著者
上野 由紀
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.97-104, 1998

一般廃棄物は、減量、減容化を目的として、焼却されてきた。今後も当分の間は、焼却に依存せざるをえないであろう。廃棄物が焼却される際に放出される排熱を回収してこれを利用し、発電を行う「ゴミ発電」や「スーパーゴミ発電」が行われている。また、廃棄物を燃料化してゴミ発電に役立てるRDF(固形燃料化)などもある。このようなゴミ発電の燃料となる廃棄物の組成や現在のゴミ発電のもつ矛盾点を環境経済的視点から考察し、検討してみた。 ゴミ発電は、現状では評価することは困難である。しかし、廃棄物の組成は、炭素サイクルから考えれば、タイムスケールの短い物質であり、化石燃料と比較し、環境影響が少ないと思われる。 一方、廃棄物は、減量しなければならないのに対し、ゴミ発電では、廃棄物を燃料とするので一定量が確保されねばならないという矛盾がある。その上、廃棄物が焼却される際の排出物についても問題が多い。 しかし、これらの諸問題をクリアしていけば、ゴミ発電は、清掃事業の一環としても、エネルギー源としても次世代型エネルギーとして将来性があると考えることができる。
著者
角田 晋也
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1-2, pp.41-45, 2007 (Released:2009-08-07)
参考文献数
4

内径が小さい油圧チューブなどを用いれば、海面での加圧を小さくしても、気体を海中深くに沈めることができる。この際にはヒートポンプの原理、つまり断熱圧縮により海中深くに熱源が発生する。この技術は、二酸化炭素の海洋・海底隔離や、海底メタンハイドレートの採取などに応用することが可能である。マグネシウム燃料では、海水を電解して得られるマグネシウムに水を反応させて水素と熱を得るが、その際に副産物として生成する酸化マグネシウムを二酸化炭素と反応させると発熱して炭酸マグネシウムとなる。炭酸マグネシウムは水に難溶性であり、比重が水よりも大きいので、海面に投棄するとほとんど溶けずに自重で沈む。また、僅かに海水に溶ける際には、pHを大きくするので、海底窪地に開放状態で貯留した二酸化炭素が海水中に溶解してpHを小さくする現象を緩和するのにも利用できる。
著者
釣 雅雄
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_63-2_81, 2011 (Released:2011-03-16)
参考文献数
4

2010年3月に策定された新たな「食料•農業•農村基本計画」でも見られるように,我が国の農業政策において食料自給率が一つの政策目標とみなされている。しかしながら,食料自給率は需要と供給のそれぞれの面における様々な食糧事情の結果表れる数値である。それ自体を目標にしてもその手段は無数にあるため,具体的にどの面の強化が望ましいのかの議論が必要である。本稿では食料自給率を供給面と需要面から考察し,その上で現在の農業政策を分析する。代替の弾力性を回帰分析した結果,米と小麦の間の弾力性は小さいかむしろ補完性があり,米と肉類との間の代替の弾力性の方が大きいことがわかった。本稿の分析から戸別所得補償制度は米作の保護政策ともなっており,大幅な転換が生じるとは考えにくい。仮に供給面での転換が可能であったとしても,それが必ずしも需要に対応していない。需要面ではこれまで,米の生産減少分は肉類の増加によって代替されてきており,米から飼料用作物への転換の方がより農地などの限られた資源を効率的に利用することになる。
著者
北見 辰男
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.11-17, 1996 (Released:2009-08-07)
参考文献数
5

三峡ダムの開発にともない、宜昌と重慶の間で1万トン級の大型船の航行可能な水路が形成され、年間片道5000万トンの貨物の水上輸送が可能になるといわれている。この論文では、95年9月の長江研究旅行で見聞した事柄などをもとに、この水上輸送を実現するための主要な課題は水位の変化を考慮した埠頭施設の整備であるとし、これに関する若干の提案をしている。
著者
白石 克人
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.37-42, 1998 (Released:2009-08-07)
参考文献数
10
著者
角田 晋也
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.29-36, 2007 (Released:2009-08-07)
参考文献数
3

