著者
高村(山田) 由起子 尾崎 泰助
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.488-492, 2017-06-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
18

グラフェンのケイ素版といえるケイ素の蜂の巣格子であるシリセンは,1994年の論文1)でその存在が理論的に予言されていたものの,実験的な合成報告があったのは最近である.黒鉛からの機械的剥離により得られるグラフェンと異なり,炭素と同じ14族元素の蜂の巣格子であるシリセンやゲルマネン,スタネンなどは母材となる層状物質が存在しないため,実験的な合成報告は単結晶基板上へのエピタキシャル成長によるものがほとんどであり,結晶構造と電子状態への基板の影響が無視できない.加えて,同定の決め手となる評価方法が存在せず,複数の相補的な分析法を併用する必要があり,なおかつ,得られた実験結果,特に電子状態の解釈を行うには,第一原理電子状態計算が不可欠であるなど,1つの研究室ではなかなか歯が立たない.本稿では,シリセンのような未知の2次元材料の研究を行うにあたって,実験と計算の協奏(競争?)がいかに重要であるかを,我々のこれまでの共同研究の成果を交えて論じてみたい.
著者
古橋 勉 新田 博幸 工藤 泰幸 真野 宏之
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.821-826, 1999-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
9

液晶ディスプレイは,薄型,軽量,低消費電力が特徴であることから,ノートPCなどの表示装置として広く採用されてきている.現在では,対角画面サイズが15インチ以上,解像度が1024×768画素以上の大画面,高精細液晶ディスプレイが各社から製品化されてきている.これに伴い,液晶モニターという新しい市場も拡大してきている.本文では,この液晶ディスプレイの駆動方式と駆動回路ならびに高速伝送技術に関して解説する.
著者
荒川 泰彦 塚本 史郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.293-306, 2005-03-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
122
被引用文献数
3

1982年に提案された量子ドットは,自己形成量子ドットを中心とする半導体ナノ技術により,レーザーや単電子素子など現実に動作するナノ素子の基本構造として発展してきている.本総合報告では,量子ドットを中心とした低次元半導体構造について,フォトニック素子への展開を念頭に置きながら,結晶成長・プロセス技術,光・電子物性,素子応用について論じる.まず,半導体ナノ構造の歴史的発展を振り返った後,自己形成量子ドットの展開について議論する.さらに,自己形成手法以外のナノ結晶成長・プロセス技術について概観した後,量子ドットの光・電子物性物理の進展状況を論じる.そして,さらに,量子ドットレーザーを中心にして,ナノフォトニック素子についてその展開を紹介するとともに,量子暗号通信に不可欠な単一光子発生素子について量子ドット応用の立場から述べる.
著者
杉本 大 宮本 秀範
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.475-483, 2022-08-01 (Released:2022-08-01)
参考文献数
30

機器が人に優しく,頼りにされる存在になるためには確かな信頼性と性能を兼ね備えていなければならない.技術開発の進化は加速度的に多くの新技術を誕生させ社会を豊かにする.一方,それらは新たな信頼性課題の起源でもあった.これらの課題を克服するサイクルを繰り返すことで,製品はより高い信頼性を獲得してきた.無休で安定な動作が必然とされるようになった現代では,システムがひとたび停止すると,政治経済までを巻き込む問題となる.機器が重要な役割を担うようになればなるほど重要になる信頼性を半導体を1つの切り口として,信頼性とは何かから,課題解決までのアプローチをいくつかの具体例とともに解説する.
著者
松田 瑞史 栗城 眞也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1534-1537, 2002-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
2
被引用文献数
2

SQUIDは超伝導の量子力学釣な性質を利用しており,磁束量子φ0以下の微小磁束変化に対しても応答する超高感度なセンサーである.この磁束センサーの動作について,ジョセフソン効果,磁束の量子化などの原理にたちもどって解説する.また,実際に磁場を計測するシステムにおいて使われるいくつかの技術について述べる.
著者
小林 篤 上野 耕平 藤岡 洋
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.411-415, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)
参考文献数
36

