著者
末永 光 宮崎 健太郎
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.100-106, 2010-02-01 (Released:2011-08-12)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

1970~80年代に様々な難分解性化合物を分解する微生物が発見されて以来,分解菌の分離と分解特性の評価が精力的になされてきた.1990年代に入ると,遺伝子の構造と機能の解析や新規化合物出現に対する微生物の適応・進化に関する機構解明,環境浄化への応用へと研究内容も多角化・深化してきた.今また,メタゲノム解析手法の登場により,個による分解から環境システムによる分解の理解へと,大きな転換期を迎えようとしている.
著者
芦田 久
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.901-908, 2016-11-20 (Released:2017-11-20)
参考文献数
50
被引用文献数
2

消化管上皮細胞から分泌されるムチンは,消化管における微生物の感染防御,あるいは共生に重要な働きをもつことが知られている.ムチンは,コアタンパク質にO結合型糖鎖が高密度に付加した高分子の粘性糖タンパク質である.難分解性であり,基本的には消化管上皮を保護する機能をもつ生体防御物質であるが,腸内の共生細菌に栄養分と棲息環境を提供する共生因子でもある.ムチンのヘテロ糖鎖を利用するためのビフィズス菌のユニークな代謝経路の解明を中心に,ヘテロ糖鎖がかかわる消化管内の微生物と宿主の相互作用について,最近の研究の進展を基に解説する.
著者
久木田 明子 菖蒲池 健夫 久木田 敏夫
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.488-497, 2012-07-01 (Released:2013-07-01)
参考文献数
28
被引用文献数
1

破骨細胞は造血幹細胞に由来したマクロファージと近縁の細胞で,生体内で骨吸収を営む唯一の細胞である.近年の研究から,破骨細胞の分化に必須なサイトカインRANKLが発見され,RANKL受容体RANKの下流のFos, NF-κB, NFATc1などの転写因子が破骨細胞の分化で重要な役割をもつことが明らかにされてきた.一方,造血細胞の分化の様々な段階では,その分化決定に関わる転写因子が明らかとなっている.その中の一つOCZF/LRF/FBI-1(旧名Pokemon)は,B細胞や赤血球の分化制御に関わるが,破骨細胞で高い発現があり,破骨細胞分化の後期やアポトーシスの過程においても重要な働きをもつことがわかった.
著者
宮本 賢一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.496-500, 2008-07-01 (Released:2011-04-14)
参考文献数
9

無機リン酸(以下,リン)は,生体の基本的構成成分として,成人の体内に約850 g含まれ,その85% が骨,14% が軟組織,そして残りの1% が細胞外液,細胞内構成成分および細胞膜などに分布する.リンの体内プールは,ホルモン調節のもとに腸管における吸収と腎臓からの排泄によって維持されている.リン代謝は副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone : PTH)や,1,25-ジヒドロキシビタミン D (1,25(OH)2D) により調節されている.さらに最近,リン調節に関与する分子が次々に明らかにされており,副甲状腺,骨および腎を結ぶカルシウム/リンの新しい制御機構の存在が注目されている.生体におけるリン代謝とその異常症について,最近の知見を概説する.
著者
内田 瀬奈
出版者
Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.703-705, 2014

本研究は,日本農芸化学会2014年度大会(開催地:明治大学)の「ジュニア農芸化学会」において発表され,銅賞を授与された.発表者は,脳も神経ももたない粘菌が,なぜ餌を見つけることができるのかということに疑問をもち,その解明研究に取り組んできた.得られた結果は非常に興味深いものとなっている.