著者
幾留 秀一
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.512-536, 1978-09-25
被引用文献数
1

1). 1975年と1976年に高知平野の3箇所(高知市五台山, 南国市物部, 同岡豊)において, 2月後半から10月後半まで, 月2回, 10時から15時まで, ハナバチ類の生態的調査を行った.その結果, 6科19属68種1447個体のハナバチが得られた.2). 種類数と個体数において, AndrenidaeとHalictidaeのハナバチが優勢なグループであった.優占種としては五台山地区においてTetralonia mitsukurii, 物部地区においてTetralonia nipponensis, Andrena fukaii, 岡豊地区においてLasioglossum apristum, Tetralonia nipponensisなどがあげられる.これらの結果と他地域(吉備, 美並, 札幌)の調査結果と比較考察した.3). 季節変動には, 種類数・個体数ともに春・夏・秋に顕著なピークが認められた.春のピークはAndrenidae, AnthophoridaeおよびHalictidae, 夏のピークはMegachilidae, 秋のピークはAnthophoridaeとMegachilidaeによるものである.また, 3地区の上位3∿4種の季節消長について述べた.4). ハナバチの訪花は, キク科植物に対して最も高く, 訪花ハナバチ個体数の25.3%を占め, Andrenidaeのハナバチが最も多く訪花した.被訪花度の最も高い植物はヤマハギで, 訪花ハナバチ個体数の15.6%を占め, Anthophoridaeのハナバチが最も多く訪花した.また, 優勢な7種のハナバチの各種植物への訪花について述べた.
著者
内藤 篤
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.255-"262-1", 1960-12-10

1959, 1960年の厳寒期に, シロイチモジマダラメイガおよびマメシンクイガの越冬幼虫の耐寒性に関する2, 3の実験を行なつた.マメシンクイガの過冷却点は-23.7℃でシロイチモジマダラメイガの-18.9℃より約5℃低かつた.両種は非耐凍性のこん虫で過冷却点に達して凍結したものは短時間で死亡した.また植氷した場合の凍結温度は, 前者は-14.5℃でやはり後者の8.6℃より低かつた.したがつてマメシンクイガの方がシロイチモジマダラメイガより耐寒性が強いと考えられるばかりでなく, 前者は土壤中での越冬深度も深いので, 一層強い寒さを凌ぐことができると思われる.このことはまた前者が寒冷地に, 後者が暖地に分布していることと無関係ではないように思われる.シロイチモジマダラメイガ越冬幼虫の低温障害は, -10℃以上ではほとんど現われないが, -15℃では数時間, -18℃では1時間位で死亡するものが多く, 生育の完うは困難であつた.したがつて自然界では-15℃以下の低温が致命的であると思われる.
著者
宗林 正人
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.221-229, 1962-11-30

本種の生活環には完全生活環と不完全生活環の2型があり, 完全生活環ではウシコロシに産みつけられた卵は冬を越し, 3月下旬ふ化し, 4月中旬幹母の成虫が現われる.第2代はすべてはねを有し, タケ, ネザサなどの中間寄主に移住する.夏季高温時にも中間寄主上によく繁殖し, 多数のはねの無い胎生雌虫の世代をくり返し, 10月下旬にはねの有る産雌虫が現われてウシコロシに帰り両性雌を産下する.11月になれば雄虫が現われてウシコロシに帰り両性雌と交尾する.両性雌は11月中旬から産卵をはじめる.不完全生活環においては10月下旬から11月上旬中間寄主上に現われるはねの有る胎生雌虫は中間寄主の他の株に移り, はねの無い胎生雌虫を産下する.このはねの無い胎生雌虫は冬季低温時にも産子をつづけて冬を越す.ネザサに寄生した本種は常に葉の気孔からのみ口針をそう入し, ほとんど細胞内を貫通して進入し, その先端は細脈のし部のみにそう入されて平行脈にはそう入されない.このような事実はネザサの葉の構造, 特に気孔の分布, 表皮の角皮化, 平行脈および細脈の組織的差異と口針の長さなどに基因するものと思われる.
著者
鹿野 忠雄
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, 1930-04-05
著者
荻原 洋晶 窪田 聖一 森 介計
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.451-457, 1995-06-25
参考文献数
13
被引用文献数
3