統合失調症や躁鬱病は共に人口の1%程度を占める代表的な精神病であるが、精神病という程ではない障害をもつ人々はその十倍程度いると思われる。特に、反社会的な言動を伴う障害に注目すると、ストレスに対する反応が十人十色であるとともに、脳科学の進歩により、公共心に乏しい人々の総人口に占める割合の削減や各人のストレス耐性などに応じた権限の割当て制限などの可能性が示唆される。ホロビンの仮説では、以下のようになる。まず突然変異で統合失調症の遺伝子ができる。その時点では発病しないか、社会的に問題にならない時代が何十万年も長く続く。そして訪れた地球規模の気候の変動により食糧事情が変化し、農業中心による穀物中心の食文化に移行すると、摂取する栄養の内容が変わる。その結果、発病の引き金となる脂肪酸の代謝が悪化する。すると、それまでは発病しないか、軽症で済んでいた遺伝子ホルダーたちが顕著に発病をはじめる。それが社会に大きなインパクトを与えることになる。
著者
大矢 雅彦
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.3-5_2, 1998 (Released:2010-06-17)
参考文献数
3

四川盆地は断層盆地であり、そこに長江上流の岷江などが砂礫を堆積して、扇状地を形成した。この扇状地は円礫と黒色土壌から成り、これは融雪洪水地帯の特色である。この扇頂部に約2,300年前、都江堰が造られ、それまで頻発していた洪水を軽減させると共に、潅漑が拡充された。その後、この堰は度々改修されたが、基本的構造、理念は当時のまま変わらず、今日に到っている。岷江は、この堰で外江(自然河川)と内江(潅漑水路)に分けられる。内江は玉塁山を切った宝瓶口を経て四川盆地へ流れるが、洪水時には外江に60%、内江に40%、渇水時には逆に外江へ40%、内江へ60%ながれるようになっている。 武漢から宣昌に至る江漢平野は、山麓に岩石扇状地が発達し、砂礫層の堆積は薄く、日本の一般的な堆積平野とは異なる、侵食平野である。
著者
宮本 隆司
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.29-35, 1991-12-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
6

文法は文学ではなく,科学である。したがって,主語とか未来形とか進行形等というからには,それが何故に主語等なのか? との理論的裏付けをしなければならない。 それをせずに,苦し紛れに例外だらけにした従来の文法を全く否定し,文章を科学し,すなわち理論的に分析し,それを理論的に組成したものである。
著者
岩渕 雅明
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.22-26, 1988-09-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
4

今年は国立防災技術センター(NRCDP)が「気象調節に関する研究」の一環として,消滅ロケットを使った積乱雲の人工調節プロジェクトを開始して20年目に当たる。その概要をメーカー側からみた,消滅ロケットと散布システムの開発の経過について述べる。 そして現在使われている沃化銀散布用コンポジットの氷晶核発生効率が,まだ当時と変わらず,AgI/gから1016個発生するに止まっている。 理論値2.6×1021個に比べれば,まだ26万分の1にすぎない。しかしそれでも,米,ソ,仏等は多大の成果を上げつつあるのである。 日本としては,古くて新しいこの技術を,この点からブレークスルーして,今までのものより少なくとも数千倍の効率でcloud-seedingできる核発生システムを開発することは,地球環境の制御に必要な,“Atmospheric Sciences”の理論面の進展にも必要なだけでなく,大いなる経済効果も期待できよう。
著者
許斐 義信
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.51-59, 1998 (Released:2009-08-07)
著者
維田 隆一 綿秡 邦彦
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.33-47, 2001

我が国における産業別での二酸化炭素排出量を見ると、民生、運輸部門での排出量の伸びが著しい。本研究では、我が国における二酸化炭素の削減を運輸部門のみで行うことを前提とし、運輸部門の中でも自動車が燃料として用いているガソリンの消費量を削減することを目的とした。消費量の削減には、ガソリンへの炭素税の課税を行い、それによる価格上昇で消費抑制を行うこととする。 炭素税導入には税率の根拠についての議論がまだ完全になされていない。そこで税率の算出には、ガソリンという「財」の性質を見極め、それに基づいた妥当な課税が可能になるように、ガソリンに対する需要価格弾力性の概念を導入することとする。そして、税率の算出とそこから得られた値を基にガソリンへ炭素税を課税した場合の税収や我が国におけるこの種の課税可能性についても検討した。
著者
大礒 幸雄
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.2-7, 1988