窒化ニオブ(NbN)は,単一光子検出器や量子ビットに搭載されている超伝導材料である.興味深いことに,NbNはワイドギャップ半導体AlNと格子整合性が高いため,両材料の持つ機能をエピタキシャル成長によって融合できる可能性がある.しかしながら,AlNをはじめとする窒化物半導体にエピタキシャル成長させたNbN薄膜の基礎的な特性には不明な点が多い.本稿では,スパッタ法でAlN上に成長させたNbN薄膜の構造特性と電気特性について紹介する.さらに,AlNとNbNの結晶構造の相違がNbNの双晶を生み出すメカニズムを示し,NbN双晶の制御技術についても紹介する.
著者
山本 純也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.370-373, 1994-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
8

核融合科学研究所が岐阜県土岐市に建設中の大型ヘリカル装置はそのプラズマ閉じ込め用の磁場をすべて超伝導コイルによって発生する世界で最初の核融合実験装置である.ここで使用する超伝導コイルは世界最大の蓄積エネルギーを持つもので,その設計,製作は超大型超伝導技術の歴史を塗り替えるものである.本稿では装置本体の超伝導マグネットシステムの構成,各要素の条件などの設計方針,および製作についての主要な点について述べている.使用する超伝導材料はひずみに強いNbTiであり,ヘリカルコイルは浸漬冷却方式,ポロイダルコイルは強制冷却方式である.電流値としては,10kA~30kAという超伝導としてはかつてない高い値となる.この装置は, 1997年に完成し年間2000時間10年間の核融合プラズマ実験を支える.
著者
井ノ上 泰輝 項 栄 千足 昇平 丸山 茂夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.351-355, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
30

単層カーボンナノチューブの表面に窒化ホウ素ナノチューブやMoS2ナノチューブを化学気相成長することで,異種ナノチューブの同心複合構造であるヘテロナノチューブの創出が実現した.2次元物質におけるファンデルワールスヘテロ構造の研究が近年盛んであるが,本成果は擬1次元的なナノチューブにおいて同様の自在な物質設計の可能性を開くものであり,ナノチューブ構造に特有の新たな物性の発現やデバイス応用が期待される.本稿では,ヘテロナノチューブの合成と構造評価,およびその物性計測や応用について紹介する.
著者
宮坂 等
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.334-339, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
30

遷移金属錯体は,中心金属イオン周りの配位子場を調整することで,その酸化還元特性やd電子スピン軌道を変えうる.その特徴を基に,酸化還元活性架橋配位子と連結することで,d-p軌道が共役した電荷移動型の錯体多次元格子,いわゆる,電子ドナー(D)と電子アクセプタ(A)の交互格子を構築できる.このようなDmAn格子でも,D部位のイオン化ポテンシャルとA部位の電子親和力と電子対反発エネルギーを分子・配位子修飾による可変数として捉えることで格子内電荷移動を制御することが可能である.同時に,格子で囲まれた“空間”を利用することで,ゲストの脱挿入による構造変調や格子‐ゲスト相互作用をトリガーとする動的な電荷移動を誘起できる.本稿では,主に電荷移動型錯体格子の電子・スピン制御について,格子上の電荷移動設計と空間利用という観点から解説する.
著者
小倉 繁太郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.273-275, 1997-03-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

芸術工学(デザイン)専攻学部学生に「フーリエの冒険」を教科書として使用した際に得られた,おもに波動物理の教育の結果と問題点について報告した.
著者
岡田 至崇 八木 修平 大島 隆治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.206-212, 2010-03-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
22
被引用文献数
5

近年,従来の延長線上にない新しいアプローチにより,単接合太陽電池のエネルギー変換効率を上回り,かつ低コスト化が展望できる次世代型高効率太陽電池の研究開発が活発になっている.本稿では,理論変換効率60% 以上の超高効率化が可能な量子ドット超格子を利用した中間バンド型太陽電池について,その動作原理と開発動向について述べる.
著者
鈴木 健吾
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.266-270, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
8

