著者
市川 定夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.428-431, 1996

放射線が生物に与える影響については,「古くからよく知られている」とされ,それゆえ,原子力利用や放射線利用に際しては,他の公害物質とは異なり,「安全確保のための手段があらかじめ講じられている」といった説明がよくなされてきた。現在でも,「微量なら安全である」とか,「微量なら影響は無視できる」といった説明が加えられる場合が多い。しかし,本当にそうなのであろうか。ここでは.微量放射線の影響が解明されてきた過程を振り返りながら,特に問題となる遺伝子の本体DNA(デオキシリボ核酸)に対する影響に重点を置いて,個の問題を論じてみたい。
著者
原 俊雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.364-370, 2006

粒子加速器は,素粒子物理学・原子核物理学の基礎研究のみならず,物性科学・生命科学そして粒子線医療等,広い分野で利用されている。荷電粒子の加速技術と軌道制御技術は,高校物理の電気学と磁気学で学ぶ内容に密接に繋がっている。高校物理と荷電粒子の加速および軌道制御技術との繋がりを明確にし,高校物理教育の教材として粒子加速器技術を活かす試みを行ったので報告する。
著者
広井 禎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.161-162, 1999

1999年3月に2003年から高校で実施される学習指導要領が告示された。本稿では,その内容についての検討は一切せずに,そのつくられ方についてだけ検討する。仮に教育課程を建売住宅に例えてみる。従来,建売住宅に住む人・住みたい人の立場から論じられることが多かった。この玄関の位置は良い(悪い)とか,この間取りは住みやすい(住みにくい)とか,ここに戸棚があるのは使いやすい(使いにくい)など。本稿では,この視点を転じて,大工さんの立場から検討してみたいのである。建築資材や,大工さんの数,工事期間などにあたることの検討を試みることにする。
著者
矢野 淳滋
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.439-441, 1993
被引用文献数
1

平賀源内が作った摩擦発電機「エレキテル」はよほど乾燥していなければ発電しない。そこで瓶と摩擦材料を高絶縁で吸湿性のない新素材に置き換え,又は新素材で支え,構造も合理的に改善して製作してみたところ,特に高湿度でなければ,手回しで10kV以上の電圧が得られ,教材用として十分使用できることが分かった。更にこのエレキテルで発生した電圧を測定する静電電圧計や,その電力で運転する静電モーターも作った。
著者
笠 耐
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.421-428, 2002
被引用文献数
4

物理教育学会誌の創刊号から最近号までを主な資料として,国際物理教育委員会(ICPE)主催の会議と本学会との関係を中心に物理教育の国際交流について歴史的に述べている。1960年にパリで開催された最初の物理教育国際会議に本学会は代表を派遣して積極的に国際交流に努めた。本学会がICPEと共催した1986年東京会議と,その後に開催された3回の日中米物理教育会議は,参加者に新しい物理教育のアイデアを与えると共に,高校教師の国際的な交流の道を開いた。また,国内における高校と大学の連携を強めることにも役立った。
著者
米田 隆恒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.90-92, 2003

超音波の実験はさまざまな利点がある。しかし,超音波の発生方法は難しく,また,耳に聞こえないので観測が抽象的であるという難点がある。ところで,超音波のうなりの振動数が可聴音の領域にあると,うなりを耳で聞くことができる。このうなりを超音波の観測方法として利用し,ハウリングによる超音波発振機1)と組み合わせて,直感的にわかりやすい超音波実験装置を開発した。また,この装置を使って,干渉やドップラー効果などの生徒実験を行った。
著者
鈴木 三男 増田 健二
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-5, 2000
参考文献数
5

二重振り子の複雑な運動は,カオス的な振舞の例として良く取り上げられている。しかし,多くは講義または演示実験などで,興味をひく観察だけで終わっている。そこで,我々はデジタルビデオカメラとコンピュータを利用し,二重振り子の複雑な運動を詳しく調べ,運動の解析を試みた。また,二重振り子のコンピュータシミュレーションを行い,実際の測定結果との比較検討も行った。
著者
寺島 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.289-292, 1992
被引用文献数
1

