著者
福田 敦夫
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.001-011, 2011 (Released:2011-03-11)
参考文献数
25

最近,幼少時の麻酔暴露と学習障害の関係が出生コホート研究により指摘され,臨床麻酔学上の問題として注目を集めている.動物実験レベルではGABAA受容体作動薬などの麻酔・鎮静薬が発達過程の脳に器質的変化を伴う脳機能障害を起こすことは知られていた.一方,発達期の脳におけるGABAの作用はマルチモーダルなものである.すなわち,中枢神経系の最も主要な抑制性神経伝達物質であるGABAは,神経細胞発生期にはシナプスを介さない傍分泌的作用で発生や移動にかかわり,回路形成期には興奮性伝達物質としてシナプスの形成・強化に関与する.そして成熟後にはじめて抑制性神経伝達物質として作用する.このように,GABAには発達段階に応じた3つの役割があり,発達初期における役割は古典的概念の抑制性伝達物質とは大きく異なっている.したがって,幼少時の麻酔暴露の影響は,これらのマルチモーダルなGABA作用を増強することでもたらされる可能性がある.
著者
福田 敦子 花岡 澄代 喜多 淳子 津田 紀子 村田 惠子 矢田 眞美子 中村 美優 鶴田 早苗 松浦 正子 伊藤 佳代子 古城門 靖子
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13413430)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.35-45, 2004
被引用文献数
1

本研究の目的は、リアリティショックの潜在構造を明らかにして新卒看護職者の傾向を示し、今後の看護教育への示唆を得ることである。方法は、病院に就職した新卒看護職者275名を対象に、独自に作成した質問用紙を用いた調査を行い、因子分析により潜在構造を求めた。質問紙において用いたリアリティショック23項目に対する因子分析より、6因子『患者・家族との複雑な関係・対応』『職場における協働の仕方とシステム』『未経験の機器やケア』『ナースコールや電話への対応』『生命監視装置等のある環境』『患者の死亡や急変』が抽出され(α係数0.898)、『未経験の機器やケア』『ナースコールや電話への対応』『職場における協働の仕方とシステム』で各因子における平均得点が高かった。今回、各因子における平均得点が高かったのは看護実習においても経験することが難しい因子であった。今後は在学中の看護基礎教育および継続教育を含めて、臨床的なリアリティ認知を高める取り組みの必要性が示唆された。
著者
広瀬 弥奈 村田 幸枝 福田 敦史 村井 雄司 大岡 令 八幡 祥子 水谷 博幸 五十嵐 清治
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.301-309, 2011-07-30

本学近隣の小児や保護者にフッ化物によるう蝕予防法をこれまで以上に普及させるためには今後どのような対策を講じていけば良いかを明らかにする目的で,北海道石狩郡新篠津村立小・中学校の保護者を対象にう蝕予防に関する意識調査を行った.その結果,う蝕予防で最も重要(問4)なのは「歯磨き」と回答した保護者が94.6%と最も多く,「フッ素」と回答した保護者は皆無であった.フッ化物によるう蝕予防は効果が高い(問13)と答えた保護者は62.8%で最も多かった.フッ化物配合歯磨剤の認知度(問15)は91.6%とかなり多かったが,フッ化物洗口法を知っていると答えた保護者は36.6%と少なく(問14),水道水フッ化物添加法においては18.5%とかなり少なかった(問20).一方,フッ化物配合歯磨剤の使用率は高かったものの,フッ化物配合歯磨剤を使用しないブラッシングにも予防効果があると答えた保護者が半数以上認められた.また,フッ化物に不安を抱いている保護者はフッ化物の応用に消極的であった.以上のことから,保護者のフッ化物によるう蝕予防に関する正確な知識が乏しいことが明らかとなった.今後,フッ化物の効果と安全性,応用法などに関する正しい知識を普及させるための啓発活動の必要性が認められた.
著者
吉田 祥子 穂積 直裕 福田 敦夫
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

自家開発した酵素光学デバイスにより培養初期のグリア細胞からGABA放出が観察され、一方培養後期のグリア細胞でGABA放出が著しく減弱した。インピーダンス顕微鏡を用い細胞膜直下のアクチン線維の安定性によるインピーダンスの変化を非接触で観察した。抗てんかん薬バルプロ酸の投与は、初期のグリア細胞からのGABA放出を増大し、早いATP放出を示し、プルキンエ細胞樹状突起の伸長を早めた。GABA-トランスポータ系が小脳発達を制御する可能性を示唆した。バルプロ酸の作用機序とHDAC阻害剤の関係は未だ不明だが、胎生期の特定時期での遺伝子発現への介入が、GABA放出と小脳発達に影響することが強く示唆された。
著者
楢橋 祥一 岡崎 浩司 福田 敦史 河合 邦浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.188, pp.7-11, 2006-07-20

