著者
本田 宏
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.195-215, 2014-01

(旧西)ドイツでの原子力をめぐる政治過程の中で再三設定されてきた,原子力推進・反対両派の討議の場を保障する「政策対話」の主要事例を概観する。(1)反原発運動の拡大に当惑するSPD(社会民主党)とFDP(自由民主党)の連立政権が試みた「原子力市民対話」(1975~78年)。(2)紛糾する再処理工場計画の検討を専門家に委ねるため,CDU(キリスト教民主同盟)の州首相が設置したゴアレーベン国際評価会議(1978~79年)。高速増殖炉をめぐる連邦与党内および州政府との対立を契機に連邦議会が設置した「将来の原子力政策」(3)第一次および(4)第二次特別調査委員会(1979~82年)。(5)チェルノブイリ原発事故後の再処理工場や高速増殖炉の建設の放棄という情勢を踏まえた利害関係者による交渉としてのエネルギー・コンセンサス会議(1993年)。この延長線上にSPDと緑の党の連立政権と電力業界との脱原子力合意(2000年)がある。(6)福島原発事故後,キリスト教民主・社会同盟とFDPの連立政権が脱原子力への政策転換を正統化するため設置した「安全な電力供給に関する倫理委員会」(2011年)。以上である。
著者
後藤 祐一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.163-207, 2009-06-11

本研究の目的は,NPO,政府,企業間の戦略的協働(以下「協働」と略記)がいかにして形成,実行および展開されるのかを解明することである。分析された事例は,1970年代後半から顕在化したスパイクタイヤに起因する粉塵問題の解決を目的とした協働である。分析の結果,(1)協働アクティビストがアジェンダの重要性を参加者に認識させる場合,協働が促進される,(2)組織のやる気が最も高い組織は,時間の経過とともに交替する,(3)参加者によって能動的もしくは偶然に,3種類の協働の窓がほぼ同時に開かれる場合,協働の実現可能性が高まる,等の仮説命題が支持された。
著者
荻野 昭一
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.207-227, 2014-01-24

平成25年金融商品取引法改正の中に,昭和63年に制定されたインサイダー取引規制の基本的構成を大きく変換させる改正が含まれている。すなわち,インサイダー取引規制とは,上場会社等の役員等の特別の立場にある者が,重要事実等を知った場合において,これが公表される前に所定の有価証券の取引を行うことを規制しているものである。これまで,情報受領者によるインサイダー取引を助長・誘発する可能性のある情報伝達行為については,禁止の対象とはされてこなかったところ,改正法は,情報伝達行為及び取引推奨行為を規制の直接の対象としたところに大きな意義が認められる。そして,これまでの形式的な規制体系によって構成要件の客観化・明確化という重要な特徴を有していたインサイダー取引規制体系に,新たに主観的な要件や抽象的な概念が加わることとなった。本稿は,金融審議会報告書の内容に照らしつつ,従来のインサイダー取引規制の基本的構成を大きく変換させることとなる情報伝達・取引推奨規制について,その構成要件を詳解した後,論点を抽出して考察を試みたものである。
著者
成田 泰子
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.57-68, 2004-03-09

1870年代以降、イギリス古典派経済学は衰退の様相を呈していた。その様な中でイギリス国内において、従来の古典派経済学の方法を激しく批判し、歴史的方法を採用すべきことを訴えたイギリス歴史学派が台頭してきた。彼らは、古典派に代わって主流派を形成するかのような勢いを示した。こうした状況の中で、ジョン・ネヴィル・ケインズ(John Neville Keynes)は、1891年、『経済学の領域と方法』を著し、理論派と歴史派との対立を理論派の立場から調停しようと試みた。本稿においては、『領域と方法』を、イギリス歴史学派による古典派批判に対するケインズからの回答の書として位置づける。なぜなら、ケインズが、イギリス歴史学派の活発な動きを非常に意識していたであろうことが容易に推察されるからである。こうして、従来ほとんど言及されることがなかったケインズとイギリス歴史学派との関係に着目し、イギリス歴史学派からの批判に対して、ケインズがどのような回答を与えたのかという点を、特に経済学の領域問題に焦点をあてて考察する。そして、ケインズがなした回答が経済学史上、いかなる意義持ったのかということを明確にする。
著者
柴田 裕通
出版者
北海道大学經濟學部 = HOKKAIDO UNIVERSITY SAPPORO,JAPAN
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-48, 2000-06
著者
平野 研
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.99-118, 2006-11-29

国際的支配-従属関係を非資本主義的帝国主義と資本主義的帝国主義とに分類して考察する。この概念を明らかにしながら,現在まで続く資本主義的帝国主義の起源を19世紀末ラテンアメリカにおける国民経済設立に求める。周辺が帝国に対して従属的で,かつ国内的には非資本主義的な経済外的強制力で統治する政治的機関として,従属的国民国家の確立することによって,非資本主義的帝国主義を脱却し,資本主義的帝国主義へと移行していった。そこでは支配-従属関係が隠蔽され,余剰収奪が強化されていく。初期資本主義的帝国主義では,周辺部の資本主義化による成長を押さえ込める程の経済的権力を中心部が有していなかったため,中心部は周辺部を非資本主義的生産関係に押しとどめておこうとした。これを再編非資本主義的低開発とする。グローバル資本主義段階に入ると資本主義的帝国主義は,周辺部における資本主義的生産関係の拡大を,帝国の資本蓄積へと結びつけることができるようになった。このような資本主義的帝国主義の変化は,低開発国の一部を資本主義的低開発として位置づけた。アジア,BRICs諸国などの成長はこのような流れから捉えられるべきである。
著者
岡田 美弥子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.79-89, 2003-03-11