我々は,宇宙機への応用を目指した新しい方式の水素センサを,JAXAと共同で開発している.宇宙機向けの水素センサには,酸素が共存しない環境や真空中でも微量の水素を検知することが求められる.開発したセンサは,酸化物イオン・電子混合伝導体である酸化セリウム(セリア)を感応材料に用いた基板型で,500℃に加熱して動作させる.不定比性の酸化物であるセリアは,加熱状態で酸素分圧に応じて酸素を吸蔵・放出する性質がある.一方,水素共存下では,水素はセリア表面に解離吸着し電荷が移動することで電子伝導性(抵抗値)が変化する.つまりセンサの抵抗値は,全圧にはよらず酸素/水素分圧比に依存する.このセリア表面での平衡反応をクレーガー=ビンク表記法で表し,ガス分圧とキャリヤ濃度の関係からセリア表面のガス吸着の状態を考察した.さらにin-situ XAFS観察により,水素吸着前後のセリアの価数変化はわずかであることを確認し,これらの結果から検知メカニズムを明らかにした.
著者
高辻 正基 金子 忠男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.529-539, 1977-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
40
被引用文献数
1
著者
福田 益美
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.779-785, 1993-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
18

GaAsFET, HEMT, GaAsICなどのデバイスやGaAs結晶材料の簡単な歴史,現状および将来について述べる.ある技術が世の中に受け入れられるためには,その恩恵を受けるであろう最終顧客(消費者)や経済の動向が大切で,単に当事者のその技術に対する思い入れだけでは不十分である.うまく市場に参入できたGaAsFETやHEMTを例にあげ,まだ市場規模が小さく今後の動向に結晶材料サイドからも大きな関心が寄せられているGaAsICにつき,今後どんなアプローチが考えられるか私見を述べる.
著者
財満 鎭明 安田 幸夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1093-1105, 1994-11-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
55
被引用文献数
12

シリコン大規模集積回路 (ULSI) の極微細化とともに,オーミックコンタクト抵抗やその信頼性が,デバイスの高性能化を制限しかねない状況に至っている.このため,金属/半導体界面の微視的な固相反応の理解と,新しい低抵抗コンタクト材料の開発が必要となっている.本報告では, Ti, Zr, Hfなどの高融点金属とシリコンの界面におけるシリサイド形成と電気的特性の関係を明らかにし,コンタクト抵抗率を支配している要因を界面反応,化学組成,結晶学的構造などの観点から議論する.
著者
堀 義和 加藤 誠
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.1401-1406, 1999-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
16

光ディスクは,近赤外領域(波長~780nm) のAIGaAs系半導体レーザーの実用化とともに,音楽や映像のレコートとしてコンパクトディスク (CD) やレーザーディスク (LD) のように案用化された.その後,コンピューター用の記録メディア (650MB) として, CD-ROM, CD-R, MO, PDが広く使用されるようになった.現在では,赤色領域(波長~65Dnm) のAIGaInP系率導体レーザーの実現とともに, DVDのようにマルチメディア対応の高密度記録メディア (4.7GB) として,さらに発展を遂げ普及し始めている.ここでは,光ディスクの儒号の記録再生を行う光ピックアップヘッドについて,その光学系の基本構成と儀号検出原理,ならびにホ翻グラム素茅を用いた小型化,光源と光検出器の一体集積化への取り組みについて解説する.
著者
篠田 政一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.789-794, 1975-07-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
18
著者
小林 禎作
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1234-1248, 1975-12-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
81

Habit and growth type of snow crystals was consolidated by Kobayashi in 1961 as far as single crystalline forms are concerned. But much has been left unknown about poly-crystalline forms of snow crystals. Kronberg-Wilson's concept of Coincidence-Site Lattice was successfully introduced to explain the structure of “twin prisms” and twelve-branched snow crystals as rotation twins which have each a twin axis parallel to the composition plane. A generalized CSL theory is now proposed to explain the structure and growth of poly-crystalline shaped crystals including a combination of bullets, a spacial assemblage of plane branches, and some of the “peculiar shaped crystals” as rotation twins which have each a twin axis perpendicular to the composition plane. Thus an important step is forwarded for the understanding of the morphology of snow crystals. Methods of microscopic observation in situ of growing ice crystals are described with the aid of illustrations and photographs.