著者
浅見 克彦
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.299-314, 2003-12-16
著者
蟹江 章
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.95-104, 2007-01-25

カネボウやライブドアなどの粉飾が相次いで明らかになり,財務諸表監査に対する不信感が高まっている。公認会計士・監査審査会による検査の結果,わが国の大手監査法人における監査の品質管理に重大な問題点があることが指摘されている。そして,これに基づいて,金融庁から監査法人に対して業務改善指示が出される事態となっている。 こうした監査不信を増大させるような状況を改善するために,日本公認会計士協会や金融審議会などが様々な角度からの対応策を発表したり検討したりしている。例えば,監査法人の強制的ローテーションや監査法人に対する刑事罰の適用などがあげられる。本稿では,こうした対応策が,監査に対する信頼回復にどの程度の有効性をもつか,そしてまた,より有効な対策となるために何が必要かを批判的に検討した。
著者
園 信太郎
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.47-49, 2007-06-07

統計学の入門講義において,分布の収束の一様性に関するポーヤの命題を述べ,これを証明すべきことを主張した。
著者
田中 愼一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-32, 2007-06-07

明治前期に東京で地主側が本郷区の借地人たちを相手どって下掃除を請求する民事訴訟が起きていた。大審院での判決原本は最高裁判所で,東京控訴裁判所での判決原本は東京大学法学部でかなり前に閲覧できていたが,東京裁判所での判決原本は不明のままであった。この始審判決原文は国際日本文化研究センターの英断によって最近ようやく見ることができ,この論文を完成に導いてくれた。これまで相当な時間を費やしてきただけに感謝の念にたえない。三審とも判決原本を読みえたことで,この民事事件の全体像を再構成し,下掃除をめぐる利害状況を追究してみたのが本論文である。下肥は東京近郊農業地帯の米作や麦作といった最重要の主穀作の主肥となっていたから,近郊農村民が渇望するところであり,下肥材料を入手する下掃除は代金支払いを伴なう経済行為でもあったから,下掃除をさせる権限が不動産をめぐる関係者の間のどの階層に属するかで非和解的な対立が生じることになった。それはまた,都市不動産課税とも関連して込み入った利害状況の展開があり,解明を要すると考えられた。そして,本論文は明治前期東京下肥経済算術をおこなったのである。
著者
唐渡 興宣
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1-34, 2007-03-08

本稿はこれに先行する私的所有論の続編をなし,所有論の体系的展開の一環を構成するものである。本源的所有の二次的,三次的構成において,共同体的土地所有と共同体から分離・排除された諸個人が作り出す用具の所有との分裂が土地所有解体の歴史的出発点をなす。土地所有は商品交換を土台とする私的所有に対立的に展開する。近代的土地所有は貨幣関係を基礎とした契約関係という法的関係(=承認関係)に規定された人格的関係において成立する。土地所有の史的成立はこうした人格的関係の成立の解明であり,それは封建的取得構造からブルジョア的取得構造への大転換に媒介されている。その転換は農業資本主義の成立として現れた。本稿は封建的経済構造に支えられた封建的土地所有の史的展開を解明した上で,その土地所有の解体の機序をなすのが労働地代から貨幣地代への移行とそれに伴う領主直営地における賃労働の発生である。それが領主直営地における借地化と領主的囲込みを発展させた。この過程における領主と農奴との関係としての封建的承認関係の解体は農奴の借地農への発展と農業資本主義を事実的に成立させていった。
著者
吉原 直毅
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.373-401, 2003-12-16

経済的資源配分の公正性の問題(分配的正義論)に関する、社会的選択理論と厚生経済学を軸とした理論経済学的なアプローチの近年の展開を概観する。分配的正義に関する従来の支配的見解は、人々の主観的効用の達成度の均等性を要請する「厚生の平等」論であった。対して、人々の主体的責任の問われ得る選択の結果とは見なし得ないような、天賦の才能や資質の格差に起因する、配分上の社会的格差への是正を動機とする「資源の平等」論を提起したのが、ロナルド・ドゥウォーキン(1981b)である。本論は、ドゥウォーキンの「資源の平等」論を、ミクロ経済理論と公理的交渉ゲーム理論の分析装置を用いて公理体系として定式化し、かつ批判したジョン・E・ローマーの研究、ドゥウォーキンの「資源の平等」論以降の政治哲学における分配的正義論の一潮流となった「責任と補償」アプローチを、ミクロ経済理論の分析装置を用いて公理体系として定式化し、その隠れた含意を明示化する事に貢献したマーク・フローベイやウォルター・ボッサール等の研究を概観し、その意義についてコメントする。
著者
吉原 直毅
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.63-98, 2006-11-29

アナリティカル・マルクシズムの,数理的マルクス経済学の分野における労働搾取論に関する主要な貢献について概観する。第一に,1970年代に置塩信雄や森嶋通夫等を中心に展開してきたマルクスの基本定理についての批判的総括の展開である。第二に,ジョン・E・ローマーの貢献による「搾取と階級の一般理論」に関する研究の展開である。本稿はこれら二点のトピックに関して,その主要な諸定理の紹介及び意義付け,並びにそれらを通じて明らかになった,マルクス的労働搾取概念の資本主義社会体制批判としての意義と限界について論じる。
著者
多田 和美
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.79-106, 2008-09-11

本稿は,日本コカ・コーラ社の事例を通して,海外子会社の製品開発活動の進展プロセスを解明することを目的としている。具体的には,海外子会社の役割進化モデル(Birkinshaw and Hood,1998)を出発点として,海外子会社の製品開発活動が他国向け製品も開発する段階に進展するまでのプロセスの実証研究を行っている。 日本コカ・コーラ社は,コカ・コーラグループの海外子会社のなかでも世界各国で活用される製品を最も数多く自主開発している,すなわち最も製品開発活動が進展している海外子会社である。事例分析の結果,同社の製品開発活動は1)本国親会社の役割指定,2)海外子会社の選択,3)現地環境などの要因が影響していることが明らかになった。さらに,海外子会社の自律性と本国親会社と海外子会社間の関係強化という多国籍企業内部の要因も重要となることが明らかになった。 これらの発見事実は,近年活発化している海外での製品開発活動に重要な示唆を含んでいると考えられる。