- 著者
-
Hashimoto Hiroshi
- 出版者
- 日本昆虫学会
- 雑誌
- 昆蟲 (ISSN:09155805)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, no.2, pp.311-322, 1964-07-20
Thalassomyiaは雌雄ともに有翅の海棲ユスリカで, 1866年以来, ヨーロッパ, アフリカ, 南米のほか, ハワイ, ガラパゴス, マーケサス, サモア等の太平洋各地及び香港等から報告されたが, 本邦では1955年トカラ列島の中之島からThalassomyia japonicaが記載されるまで全く知られていなかつたものである.本属は歴史的に古いだけでなく, 近縁のTelmatogetonやParaclunioとともに海棲ユスリカとして重要な一群をなすが, 従来の研究は充分とは云いがたく, 日本産のものに関しても詳細な知見に欠けるところが多かつた.筆者は今回, 琉球列島の海棲昆虫調査にあたり, 八重山群島の石垣島でThalassomyia japonicaを多数採集し, 本種に関する多くの疑問点を明らかにすることができた.本論文では, 本種の形態的特質について多くの点を補足し, 細部にわたつて外国産の既知種との比較検討を行ない, 種の類縁関係を明らかにすることにつとめた.なお, 従来Thalassomyiaの習性に関しては末知な点が多かつたが, 筆者は本種について, 成虫の出現時間, 運動習性, 静止姿勢, 交尾, 産卵等を観察し, 多くの特性を明らかにした.特に本種での所見では, 少なくとも日本産のTelmatogeton2種と比較した場合, 習性の点でも大きな相異の認められたことは興味深い.