移動端末を介して提供されるモバイルサービスは将来,あらゆる機器やモノが電波を介してネットワークに接続され実空間と仮想空間が連携するモバイルユビキタス化に対応することが期待されている.モバイルユビキタス化された世界では,機器やモノを取り巻く環境に応じてさまざまな周波数帯の適用が考えられることから複数の無線システムが混在・共存することが想定される.移動端末において複数の周波数帯に対応できるReconfigurable RF回路を構成することは,将来のモバイルサービス提供における技術的要のひとつである.RF-MEMS (RF Micro-Electro-Mechanical-Systems)デバイスはReconfigurable RF回路を構成するキーデバイスのひとつとして着目されており,RF-MEMSデバイスを応用した各種無線回路が提案されている.本稿では,RF-MEMSスイッチを用いた帯域切替型整合回路(Band-Switchable Matching Network; BS-MN)を用いた4バンド高効率電力増幅器(Power Amplifier; PA),くし歯型線路とスイッチを用いた可変共振器およびフィルタ,ならびにRF-MEMSスイッチの動向について述べる.
著者
藤川 謙 福田 敦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
no.14, pp.139-148, 1994

The experience on the infrastructure projects in the developing country will give us the enormous information so as to make a policy on the technical assistance for the other developing country, as well as in the developed country.<BR>From the said view point, this paper firstly briefed the history on the development of land transport networks and evidenced the role of foreign assistance which performed on the land transport development in Thailand from late 19 century, which is the one of most successful developing country in the world and has received a great amount of assistance.<BR>On the second part, the economical impact of the national highway development on the agriculture production was measured by applying the imputed value added model to the case of route 2 and 24 which have been developed with the foreign assistance such as USAID and connected the Northeast region to Bangkok. Also, the damages on the forest coursed by the highway development and regional development was analyzed as the case of one of disadvantage of land transport development.<BR>Finally, the problem on the transport project appraisal and the way of its assistance was discussed.
著者
湯浅 恭正 新井 英靖 福田 敦志 吉田 茂孝
出版者
中部大学現代教育学研究所
雑誌
現代教育学研究紀要 (ISSN:18827098)
巻号頁・発行日
no.13, pp.33-42, 2019-09

本研究は、インクルーシブ教育の展開において求められる多職種協働の課題を明らかにすることを目的にして、まず多職種協働をめぐる研究動向について、協働が求められる背景や協働を推進する役割とコンサルテーションを視点に論じた。その上で、インクルーシブ教育を「トータル支援」の観点から推進している一つの事例に注目し、そこでの多職種が協働する基盤となる枠組み、学校づくりにおける協働、司法関係との協働、「まちづくり」の実践における協働の事例を検討し、インクルーシブ教育の展開に必要な協働とそれを推進するハブ的役割の意義を考察した。
著者
福田 敦 フクダ アツシ Atsushi Fukuda
出版者
関東学院大学経済経営研究所
雑誌
関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.186-209,

98年以降に順次施行されたまちづくり三法の成果が全国的に芳しくないため,第164回通常国会で制度改革に向けて大幅に改正される法案が上程され,関係省庁から新政策の体系が示された。都市計画制度については,ゾーニング規制と広域調整による大型店の適正配置,広域的都市機能の拡散防止などが図られる。中心市街地活性化制度については,基本計画への国の関与強化,選択と集中による予算措置,活性化協議会の設置による新TMO の実効性の確保などが図られる。本稿では,これまでの三法の検証とともに,新政策の到達点と今後の展望について是々非々で考察する。
著者
広瀬 弥奈 松本 大輔 八幡 祥子 前山 善彦 青山 有子 島袋 鎮太郎 千秋 宜之 松下 標 倉重 多栄 福田 敦史 伊藤 綾子 野呂 大輔 齊藤 正人 丹下 貴司 五十嵐 清治
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.444-452, 2006-06-25
被引用文献数
4

改革した小児歯科学基礎実習の点検評価を,本学歯学部4年生の96名に対しアンケート方式にて実施した。アンケートの内容は,実習に対する理解度,満足度についてで,「全くできなかった,あまりできなかった,どちらでもない,できた,よくできた」の5段階による無記名回答方式で調査した。その結果,予習の段階で実習書の内容について理解できた者は,フッ化物応用法,ラバーダム防湿法,窩溝填塞法,乳歯の歯髄切断法,既製乳歯冠修復法,治療計画の立案(口腔疾患の予防)の各実習項目とも約80%を占め,多くの者がこれから行う内容についてある程度理解しながら実習を行っていると判断された。<BR>また,本実習を通して理解を深めることのできた者は,いずれの課題も80%以上を占め,本実習によりある程度体得できたものと思われた。テユートリアル実習においては80%以上の者が本実習に積極的に参加したと自己評価していたが,あまり参加できなかった者も16%認められ,再検討が必要であると思われた。マネキンを実患者と想定した施術時態度・技能の修得については,マネキンへの話しかけを有益でないと答えた者が約30%認められたことから,学生の意識改革を惹起するような対策・対応が必要と思われた。
著者
金子 雄一郎 福田 敦 香田 淳一 千脇 康信
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.175-181, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本研究は首都圏の大手私鉄8社の代表的路線を対象に, 路線別・券種別の需要の運賃弾力性を計測したものである. 具体的には運賃や沿線人口, 景気指標など需要に影響を与えると想定される要因を説明変数とした需要関数を設定し, 時系列データを用いてパラメータを推定しその妥当性を検討した. その結果, 対象路線の運賃弾力性については定期が-0.14--0.41, 定期外が-0.31--0.42となり, 全般的に定期外の方が高い値となった. ただしいずれの券種についても運賃弾力性は-1以上 (絶対値で表現する場合1以下) となり, 単純な運賃値下げは収入を減少させる可能性があることが示唆された.
著者
福田 敦夫
出版者
浜松医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