宇宙は,大昔から人類の思索の対象,哲学の源泉でもあった。しかし,20世紀後半の自然科学と技術の発達は,この宇宙の神秘のヴェイルを,徐々にではあるが遠慮するところなく引きはがし,人工的に宇宙を利用しはじめている(宇宙時代の到来)。 ミサイルの核弾頭をSDIにより宇宙空間で破壊してどちらが宇宙条約の違反国であるかを論じても後の祭りである。 地球を取り巻く自然は,無限なのではなく,代替性のまったくない超希少資産であることを認識すると,先端科学を駆使する宇宙施設の利用方法(宇宙時代構想―SAI)について,原水爆以上に人類は「畏れ」を払うべきである。 米ソ両国を含めた全世界の経済構造を完全な民需構造に計画することは,衛星センサーとコンピュータにより可能となってきた。各国の経済政策および地球的大規模事業のガイドラインとしての世界経済構造計画を提唱するものである。
著者
戸敷 浩介 周 敏敏 国包 章一
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-10, 2014

本研究では、拡大生産者責任の観点から中国と日本、韓国の廃電気・電子製品リサイクルの制度に関する国際比較分析を行い、中国における制度のあり方について考察した。2011年1月より、中国では初めてとなる「電気・電子製品廃棄物回収処理管理条例」が施行された。中国では、廃電気・電子製品は資源として価値が高く、正規のリサイクル業者は消費者からこれを買い求める逆有償の状況である。しかし、環境汚染や健康被害の防止のためのコストを負担しない非正規業者が、価値の高い廃電気・電子製品を高値で買い取ってしまうため、正規業者は購買力を高める必要に迫られている。本研究では、日中韓の比較分析を踏まえ、特に韓国における拡大生産者責任の仕組みを中国の制度においても導入すべきであり、生産者は消費者からの買取価格を含めてリサイクルコストを負担する必要があると考察した。
著者
金平 隆
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.7-10, 1996

三峡ダムプロジェクトの実地調査を中心とした中国旅行は95年9月に実施されたが、文献や講演からの知識に加えて、多くの知見が得られ、大変有益であり印象的であった。長江に関する幾つかのテーマについて、以下に旅行の感想を述べる。 公式行事及び観光的な記録を含めてビデオに収録した。映像と音声による記録は、情報量が極めて大きいので、詳細はその記録に譲る。
著者
亀田 泰武
出版者
JAPAN MACRO-ENGINEERS SOCIETY
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.33-39, 1990

今後宇宙開発を進めていく上で,燃料消費の少ない打ち上げ方法の開発が必要である。これまで,輸送エネルギーの軽減策についていくつかの提案がされている。そのうち,最もエネルギーの少ない方法は,36,000km離れている静止衛星と地表を結ぶケーブルづたいにエレベーターを昇り降りさせる軌道エレベーター構想である。しかしケーブルが長すぎるためその実現はなかなか難しいと考えられる。今回より低い高度を周り,ケーブル長が短くて済む方法を検討した。この重連衛星構想は,長いケーブルで結ばれた2個のゴンドラが連星のように引っ張り合いながら自転し,この自転の動きが公転の速度を打ち消すように働いて,地上接近時に対地速度を低下させ,地上から打ち上げたロケットなどとドッキングしやすくするものである。ゴンドラをロケットの第二段とすることにより打ち上げのための燃料を少なくすることが可能となる。

1 0 0 0 OA 稲の道

著者
都留 信也
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.3-16, 2000 (Released:2009-08-07)
参考文献数
7
著者
秋吉 祐子 増子 隆子
出版者
日本マクロエンジニアリング学会
雑誌
MACRO REVIEW (ISSN:09150560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-11, 2009 (Released:2010-01-28)
参考文献数
22

20世紀後半以降は人類の生存に直接関係する食の安全性が世界的な共通課題となっている。食肉を提供する家畜の病気(BSE、鳥インフルエンザ)、その人間への感染性をきっかけに世界的に食品安全行政への真剣な取組が行われてきた。本稿はその事例として日本、アメリカ、EU、中国の状況とその方向性を概観する。事例にみる共通性は、農場から食卓に至るフードチェーンをリスクアナリシスの手法を用いて安全性を確保することにある。ことの重大性に鑑みて食品安全委員会のような組織の導入が行われる事例もある。事の判別の困難さおよび複雑性において予防原則の導入の事例や、食の安全性意識の醸成を社会の根本的役割である教育に求める食育教育を強調する事例もある。本考察から示唆されることは現在の社会的危機において、安全な食の提案を起点とする社会システムモデルの構築とそれを創造する意識•認識の必要性である。