著者
金森 悟 小島原 典子 江口 尚 今村 幸太郎 榎原 毅
出版者
一般社団法人 日本産業精神保健学会
雑誌
産業精神保健 (ISSN:13402862)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.105-113, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
24

目的:本研究は,デジタルヘルス・テクノロジを用いた介入による労働者のメンタルヘルスへの効果や脱落・遵守状況を検証したメタアナリシスをマッピングし,研究されていないギャップを特定することを目的とした.方法:PubMedにて労働者,デジタルヘルス・テクノロジ,メンタルヘルス,メタアナリシスに関するキーワードで2018年以降の文献を検索し,スコーピングレビューを行った.文献から抽出したデータは,研究デザイン,対象者,介入内容などとした.研究の質はAMSTAR 2を用いて評価した.結果:採択した4件におけるアウトカムへの効果は概ね小さい~中程度であった.また,脱落率の高さを示すものもあった.研究の質はいずれも信頼性の評価が極めて低~低であった.考察:未検討の対象があること,用語や定義が統一されていないこと,研究の質の低さなどの課題があり,質の高いシステマティックレビュー/メタアナリシスが必要である.
著者
庄司 直人 上島 通浩 榎原 毅
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.49-57, 2020-04-15 (Released:2020-04-23)
参考文献数
11

2020年1月以降,新型コロナウィルス(COVID-19)に対するリスク対応が喫緊の社会課題である.このようなCBRNE災害(Chemical, Biological, Radiological, Nuclear and Explosive)に対し,人間工学が果たせる貢献のひとつにリスクコミュニケーションがあげられる.本稿では次の4視点で人間工学におけるリサーチイシューを整理した:1)CBRNE災害におけるCERC要素とそのリサーチイシュー,2)社会不安へ対応する行動志向型コミュニケーションのリサーチイシュー,3)COVID-19の公衆衛生危機に対する人間工学研究と実践のリサーチイシュー,4)人間工学コミュニティが果たす役割.これら4視点からCOVID-19による社会不安軽減に向けた人間工学研究の方向性を示すこととした.
著者
松崎 一平 榎原 毅
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.259-263, 2020-12-15 (Released:2021-12-11)
参考文献数
6

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症対策として,山下病院では患者に関わる全スタッフに対して,勤務中はフェイスシールド着用が義務化された.フェイスシールド着用義務化以降,スタッフより頭痛やめまいの訴えがよく聞かれるようになった.そこで,医師・看護師全員に対してアンケートを実施し,フェイスシールド装着義務化前後での頭痛・めまいの頻度および症状の程度を比較検討した.当病院に従事する全ての医師12名および看護師89名にオンラインアンケートを実施した結果,フェイスシールド着用前に比べ,義務化されて以降,医療従事者の頭痛の頻度が増加している傾向(p=0.056)が示された.フェイスシールドを装着することでめまいを訴える頻度も有意に増加していた(p<0.01).フェイスシールドの長時間着用により,頭痛・めまいが誘発されている可能性が示唆された.人間工学的なフェイスシールド・デザイン,連続装着時間の指針など,人間工学研究の展開が望まれる.
著者
榎原 毅 鳥居塚 崇 小谷 賢太郎 藤田 祐志
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.155-164, 2021-08-15 (Released:2021-08-20)
参考文献数
19
被引用文献数
8

国際人間工学連合は人間工学(HFE;Human Factors and Ergonomics)のコア・コンピテンシーを改訂した.HFEの改訂コア・コンピテンシーの単位は7領域に集約・再整理され,システムズアプローチ視点がより強調される形となっている.改訂コア・コンピテンシーに基づき,今,社会の要請に応えるHFE専門家を育成するために必要と考えられるリサーチ・イシューとして,1)ステークホルダ関与に基づく解決策の提案,2)システムズアプローチに基づくシステム要素の調和,そして3)HFE主導による,あるべき近未来労働・生活様式ビジョンの策定,の3つのポイントを提案した.これらはHFEの世界的な動向を鑑み,国内のHFE研究者,実務者,専門家が今,学び,実践すべき重要なリサーチ・イシューである.