著者
松岡 弘泰 松原 寛知 国光 多望 中島 博之
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.547-553, 2022-07-15 (Released:2022-07-15)
参考文献数
15

末梢挿入型中心静脈カテーテル(Peripherally inserted central catheter:以下PICC)は,中枢挿入型に比べて挿入が簡便で危険性が低い.両者に共通して,稀な合併症としてカテーテル先端の血管外穿破や膿瘍形成が知られている.当科で経験したPICCによると判断された縦隔炎の一例を報告する.症例は60歳男性で,下咽頭癌に対する化学療法中の発熱・食事摂取困難に対し,PICCが留置された.一時的な炎症所見改善の後に再増悪した.挿入後15日目にカテーテル閉塞のため抜去したが,同日のCTで縦隔炎を認めた.緊急で胸腔鏡下縦隔切開術を施行し,集中治療を要したが救命しえた.中心静脈カテーテルが原因と考えられる縦隔炎の報告は自験例を含めて9例あり,その内3例が感染による縦隔炎との判断から手術治療が行われた.抗癌剤や高カロリー輸液による化学性炎症であれば保存治療可能であるが,感染を疑った場合には速やかに手術に踏み切るべきである.
著者
天野 晃滋 木内 大祐 石木 寛人 松岡 弘道 里見 絵理子 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.147-152, 2021 (Released:2021-05-13)
参考文献数
27

人は生きるために食べるが,食事は社会的存在である人にとってそれ以上の意味をもつ.進行がん患者は,腫瘍・治療の副作用・がん悪液質のため「食べないといけないが食べられない」「食べるようにしているが痩せてしまう」というような食欲不振・体重減少を主因とする食に関することで苦悩し,生活をともにする家族も患者とは異なる苦悩を有することが近年の研究でわかってきた.これらを踏まえ,われわれは患者と家族の食に関する苦悩のような心理社会的苦痛における緩和ケア・サポーティブケア・栄養ケアを統合した多職種連携ケアの重要性を指摘し,患者と家族の食に関する苦悩の評価尺度を作成している.現時点では,患者と家族の食に関する苦悩のケアは世界的に確立されておらず,これら苦悩の多職種による統合ケアを開発すること,さらにこの統合ケアの効果を検証すること,また将来的には,本邦のがんセンター・がん診療拠点病院での実践・普及を目指す.
著者
梶原 都香紗 松岡 弘道 小山 敦子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.460-466, 2021 (Released:2021-07-01)
参考文献数
13

はじめに : パニック症に対するEMDR (眼球運動による脱感作と再処理法) が報告されているが, 今回EMDRを実施することなく, EMDR導入前に用いる安定化技法のみでパニック症の軽快と自己コントロール感への影響が認められた症例を経験したので報告する.  症例 : 20代女性. パニック症. 抑うつ状態. 受診時の胸のざわつき, 電車乗車時のパニック症状出現に対する不安に対し, それぞれ安定化技法の 「拡張版コンテイナー・テクニック」 を実施し, SUDs (主観的障害単位) の減少が認められた. 本人も効果を実感し, 自己にて練習することとなった. 「安全な場所」 を実施し, 新幹線にも乗ることが可能となった. 本人も自信がついたと語り, その後の心理面接では過剰適応に対する気づきが認められた.  考察 : 安定化技法は, パニック症状の軽減, 自己コントロール感の向上を促し, 過剰適応な対人関係のパターンにも影響を与える可能性がある.
著者
松岡 弘大 川埼 恭平 田中 博文 常本 瑞樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.146-164, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
58
被引用文献数
3 6

列車通過時に共振が生じる橋梁(共振橋梁)は,乗り心地や付帯構造物への悪影響のほか,対策を要する場合もあり,適切に検知する必要がある.本研究は,走行列車の先頭車両と最後尾車両で計測した車体上下加速度を利用し,膨大な数の橋梁から共振橋梁を網羅的かつ効率的に検知する手法を検討した.共振橋梁に特有の振動成分について理論的に分析したうえで,フィルタ・包絡線処理と先頭および最後尾車両の差分処理で構成される車上計測データによる共振橋梁の検知手法を提案した.数値解析により検知精度を検証したうえで,実路線の営業車両で計測された車体上下加速度に提案手法を適用し,共振橋梁を抽出するとともに,抽出した橋梁の共振状態を地上計測により検証した.
著者
山崎 睦子 松岡 弘明 矢野 和孝 森田 泰彰 植松 清次 竹内 繁治 有江 力
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.299-303, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
22

