome Initiative in the U.S., high-throughput materials synthesis and characterization has come to play the complementing role to the surge of activities in computational materials science. In this article, I provide my perspective on how the combinatorial approach has evolved over the years and how informatics and machine learning have come to play a central role in the field.
著者
内田 龍男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.451-455, 1995-05-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
4

電気的に制御可能な波長可変フィルターについて解説する.このフィルターは,複数枚のECB形ネマティック液晶セル(電界制御複屈折セル)を積層することによって構成されている.このデバイスの特長は,二次元の画像情報を保持したまま,任意の波長成分の光を取り出すことができる点にある.本解説では,このフィルターについて設計条件を明らかにするとともに,その特性について詳細に述べる.
著者
蒲生 秀也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.431-443, 1956-11-10 (Released:2009-02-20)
参考文献数
9

Since optical systems have distinctive features as compared to electical communication systems, some formulation should be prepared for the optical image in order to use it in information theory of optical systems. In this paper the following formula for the inten-sity distribution of the image by an optical system having a given aperture constant a in the absence of both aberration and defect in focussing is obtained by considering the nature of illumination, namely, coherence, partial coherence and incoherence; _??_ where I(y) is the intensity of the image at a point of coordinate y, T12 the phase coherence factor introduced by H. H. Hopkins etc., E(x) the complex transmission coefficient of the object and A(x) the complex amplitude of the incident waves at the object, and the integra-tion is taken over the object plane. The above expression has some interesting features; namely, the “intensity matrix” composed of the element anm mentioned above is a positve-definite Hermitian matrix, and the diagonal elements are given by the intensities sampled at every point of the image plane separated by the distance λ/2a, and the trace of the matrix or the sum of diagonal elements is equal to the total intensity integrated over the image plane. Since an Hermitian matrix can be reduced to diagonal form by a unitary transformation, the intensity distribution of the image can be expressed as _??_ where λ1, λ2……λn, ……are non-negative eigenvalues of the intensity matrix. In case of coherent illumination, only the first term of the above equation remains and all the other terms are zero, because the rank of the coherent intensity matrix is one, and its only non-vanishing eigenvalue is equal to the total intensity of the image. On the other hand, the rank of the incoherent intensity matrix is larger than the rank of any other coherent or partially coherent cases. The term of the largest eigenvalue in the above formulation may be especially important, because it will correspond to the coherent part of the image in case of partially coherent illumination. From the intensity matrix of the image obtained by uniform illumination of the object having uniform transmission coefficient, we may derive an interesting quantity, namely _??_ where λn is the n-th eigenvalue of the intensity matrix and I0 is the trace of the matrix. d is zero for the coherent illumination and becomes log N for the incoherent illumination, where N is the “degree of freedom” of the image of the area S, namely, N=4a2S/λ2. The value of d for partially coherent illumination is a posititve quantity smaller than log N. A quantity δ=(d0-d)/d0 may be regarded as a measure of the “degree of coherence” of the illumination, where d0=log N and δ is unity for the coherent case and zero for perfectly incoherent case. The sampling theorem for the intensity distribution is derived, and the relation between elements of intensity matrix and intensities sampled at every point separated by the dis-tance λ/4a is shown.
著者
菊池 和朗
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.856-861, 2009-09-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
22
被引用文献数
2

光の位相情報を活用するコヒーレント光通信の研究は,約20年の中断を経て,近年再び活発化している.新世代のコヒーレント光通信は,従来の光技術と高速デジタル信号処理の融合を特徴としており,デジタル・コヒーレント光通信と呼ばれる.本稿では,コヒーレント光通信の歴史を概観した後,デジタル技術との融合がもたらす新たな可能性について解説する.
著者
解良 聡 上野 信雄
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1260-1267, 2003-10-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
43
被引用文献数
2

有機デバイスの特性を理解していくうえで,分子個々の性質と集合体としての薄膜の性質に加え,有機デバイス中に必ず存在する有機/無機界面について詳細に知ることがデバイス開発側から要求されつつある重要な課題である.しかし,その複雑さのために微視的な立場から体系的に捉えることは容易でなく,これが有機デバイスが爆発的な注目を集めるまで基礎的立場からの研究参入を拒んできた理由の一つである.光電子分光法はきわめて一般的な手法の一つで,今や有機デバイス界面の研究に不可欠となっている.有機/無機界面では得られる光電子スペクトル構造(線幅・形状・位置)についての正しい解釈がこの系を理解するうえでの重要な第一歩といえる.価電子帯最上部のバンドは,薄膜中や界面におけるキャリアの動的挙動,分子間相互作用などの物性基盤を理解するうえできわめて重要な情報を含んでいる.本稿では有機薄膜界面研究の現状,問題点と今後の課題について紹介する.