有効数字は最下位の桁に誤差を含む数値である。したがって,有効数字の決め方を指導するためには誤差の求め方を教えなければならない。標準誤差(Standard Error)の意味と計算法を講義によって説明し,演習をまじえて有効数字の決め方を実地に指導する。このような指導の内容と方法を述べる。
著者
小森田 精子
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.281-284, 1998
参考文献数
5

化学教育における実験の意義を論考するために,まず,近代・現代化学における実験の目的と性格を合成実験を中心に,化学的実験と物理的実験の関係も含めて論述する。次に,化学教育の目的を明らかにし,学習実験の意義と性格について述べる。ここでは,特に化学の基本概念と基本法則を理解することの重要性を指摘するとともに,その歴史的成立過程を実験と理論の役割を中心に概観する。最後に,学習実験の方法について二つの視点から論考し具体的な提案をする。
著者
秋山 和義
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.5-8, 2011

従来の箔検電器の形を変更して,箔には学校にあるコピー機や印刷機の消耗品として使われているマスター紙を用い,180°まで開く箔検電器ができた。また,アルミホイルを用いて,より大きな箔の,帯電に応答のよい箔検電器もできた。この箔検電器は乾電池で開かせることができ,コンデンサーで電気を蓄える実験ができる。この新型箔検電器は生徒が自作でき,静電気のいろいろな観察・実験に使用できる。
著者
伊藤 仁之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.341-343, 2001

回転群表現の2価性の説明モデルとして知られるDiracのひも付きハサミやFeynmanのワインダンスを検討し,これらが2価性の説明になっていないことを明らかにする。
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.155-163, 2003

センター試験を利用する大学の数は年々増加の傾向にあり,受験者の数も増加している。センター試験の問題が大学入学試験に与える影響が増えてきていることを意味している。それがゆえに問題はよりしっかりと検討される必要がある。日本物理教育学会入試検討委員会では物理IA〈本試験〉の検討を近畿支部,北海道支部を中心に行い,物理IB(本試験)については,アンケート調査を実施し,その結果をもとにして入試検討委員会で検討をおこなった。今回のアンケート用紙は,昨年と同様「物理IB」の問題について全体的な意見と各問についての意晃を選択肢で答えていただくと同時に自由に記述していただく部分も用意した。会員の申から約400名を抽出し,問題とアンケート用紙を発送し,2月5日までに回答を求めた。回収数は109であった。以下物理IBについてはアンケートの集計結果と当委員会での議論に基づいた意見を,物理IAについては北海道,近畿両支部で検討した意見を報告する。議論は,大学志願者の「高等学校における基礎的な学習の達成度を判定する」という大学入試センター試験の目標が学習者に対してどのように実現されようとしているか,という観点にたって行われた。なお2003年度センター試験の問題と解答は日本物理教育学会ホームページ(http://www.soc.nii.ac.jp/pesj/)又は大学入試センターホームページ(http://www.dnc.ac.jp/)で見ることができるので参照してほしい。
著者
福田 敦
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.43-45, 2010

金属棒を松ヤニのついた指で擦るなどすると縦振動が生じる。ここではアルミチャンネルを用いて定常波の波長を定量的に調べる方法を示し,またこれを素材とした探究活動の授業実践を報告する。
著者
戸田 一郎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.298-301, 1995
参考文献数
2

科学史や科学博物館研究を手がけているわけでもない私ではあるが,よき先達にめぐまれてイギリスの科学博物館を訪れたのは今から約7年前である。その後,ヨーロッパやアメリカのおもな科学博物館を見る機会を得た。いずれもそれぞれ特徴があり,すばらしいものではあったが,今それらを振り返って,もし機会があればイギリスの科学博物館を今一度訪ねたいと考えている。