In 1997, Phytophthora rot caused serious losses to ginger (Zingiber officinale Rosc.) production in Kochi Prefecture, Japan. In the field in early summer and autumn, water-soaked rot on basal pseudostems and brown rot on rhizomes were first observed, then plants developed stem blight. The disease also developed on rhizomes stored at 15°C in the dark. A Phytophthora sp. was consistently isolated from the symptomatic lesions and caused the same symptoms after inoculation with the isolates. The identical Phytophthora sp. was then reisolated. White stellate colonies grew on PDA at a minimum temperature of 10°C, optimum of 23°C and maximum of 30°C. Sporangia were ovoid, ellipsoid, globose and distorted (variable) with one or two apices, noncaducous, 30–90 × 20–50 (average 50.0–56.1 × 25.0–32.6) μm, with a length to breadth ratio of 1.5–1.7:1. Nucleotide sequence of the r-DNA ITS regions agreed well with those of Phytophthora citrophthora (R. E. Smith and E. H. Smith) Leonian previously reported. Based on these results, the isolate was identified as P. citrophthora. This report is the first of a disease of ginger caused by P. citrophthora, and we propose the name “Phytophthora rot” for the disease.

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著者
松岡 弘明
出版者
一般社団法人 電気設備学会
雑誌
電気設備学会誌 (ISSN:09100350)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.412-415, 2011-06-10 (Released:2014-09-01)
著者
松岡 弘文 梶原 一郎 田原 春夫 大島 一寛
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.6, pp.953-957, 1994-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8

真性包茎に合併する尿路感染症ならびに膀胱尿管逆流において本症がいかなる病的意義を持つか検討を行った.包茎の男児は排尿障害の合併が認められない場合でも尿路感染症をおこす頻度が高く, この観点からも包茎は手術適応が妥当であると考えられた. また, 排尿障害を伴う包茎では排尿障害のない群と比べて尿路感染症の頻度が有意に増加し, その大半が腎盂腎炎であることから上部尿路への閉塞性病変としての関与が示唆された.しかしながら, 本症に合併する膀胱尿管逆流症例は先天性尿管膀胱接合部異常に起因するものが大部分で, 包茎による排尿障害は副次的な増悪因子でしかないと判断されたものが多かった. 従って, 腎盂腎炎合併例では包茎治療と同時に尿路精査の必要があると考えられた. なお, 亀頭包皮の瘢痕癒着の強い後天性包茎の1例では閉塞による続発性逆流と判定された.
著者
松岡 弘道 村上 佳津美 小山 敦子
出版者
近畿大学臨床心理センター
雑誌
近畿大学臨床心理センター紀要 = Bulletin of center for clinical psychology Kinki University (ISSN:21868921)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.3-17, 2014-11-01

[要約] 心療内科で扱う心身症の患者によくみられる特徴に, (1)失感情症, 失感情言語化症 (Alexithymia) : 自分の内的な感情ヘの気づきとその言語表現が制約された状態, (2)失体感症(Alexisomia) : ホメオスターシスの維持に必要な身体感覚 (空腹感, 満腹感, 疲労感など)への気づきが鈍い傾向, がある. このために過剰適応となり, 様々な身体の不調をきたす心身症ヘと発展していく. したがって, 心身症治療の中心は, これらの病態--「心身相関」への気づきを促し, 患者自身に新しい適応様式を獲得してもらい, セルフコントロールできるようにすることである. 代表的な心理療法として, 自律訓練法, 交流分析・ゲシュタルト療法, 認知行動療法について概説するとともに, 日本ではまだあまり知られていないが, 最近, 筆者らが渡独し, 開発者から直接研修を受けたオートノミートレーニングについても詳述する. 近畿大学では, 今後, 幅広い患者ヘ心身医療を提供していく.
著者
貝戸 清之 小林 潔司 青木 一也 松岡 弘大
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.255-271, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
36
被引用文献数
12

社会基盤施設の劣化過程においては,施設の構造特性や使用・環境条件の違いにより劣化速度に多大な異質性が存在する.個々の施設に特有な異質性がもたらす劣化速度の過分散の問題を克服するために,施設グループ間の劣化速度の異質性を明示的に考慮した混合マルコフ劣化ハザードモデルが提案されている.本研究では,劣化速度の過分散が,施設グループ間における劣化速度の異質性と,グループを構成する個々の施設間における異質性というレベルの異なるつの異質性が複合された結果により発生すると考える.その上で,階層的異質性を導入した混合マルコフ劣化ハザードモデルを定式化し,その階層ベイズ推計法を提案する.最後に,橋梁床版に対する目視点検データを用いた実証分析を通して,本研究で提案する手法の妥当性を検討する.
著者
福島 大地 伊藤 孝紀 西田 智裕 深町 駿平 松岡 弘樹 仙石 晃久 大塚 孝信 伊藤 孝行
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:2188885X)
巻号頁・発行日
vol.2016-ICS-185, no.8, pp.1-8, 2016-12-06