ヒメエグリバを卵期から成虫期(産卵開始時)まで, 長日条件下の16, 19, 22, 25, および28℃恒温で飼育し, 各発育段階ごとの所要経過日数を記録した.その結果, 発育速度はいずれの発育段階でも, 高温になるほど速やかであった.19℃以下の低温下では発育の遅延がみられるばかりでなく, 発育速度の個体変動が大きくなり, また幼虫期の死亡率も高かった.計算された発育零点は12∿13℃とやや高く, 全発育を完了するに必要な有効積算温度は556日度であった.短日条件下で飼育すると, 21および25℃いずれの恒温下でも, 幼虫期後半にいちじるしい発育の遅延がみられた.この遅延は発育速度の低下と経過齢数の増加の結果であり, 休眠状態に入ったためとみなされる.休眠誘導の臨界日長は13∿13.5時間であった.
著者
Ueno ShunIchi
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.249-263, 1964-07-20

この報文に収録した奄美群島産の歩行虫類は, 日米合同科学委員会の事業の一つとして行なわれた琉球列島の昆虫相の調査結果を主体にしている.調査の主旨からいえば, この群島の歩行虫相の特殊性や他の地域との関連などを示し得ることが望ましいが, 採集品自体もとくに大きくはなく, その内容もある程度かたよっているので, 本文には同定の結果を列挙するに止めた.なお, これ以外の資料のうちから, とくに注目すべき3新種を選んで合わせ記載したので, ここに掲げた歩行虫類は, ヒゲブトオサムシ科1種, ハンミョウ科4種, ゴミムシ科26種およびホソクビゴミムシ科2種の計4科33種になる.これらのうち, 新種および琉球列島から新たに記録される種は次の通りである.Eustra crucifera S.Uenoジュウジエグリゴミムシ(新称)Tachyta umbrosa (Motschulsky)ミナミチビカワゴミムシ(新称)Hikosanoagonum latior S.Uenoマエビロモリヒラタゴミムシ(新称)Altagonum shibatai S.Uenoシバタモリヒラタゴミムシ(新称)Haplochlaenius insularis S.Uenoアマミスジアオゴミムシ(新称)Chlaenius (Pachydinodes) hamifer Chaudoirコアトワアオゴミムシ(新称)
著者
Hashimoto Hiroshi
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.311-322, 1964-07-20

Thalassomyiaは雌雄ともに有翅の海棲ユスリカで, 1866年以来, ヨーロッパ, アフリカ, 南米のほか, ハワイ, ガラパゴス, マーケサス, サモア等の太平洋各地及び香港等から報告されたが, 本邦では1955年トカラ列島の中之島からThalassomyia japonicaが記載されるまで全く知られていなかつたものである.本属は歴史的に古いだけでなく, 近縁のTelmatogetonやParaclunioとともに海棲ユスリカとして重要な一群をなすが, 従来の研究は充分とは云いがたく, 日本産のものに関しても詳細な知見に欠けるところが多かつた.筆者は今回, 琉球列島の海棲昆虫調査にあたり, 八重山群島の石垣島でThalassomyia japonicaを多数採集し, 本種に関する多くの疑問点を明らかにすることができた.本論文では, 本種の形態的特質について多くの点を補足し, 細部にわたつて外国産の既知種との比較検討を行ない, 種の類縁関係を明らかにすることにつとめた.なお, 従来Thalassomyiaの習性に関しては末知な点が多かつたが, 筆者は本種について, 成虫の出現時間, 運動習性, 静止姿勢, 交尾, 産卵等を観察し, 多くの特性を明らかにした.特に本種での所見では, 少なくとも日本産のTelmatogeton2種と比較した場合, 習性の点でも大きな相異の認められたことは興味深い.