- 著者
-
辻 洋志
- 出版者
- 一般社団法人 日本産業精神保健学会
- 雑誌
- 産業精神保健 (ISSN:13402862)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.2, pp.99-104, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
- 参考文献数
- 11
障害を持つアメリカ人法(ADA)は合理的配慮規定を有する世界初の包括的な差別禁止法として1990年に米国で制定され,病気や障害を持つ労働者の職場復帰支援や両立支援に大きな影響を与えた.2008年に改正され権利保護の対象は広く,また明確化された.機能障害と能力障害を明確に分けつつ,適格者,本質的な職務,主要な生活活動,主要な身体機能,相当制限,機能障害軽減手段,合理的配慮,話し合いによる合意プロセス,過重な負担をキーワードに構成される.合理的配慮に関する事例対応は健康診断/医学的評価と提供可能な職務の身体精神負荷の評価を行い,話し合いによる合意プロセスを経て,必要な合理的配慮を同定,提供と共に目標を設定し,その後は観察しつつ配慮内容を適宜修正する.医師は医学的職務適性評価を軸に支援を行っている.本来行われるべき合理的配慮の不提供は事業主に罰則があり,HR部門や,産業看護職,産業医,外部機関が支援に当たる.