住民参加によるまちづくりにおいて,公聴会や説明会などに加えてワークショップ (以下 WS) が増えている.まちづくり WS の手法として,従来からの対面式 WS と,我々が提案してきた大規模合意形成支援システムを用いた非対面式 WS がある.対面式 WS は,情報入手や理解を支援するが,時間 ・ 場所の制約という課題がある.非対面式 WS は,時間 ・ 場所の制約を解決できるが,情報入手や理解に課題がある.そこで本研究では,まちづくり WS において,対面式 WS と非対面式 WS の組み合わせた手法を提案する.提案手法による合意形成への有効性を検証することを目的とする.提案手法の有効性は,社会実験により検証する.社会実験では,地権者,住民などに加え学生も参加して,対面式 WS の後に非対面式 WS を行う.それぞれの WS における議論データの分析および参加者へのアンケート調査を行い,提案手法の有効性および課題点を把握する.
著者
西田 智裕 伊藤 孝紀 福島 大地 深町 駿平 松岡 弘樹 仙石 晃久 大塚 孝信 伊藤 孝行
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:2188885X)
巻号頁・発行日
vol.2016-ICS-185, no.9, pp.1-7, 2016-12-06

住民参加によるまちづくりの法制化に伴い,まちづくりワークショップが増えている.まちづくりワークショップは,毎週 ・ 毎月など期間を空け,連続して実施すること (連続ワークショップ) がある.一方,ワークショップの間での日常生活において,議論に対する意見が出てくることがある.この意見をワークショップの議論へ反映することは難しい.そこで本研究では,対面式のまちづくり連続ワークショップの間に,合意形成支援システムを用いた非対面式ワークショップを行う手法を提案する.提案手法による合意形成への効果や課題を検証することを目的とする.提案手法の効果は,社会実験により検証する.社会実験では,地権者,住民などに加え学生も参加した連続ワークショップを行う.まちづくり連続ワークショップの間に,合意形成支援システムによる議論を行う.まちづくり連続ワークショップと合意形成支援システムにおける議論データの分析および参加者へのアンケート調査を行い,提案手法の効果および課題点を把握する.
著者
松岡 弘
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. III, 自然科学 (ISSN:03737411)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.55-66, 1974

1歳~34歳までの死因の第1位を占めるのが不慮の災害(事故)による死亡である。それ故学校保健においても学校安全教育は重要な位置にあるが,その基礎的研究は以外に少ない。1),2),3)筆者はこれまで幼児,小学生,中学生,高校生,大学生および交通事犯少年らを対象にその安全能力の発達に関する一連3)-7)の研究を続けてきたが,今回は絵画面接技法による幼児の安全意識の発達に関する研究と,筆者らが開発をすすめている安全能力検査(SAT)を中学生,高校生および交通事犯少年に実施した結果を報告し,現在の学校安全教育の問題点について言及したい。本研究の要旨は次のようなものである。(1)交通安全を中心にした10枚の絵(27×10cm)を4~8歳児に提示し,その絵にしめされた状況にどう反応するかによって子どもの安全意識の発達をみた。その結果は,日常生活で必要とする安全知識の多くは8歳までに獲得されるが,幼児では交通安全教育の基本である正しい歩行・乗車のマナーなど基本的事項の学習が十分でないことが判明した。(2)安全能力検査(SAT)を中学生,高校生,交通事犯少年に実施した結果から次のような知見を得た。中学生から高校生の年代では,注意力・動作の速さなどの項目では得点の上昇がみられるが,動作の安定性・安全行動・リスクティク(挑危険)などの項目では変化がみられない。交通事犯少年は,動作の速さではすぐれているが動作の質で劣っている。すなわちスピードはあるが正確さに欠けることが推測され,かつ安全の態度でも問題のあるものが多い。Safety education is an important part of school health education, but little work has been done on the development of safety abilities of children. In order to measure adequately the development of the safety abilities of the pre-school child as well as the pupil, the author takes the following two approaches: a) To younger children (aged 4 to 8) are shown ten pictures and we ask for them to answer questions about the pictures. b) A Safety Abilities Test (SAT) is prepared for this study. SAT consists of attention test, speed test (A and B), emotion test and safety behavior test. The following results have been obtained: 1) Though most of the safety knowledges necessary for daily life is achieved at eight some other abilities are not sufficiently developed. 2) The scores on the attention test and speed test A (quantity test) are high for senior high school pupils, but as to the scores on the safety behavior test and speed test B (quality test) they are the same as junior high school pupils. 3) Boys who had been in traffic accidents or violated traffic rules had shown high scores on speed test A but low scores on speed test B.