1.タウリン作用へのリン酸化/脱リン酸化の関与の検討と細胞内情報伝達分子の同定:すでにリン酸化酵素阻害剤でタウリンによるKCC2機能抑制の解除が起こることを確認していたので、想定されるリン酸化部位に変異を導入したKCC2 mutantを作製して実験に供した。ラットを用い、in vitroでのタウリンによるKCC2蛋白機能抑制は消失し、in vivoではwildでは起こらない細胞移動の抑制を示した。タウリンが活性化するリン酸化酵素と基質であるKCC2のリン酸化部位を同定した。2.Ca^<2+>振動を指標としたモーダルシフトの発生部位の解析:胎齢17.5日のマウス大脳皮質スライスでタウリントランスポーター阻害剤(GES)、GABAトランスポーター阻害剤(ニペコチン酸)を投与して、移動中の細胞(電気穿孔法でmRFP導入)の示す自発的Ca^<2+> transientsに対する影響を比較した。皮質板ではニペコチン酸が、サブプレートではGESがよりCa^<2+>振動の頻度を上昇させる傾向を示したが、中間帯ではCa^<2+> transientsそのものが少なくGESも作用しなかった。GABAイメージングでGABA放出部位は脳室下帯と中間帯に多く、これらの場所に少なくサブプレートに多いタウリンの空間分布とは相反的であった。上の結果から、タウリンとGABAはCa^<2+>振動の変調と移動モードのシフトに各々異なる役割で関与する可能性が考えられた。3.母体拘束ストレスが胎仔脳タウリン量とモーダルシフトに与える影響:妊娠15日目のマウスに、拘束・光刺激ストレスを一日に3回、妊娠17日目まで3日間続けた。胎仔大脳皮質のタウリン含有量がストレス群で減少傾向にあった(p-0.077)。しかし、GABA、グルタミン酸の含有量に変化はなかった。さらに、皮質板細胞の発生や細胞移動を観察したところ、全く影響を受けていなかった。その一方で、GABA細胞は有意にその発生数が減少していた。
著者
福田 敦
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.43-45, 2010

金属棒を松ヤニのついた指で擦るなどすると縦振動が生じる。ここではアルミチャンネルを用いて定常波の波長を定量的に調べる方法を示し,またこれを素材とした探究活動の授業実践を報告する。
著者
福田 敦夫
出版者
浜松医科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

1. KCC2蛋白機能抑制因子の検討-(2)(液性因子の検討):[福田]培養液中に17β-estradiol、progesteron、タウリンを加えて培養し、パッチクランプで異所性KCC2発現細胞のGABA逆転電位を測定し[Cl-]_i変化を検討した。タウリンのみ、GABA逆転電位を脱分極側にシフトさせたので、KCC2蛋白機能を抑制したと考えられた。2. 異所性KCC2蛋白の発達的機能変化とリン酸化/脱リン酸化の関与:[福田、古川]胎仔脳のスライスを作製して異所性KCC2を発現した細胞(EGFP発現)からパッチクランプ法により[Cl-]_iを測定した。脱リン酸化阻害剤vanadateは胎齢18日でも生後1週齢でも効果なく、リン酸化阻害剤staurosporineは異所性KCC2がまだ機能していない胎齢18日では効果なかったが、機能し始める生後1週では[Cl-]_iを低下させたので、KCC2蛋白の機能抑制にはリン酸化が関与している可能性が示唆された。インビボ胎仔皮質板細胞で一過性に豊富なタウリンが関与する可能性がある。3. 異所性KCC2蛋白の発達的機能変化とオリゴマー化の関係:[熊田、福田]強制発現させたKCC2のオリゴマー化の阻害が原因で機能発現しない可能性を検討するため、sulfhydry1還元剤を含まないdetergentを用いて異所性発現させたKCC2のWestern blottingを行った。異所性KCC2のバンドは抗Flag抗体(1:1000)を用いて同定し、タウリンの有無での異所性KCC2のモノマー/オリゴマー比を比較してオリゴマー化の差を解析したが、有意な差は認めなかった。以上から、細胞内タウリンの異所性KCC2蛋白機能抑制作用にはオリゴマー化の障害は関係していないと結論した。